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クリスマスケーキ 大量廃棄の実態 一日500kgがブタのエサに 家庭ゴミにはホールの半分が捨てられ

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:アフロ)

2018年12月26日放送のTBS系列「ビビット」に収録で出演した。テーマは「クリスマスケーキ大量廃棄の実態」。

一日400〜500kgのケーキがリサイクル工場に運ばれ、破砕処理されブタのエサに

ある食品リサイクル工場に、一日400〜500kgものケーキが、ケーキ工場や百貨店、スーパーなどから、食べられることなく運ばれてくる様子が放映された。

このリサイクル工場では、2017年度の受け入れ量が一日平均32トンだった。クリスマスケーキが大量に運ばれてきた日は、一日34トンと、平均を上回る処理量となった。

内容は、ショートケーキやチョコレートケーキ、チーズケーキ、モンブラン、紅芋タルト、スポンジの台など。140リットル入るゴミ箱が次々一杯になり、溢れていった。

リサイクル工場の社長によれば、クリスマスの時期、ケーキやローストチキンが増えるそうだ。普段の2倍以上の食品が運ばれてくる。2月になれば、恵方巻だ。通常の量の2倍から3倍、来るという。

このリサイクル工場では、入ってきた食品は、処理された上で、ブタのエサにリサイクルされる。

毎年、節分の頃には恵方巻で棚がいっぱいになる。オーナーによれば、棚に並ぶこの量と同じくらい、バックヤードと言われる店の裏に在庫があった(コンビニオーナー提供、筆者が白黒加工)
毎年、節分の頃には恵方巻で棚がいっぱいになる。オーナーによれば、棚に並ぶこの量と同じくらい、バックヤードと言われる店の裏に在庫があった(コンビニオーナー提供、筆者が白黒加工)

お笑い芸人のマシンガンズ滝沢さん「家庭ゴミでクリスマスケーキがホールの半分捨ててあった」

「コンビニ弁当や回転寿司の廃棄に物申す!お笑い芸人滝沢秀一さん『このゴミは収集できません』はなぜ売れる」で紹介した、マシンガンズの滝沢秀一さん。お笑い芸人であると同時に、ゴミ清掃員として働いている。その観察眼で日々発掘した「ゴミに関するネタ」は、Twitterでも評判になり、著書『このゴミは収集できません』は、たちまち重版に。現在、3刷となっている。

滝沢さんは、ホール(丸型)のクリスマスケーキが、半分くらいの食べかけで捨てられているのを、ここ数年、家庭ゴミの中によく目にする、と語る。

クリスマスケーキが、(この時期)やっぱり出るんですよね。(ホールの)半分くらい残されてるものとか。

食べきれないっていう理由なんでしょうけど。

ここ数年、ちょっと(そういうのが)多いような気もしないでもないですね。

細かく(小さいのを)買って食べればいいのかなーなんて思ったりするんですけど、そうなると、インスタ映えしないっていうことなのかもしれません。

出典:お笑い芸人でゴミ清掃員を務める滝沢秀一さんの言葉

お笑い芸人でごみ清掃員の滝沢秀一さん(筆者撮影)
お笑い芸人でごみ清掃員の滝沢秀一さん(筆者撮影)

理由はいろいろ考えられるだろう。滝沢さんの言う通り、インスタ映えを狙って買い、食べきれないから捨てたのか。勤めている店でノルマが課せられ、必要以上に買い、食べきれなくて捨てたのか。「本日中にお召し上がりください」と貼られる消費期限を見て、「あ、もう昨日切れたからダメだ」と捨てたのか。

捨ててでも売り上げを伸ばしたい企業と、そのコストを知らずに負担させられている消費者

筆者は、前述の番組に、専門家として出演した。毎年のように、季節商品の食品ロスが発生する背景には、営業時間内に売り切れて品物が無くなると、その分、売り上げが無くなることを恐れることがあると考えている。「足りなくなるより余って捨てた方がいい」という考え方である。

家庭ゴミとして、5,000円以上もする高級菓子やピザ、カツ丼、鉄火巻き、コンビニの総菜や菓子パンなどが手付かずで捨てられている(筆者撮影)
家庭ゴミとして、5,000円以上もする高級菓子やピザ、カツ丼、鉄火巻き、コンビニの総菜や菓子パンなどが手付かずで捨てられている(筆者撮影)

その廃棄コストの、すべてとは言わないが、負担させられているのは消費者である。企業は赤字を出してまで経営し続けることはできない。慈善事業ではないのだから。廃棄コストの分も収入として得ているからこそ、毎日のように捨て続ける経営が成り立つ。誰がその収入を成り立たせているのか。消費者だろう。消費者は、食べ物を捨てているコストを、実は自分たちが日々負担しているということに対し、あまりにも自覚がない。

人が作ったイベントに振り回されて、人と同じ食べ物を買う必要はない、ということだ。12月24日か25日に、一斉にケーキを食べる必要はない。自分が食べたくなるタイミングで買うなり作るなりして食べればいい。みんなが買っていると買いたくなる、店で売っていると買いたくなる、というのはあるかもしれないが・・・。

消費者が、自分たちのお金が損すると自覚を持ってNOと言わない限り、「もったいない」を忘れた食品ロス大国の汚名は晴らせないだろう。

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追記(2018年12月27日午前9時16分)

食品リサイクル工場では、家畜の飼料としてリサイクルされている。だが、食品ロスの多くは、我々の税金を使って、焼却炉で燃やされてしまっている。政府(環境省)が発表している自治体のゴミ処理費は、年間約2兆円。そのうちの4割から5割程度が食品であることを考えると、食べ物を焼却する費用として、実に、8,000億円から1兆円の税金が投入されている換算になる。

(「この記事を読んで頂いた読者の方に、より正確な情報が伝わるように」とのことで、食品リサイクル工場の方より、ご指摘を頂きました。御礼申し上げます。)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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