今が旬のジビエって何? あの「ジビエの王様」も味わえるフルコースが登場
ジビエのシーズン
ジビエは冬のご馳走です。
狩猟解禁期間は、11月15日から2月15日までとなっており、北海道に関しては10月1日から1月31日。狩猟鳥獣は日本に生息する野生鳥獣約700種のうち、鳥類28種類と獣類20種類が該当します。
ジビエは「力強く生命力に溢れた冬季限定のごちそう」であり「森からの贈り物」。国によっても事情が異なっています。
例えば、ライチョウは日本では天然記念物になっているので狩猟できませんが、フランスでは狩猟に制限はありません。反対に、ヤマシギは日本では狩猟が制限されていませんが、フランスでは保護鳥に指定されているので狩猟することができないのです。
この冬のご馳走であるジビエを堪能するのにお勧めしたいのが、2022年1月10日から4月6日にかけて提供されている、アンダーズ 東京「ザ タヴァン グリル&ラウンジ」の 「Japanese Wild Game(ワイルドゲイム) ~特選ジビエディナー~」(5コースメニュー 13,200円、6コースメニュー 15,400円、税込・サ別)。
料理長を務める山口卓也氏が様々なテクニックで生み出した数々のジビエ料理をコース仕立てで体験できます。早速ゲストから好評となっているので、当初2月28日までの予定から延長されました。
ジビエ料理のコース
山口氏によるジビエコースの内容は次の通り。
Japanese Wild Game(ワイルドゲイム) ~特選ジビエディナー~(6コース)
・猪肉とフォアグラのパテアンクルート ビーツのピクルス ポートワインエッセンス セミドライ無花果
・群馬県産干し舞茸のコンソメスープ ジビエミートのラビオリ
・青首鴨胸肉の燻製と鴨のもも肉コンフィのカスレ アンディーブのロースト シードルソース
・柚子のグラニテ 甲州白ワインのジュレ
・北海道産蝦夷鹿ロースのグリル 竹炭とスパイスのグラモラータ マスタードソース 茸クランブル 雪室熟成マッシュポテト 牛蒡チップ
・チョコレートムース チョコレートクランブル ピーカンナッツのキャラメリゼ ヘーゼルナッツ&バニラアイス マロン ゴーフレット ピスタチオスポンジ ラズベリーソース
前菜、スープ、肉料理、口直しからのメインディッシュ、デザートというコース構成。猪・青首鴨・蝦夷鹿と旬のジビエが堪能できます。
それぞれのメニューを詳しく紹介していきましょう。
猪肉とフォアグラのパテアンクルート ビーツのピクルス ポートワインエッセンス セミドライ無花果
広島県の成獣のイノシシであるサングリエを用いたパイ包み。サングリエのミンチと塊肉を混ぜてテクスチャを豊かにし、フランスのフォアグラ、ポルト酒のジュレを入れて、生ハムで巻きました。イノシシの野性味を味わえる一品です。周りにはセミドライのイチジクとビーツのピクルス。
群馬県産干し舞茸のコンソメスープ ジビエミートのラビオリ
土瓶蒸しから着想を得た、ラビオリ入りの滋味溢れる土瓶スープです。コンソメスープにはイノシシの骨、乾燥マイタケのパウダーも加えられており、旨味がたっぷり。ラビオリはコルヴェール(青首鴨)の内蔵やエゾシカのミンチからつくられており、とてもサステナブルです。
青首鴨胸肉の燻製と鴨のもも肉コンフィのカスレ アンディーブのロースト シードルソース
宮城県のコルヴェールを用いた肉料理が2品も提供されています。ジビエの王様であるコルヴェールを食べ比べできるのが嬉しいところ。
胸肉は生のままスモークしてから薪で低温調理し、オーブンで仕上げました。シードルソースの酸味はコルヴェールの旨味とよく合います。付け合わせは、アンディーブのロースト、広島県のグラニースミスとエシャロット。
もう一品はココットに入れられたカスレ。もも肉をコンフィし、白インゲン豆と根菜を合わせ、仕上げにパン粉を振りました。栄養価も高く、熱々なので寒い冬にぴったりです。
北海道産蝦夷鹿ロースのグリル 竹炭とスパイスのグラモラータ マスタードソース 茸クランブル 雪室熟成マッシュポテト 牛蒡チップ
メインディッシュのエゾシカは低温で火入れし、表面をしっかりとグリル。エゾシカの優しい味わいが感じられます。森をイメージして、スターアニスやコリアンダー、ペッパーを加えた竹炭のパウダーをまぶしました。ほんのりと酸味のあるマスタードソースが心地よいアクセント。
付け合わせは雪室で熟成させた甘くて濃厚なポテトのピューレ、ジロール茸、トランペット茸、セップ茸、ゴボウのチップスとバラエティに富んでいます。オクサリスの葉が酸味と緑のアクセントを加えます。
チョコレートムース チョコレートクランブル ピーカンナッツのキャラメリゼ ヘーゼルナッツ&バニラアイス マロン ゴーフレット ピスタチオスポンジ ラズベリーソース
力強いジビエ料理の後には、さっぱりとしたチョコレートのアシェットデセール。カカオは2種類用いられており、ヘーゼルナッツとバニラのアイスに栗の渋皮煮が添えられています。ラズベリーソースが爽やかです。
ジビエにぴったりなワイン
ジビエづくしのコースにぴったりなワインも用意されています。
骨格のしっかりとしたシャンパーニュ「ルイナール ブリュット」、繊細なフランスのブルゴーニュ地方のピノ・ノワール、どっしりとしたイタリア・ピエモンテ州の赤ワインなど、ジビエに寄り添うワインがグラスで用意されているのです。
ワインはラインナップが豊富で好みの味もあるはずなので、是非ともオーダーするとよいでしょう。
ジビエコースが企画された背景
ホテルでジビエコースが提供されるのは珍しいですが、どのような経緯で企画されたのでしょうか。
料理長の山口氏は次のように答えます。
「以前から、旬の時季にジビエにフォーカスしたコースをご提供したいと考えており、2020年9月頃から構想を練り始めました。どのジビエをどういった料理に仕上げるかなど、コース内容が決まるまでに約1ヶ月を要しました」
同店でジビエコースが提供されるのは初めてのこと。特にこだわったり、苦労したりしたのはどちらでしょうか。
「国産の食材で安定的に仕入れられる質の高いジビエを探すのが大変でした。肉を用いた料理が多くなっているので、コースにスープやグラニテを加えて、メリハリをつけています。最後までおいしく食べていただける構成になっているので、味わっていただけたら嬉しいです」
ジビエに対する想い
山口氏は、子供の頃に狩猟で獲った熊やウサギを食べたり、レストランでフランス産のジビエをよく調理したりと、ジビエは身近な存在でした。しかしその山口氏にも、苦労した経験があったといいます。
「フランスで働いていた時に何羽ものペルドロー(山ウズラ)の下処理にかなり苦労した思い出があります」
ジビエを知り尽くし、色々な思いが詰まった山口氏によるジビエコースを是非とも体験してみてください。