Yahoo!ニュース

8割が水の生ごみ、臭い対策!生ごみ処理機、助成金で半額購入し1700回使った結果、得られるメリット

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
キッチンに置かれた生ごみ(写真:イメージマート)

夏の悩み、生ごみの臭いやコバエ

すでに気温が高くなってきている6月。2023年は観測史上、最も暑かった年(1)だが、2024年はそれをさらに上回ると予測されている。

暑くなってくると悩ましいのが生ごみだ。少しでも放置しておくと、嫌な臭いが発生する。コバエが飛んでくる。すぐにごみがたまって重い。ごみ出しの回数が増える。

庭や畑があれば、コンポストの容器を使って堆肥にできるだろう。長野県に住んでいる義父母は、毎日、畑に置いてあるコンポストの容器まで生ごみを入れに行っている。コンポストに出したあとは庭でバケツを乾かす。

畑に並んだコンポスト
畑に並んだコンポスト写真:イメージマート

庭や畑がなくても、マンションのベランダでもコンポストを置くことは可能だ。バッグ型のLFCコンポスト(2)なら、ファスナーで閉められるし、ベランダなどに置いておくことができる。筆者はベランダ2カ所にコンポストを置いており、一方はLFC、もう一方はポリバケツだ。

LFCコンポスト(LFCコンポスト公式サイトより)
LFCコンポスト(LFCコンポスト公式サイトより)

でも「堆肥なんか作ったって、植物もないし、無駄」という人もいるだろう。使い道がないのに作っても仕方がない。

だったら、生ごみを乾かすだけでもいい。

筆者は2017年6月から、家庭用の生ごみ処理機を使っている。生ごみを入れて、スイッチを押すと自動的に乾かしてくれる。電気は100%自然電力のハチドリ電力と契約しているので温室効果ガスの排出はない。

家庭用生ごみ処理機の一例(シマ株式会社公式サイトより)
家庭用生ごみ処理機の一例(シマ株式会社公式サイトより)

生ごみを乾かすメリットは?

生ごみを乾かすメリットは何だろう?

臭いで悩まされることがない。

コバエが飛んでこない。

ごみ出しの回数が激減する。

ごみ袋をしょっちゅう買わなくて済む。

気持ちがすがすがしい。

何より、食品ロスを減らそうという意識も高まる。

食べ残しや無駄にした食品は、生ごみ処理機で処理することになるので、自分の体たらくを目の当たりにすることになる。

55%以上の自治体で1/2から1/3の補助金

日本の自治体のうち、55%以上の自治体が、家庭用生ごみ処理機に助成金を出している(3)。自治体によって助成額は異なるが、だいたい買った値段の1/2から1/3を助成してくれて、助成額の上限は6万円程度。筆者も2万円程度の処理機を1万円ぐらいで買うことができた。近くでは売っていなかったので、インターネット通販で購入した。

生ごみは、その重さの80%以上が水である(4)。乾かすだけで、臭いがなくなり、コバエが来なくなり、ごみ出しの回数が激減する。

乾かすだけで重さの70%以上減る!

筆者は2017年6月から生ごみ処理機を使い、乾燥前後で重量を量っている。これまで1700回測定し、累計で減らせた生ごみは446kg。体重60kgの大人7人分だ。減らせた重量は全体の70.4%。生ごみと一緒に出していたときより70%も減らすことができている。

筆者のデータをもとにHitomi Kawafuchi制作
筆者のデータをもとにHitomi Kawafuchi制作

筆者のデータをもとにHitomi Kawafuchi制作
筆者のデータをもとにHitomi Kawafuchi制作

環境省の発表(5)によれば、一般廃棄物の処理事業には2兆1,519億円の税金が投じられている。自治体のごみの4割は厨芥(ちゅうかい)類と呼ばれる生ごみだ。環境省の発表したコストには焼却施設の維持費なども含まれるので、単純計算はできないが、2兆1,519億円の40%は8,607億円。燃えにくい水を含む生ごみを一緒に燃やすのは、エネルギーとコストの無駄になってしまう。

「分ければ資源 混ぜればごみ」

韓国では、生ごみのリサイクル率は2012年時点で97.1%を超えている(6)。日本国内でも、生ごみを「ごみ」とせず、資源として活用している自治体は数多くある(7)。が、国全体としての取り組みは、韓国と比べると非常に遅れている。

「分ければ資源 混ぜればごみ」

少なくとも、生ごみは、乾かしてから出すようにしたい。そうすれば、臭いやコバエの問題はなくなるし、ごみ出しの回数が激減し、快適に過ごせるようになる。

参考情報

1)2023年は観測史上最も暑かった年に(JCCCA:全国地球温暖化防止活動推進センター、2024/3/26)

2)LFCコンポスト

3)自治体の購入助成金制度検索(パリパリキューブ、シマ株式会社)

4)生ごみの水切りをしましょう!〜生ごみの80%は水分、水切りだけでも環境にやさしい〜(東京都町田市、2024/3/7)

5)一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について(環境省、2024/3/28)

6)『ごみゼロへの挑戦 ゼロウェイスト最前線』(山谷修作、丸善出版)

7)「生ごみ堆肥で育てた花どうぞ」「生ごみ出しません袋」年間2兆円超のごみ処理税金減らす20自治体の取組

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

井出留美の最近の記事