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家系ラーメンらしさとは何か 強烈なインパクトのある塩ラーメン【ラーメン評論家の覆面ラーメン批評7】

山路力也フードジャーナリスト
家系ラーメンを成立させるために必要なものは何か。

千葉屈指の人気と実力を持つ家系ラーメン店

『王道家』出身の人気店『王道いしい』。
『王道家』出身の人気店『王道いしい』。

 1974(昭和49)年に、家系発祥の『吉村家』が創業して今年で50年。ここ数年再び「家系ブーム」と呼ぶべき現象が起こっている。かつては「横浜家系」と言われ、横浜のご当地ラーメン的な捉えられ方をされていたが、家系出身者による独立やチェーン店などの展開によって家系ラーメンは全国区のラーメンとなっている。

 千葉県は関東の中でも人気実力を兼ね備えた家系ラーメン店が多い家系激戦区。人気店『王道家』出身者が、2017年に千葉市で創業した『王道いしい』(千葉市中央区村田町893-116)は、激戦区千葉でも屈指の実力派家系ラーメン店。県内に支店や別ブランドの店舗も展開するなど、千葉で勢いに乗っている家系ラーメン店のひとつと言って良いだろう。

醤油味ではない塩味の家系ラーメン

『王道いしい』の「塩豚骨ラーメン」。
『王道いしい』の「塩豚骨ラーメン」。

 家系ラーメンと言えば、豚骨ベースのスープに醤油ダレと鶏油が浮かぶ、いわゆる「豚骨醤油ラーメン」とカテゴライズされるラーメンだ。しかし『王道いしい』には「塩豚骨ラーメン」なるメニューがある。これは修業先の『王道家』にもないオリジナルのラーメンだ。

 醤油味ではなく塩味である。果たして塩味で家系ラーメンになり得るのか。海苔3枚と青菜を乗せたら家系になるわけではない。醤油ダレは家系ラーメンを構成する上で重要な要素のひとつだ。その醤油ダレを使わずして、このラーメンを家系ラーメンと呼べるのだろうか。

 結論から言えば、このラーメンは紛うことなく家系ラーメンそのものだった。塩角が立ったキレのある塩ダレとスープが見事に調和して、鶏油の甘さと香りがマイルドに全体を包み込む。最初は慣れない塩味に驚くが、食べ進めていくうちに普段の家系ラーメンを食べている時とそれほど違いを感じなくなっていく。この塩ラーメンは家系ラーメンなのだ。

家系ラーメンらしさとは何か

麺は醤油味と同様、修業先の『王道家』によるもの。
麺は醤油味と同様、修業先の『王道家』によるもの。

 世の中には家系と名乗っていながらも、家系らしくない豚骨醤油ラーメンが多く存在する。しかしこの『王道いしい』の「塩豚骨ラーメン」は、醤油味ではなく塩味のラーメンなのに家系ラーメンとして成立している。なぜこのラーメンを家系ラーメンと感じることが出来るのだろう。

 通常のラーメンとの違いはタレであり、それ以外の要素であるスープや鶏油、さらに『王道家』製の麺も具材も同じだ。一般的な塩ラーメンと比べるとこのラーメンの塩ダレは、家系の醤油ダレと同じくパンチとキレがある。さらに表面に浮かぶ鶏油の存在。そして家系ラーメンを作り続けてきた店主のバランス感覚で仕上げた結果が、この塩ラーメンを家系たらしめているのかもしれない。

 家系ラーメンが誕生して半世紀。家系ラーメン店にはつけ麺や油そばを出す店も増えてきた。その中で塩味の家系ラーメンがあってもおかしくはない。家系ラーメンは豚骨醤油味である、という古い縛りを捨てることによって、家系ラーメンはもっと自由になっていく。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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