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近藤一樹が打者3人をピシャリ、田川賢吾は圧巻の三者三振!~燕戦士、それぞれのトライアウト~

菊田康彦フリーランスライター
11年ぶりに12球団合同トライアウトの舞台となった神宮球場(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 12月7日、神宮球場でプロ野球12球団合同トライアウトが開催され、今季限りで戦力外通告を受けた選手を中心に、日本野球機構(NPB)に所属した経験のある57名が参加した。今年も現地に赴くことはできなかったが、CS放送・フジテレビONEの中継をもとに、筆者が取材をしている東京ヤクルトスワローズに在籍していた選手の結果を、投手・野手に分けて出場順にまとめる。

(各打席ともカウント1-1から。「●球目」は実際の投球数による)

投手:由規(31歳)通算91試合32勝36敗0S0H 防御率3.66=今季楽天

 ヤクルトのユニフォームで臨んだ他の選手に先駆けて、トライアウトに登場したのは由規。2018年にヤクルトを戦力外となり、今季まで故郷・仙台を本拠地とする東北楽天ゴールデンイーグルスでプレーしていた右腕にとっては、慣れ親しんだマウンドでの登板となる。

 最初の打者フェルナンド(前楽天)には、2-2から捕手のサインに首を振って投げ込んだ外角への148キロのストレートを右翼ポール際に本塁打されると、続く田城飛翔(前ソフトバンク)には死球。しかし、3人目の大本将吾(前ソフトバンク)は2-2からスライダーで見逃し三振に仕留め、登板後のインタビューでは「思い切って腕を振れたので、自分の球は投げれたんじゃないかなと思います。最後は三振を狙いにいって取れたのでよかった」と話した。

投手:近藤一樹(37歳)通算347試合43勝57敗4S71H 防御率4.50

 オリックス時代は主に先発だったが、2018年には最優秀中継ぎ投手に輝くなど、ヤクルトへの移籍でリリーフとして輝いた近藤。今季ヤクルトで投げたピッチャーの先陣を切って、午後の部の全体9番手で登板した。

 まずは加藤脩平(前巨人)をストレート中心の攻めで空振り三振に仕留めると、続く松井飛雄馬(前DeNA、登録名は飛雄馬)は139キロのストレートでライトフライ。3人目の中村和希(前楽天)に対してはスライダーが外れてカウント2-1になった後、ストレートを続けて空振り三振。登板後は「ちょっと物足らなさは感じてますけど、それなりには投げれたかなっていうのは思います」と振り返った。

投手:ジュリアス(23歳)一軍出場なし=今季育成

 入団2年目の2017年に左ヒジのトミー・ジョン手術を受け、2018年からは育成契約となったジュリアス。今季はイースタン・リーグで10試合に登板も、支配下に返り咲くことのないまま戦力外となった。

 吉川大幾(前巨人)には初球の141キロのストレートでファウルを打たせるも、その後はボールが続いて四球。2人目の松本京志郎(前楽天)もフォアボールで歩かせると、3人目のバッターは今年のトライアウトの目玉である48歳の新庄剛志(元日本ハム)。1-2と追い込みながら、2球目のチェンジアップをレフト前に運ばれ、1つもアウトを取ることはできなかった。

投手:風張蓮(27歳)通算88試合2勝4敗0S5H 防御率5.79

 2018年には自己最多の53試合に登板するなど、リリーフで奮闘した風張。今年はファームで19試合に登板して3勝0敗3セーブ、防御率1.83も、一軍では11試合で防御率7.98と結果を出すことができなかった。

 その風張は今季までチームメイトだった藤井亮太からストレートで立て続けに空振りを奪って三振に仕留めると、続く白崎浩之(前オリックス)は一塁手へのファウルフライ。3人目の田上健一(元阪神)はまず初球に149キロのストレートで空振りさせ、最後はカウント2-2からフォークボールで空振り三振に討ち取った。

投手:山田大樹(32歳)通算88試合29勝33敗0S0H 防御率3.73

 2018年に福岡ソフトバンクホークスからヤクルトに移籍し、昨年は4連勝を含む5勝を挙げた山田。今シーズンは開幕ローテーション入りも、2試合目の登板で序盤にKOされると、その後はファーム暮らしのまま戦力外となった。

 先頭の伊藤隼太(前阪神)にはスライダーを打たせて一塁手へのファウルフライ。2人目の折下光輝(前巨人)にはまずインサイドへの142キロのストレートでファウルさせると、最後は外角低めへのチェンジアップで空振り三振。村上海斗(前巨人)はフォアボールで歩かせてしまったが、こちらも上々のピッチングだった。

投手:田川賢吾(26歳)通算5試合1勝2敗0S0H 防御率7.16

 椎間板ヘルニア手術、育成契約を経て、昨年はプロ7年目にして初勝利を挙げた田川。今年はイースタンで20試合に登板して0勝1敗2セーブ、防御率1.95の成績を残しながら、一軍のマウンドには一度も上がることがなかった。

 最初の永江恭平(前西武)からは外角へのストレートで空振り三振を奪うと、続く広畑塁(前巨人)は145キロのストレートで見逃し三振。3人目の黒羽根利規(前日本ハム)にはカウント2-2から148キロのストレートでバットに空を切らせ、圧巻の三者三振をマークした。

外野手:田代将太郎(30歳)通算241試合29安打2本塁打16打点9盗塁 打率.176

 今季ヤクルトでプレーした選手の中で、最初にトライアウトの舞台に立ったのは田代。埼玉西武ライオンズを戦力外となった2017年にもトライアウトを受けており、これが2回目の“受験”となる。

 最初の打席は、今季はBCリーグの富山でプレーしていた山本雅士(元中日)の前にカウント2-2から空振り三振。だが、2打席目は松田遼馬(前ソフトバンク)の3球目をとらえて一、二塁間を破ると、3打席目も左腕の古村徹(前DeNA)の外へのスライダーをレフト前に運ぶ。午後は元千葉ロッテマリーンズのドラ1左腕・藤岡貴裕(前巨人)に対してセンターフライに終わったが、この日2安打とアピールした。

内野手:藤井亮太(32歳)通算183試合105安打2本塁打18打点7盗塁 打率.242

 プロ入り時は捕手ながら、内外野も守ることのできるユーティリティーとして、2017年にはチーム最多の90試合でサードを守った藤井。今季は2度目の一軍昇格となった11月に6試合の出場で16打数5安打(打率.313)を記録したが、シーズン終了後に戦力外を告げられていた。

 最初の打席は伊藤準規(前中日)、2打席目は今季はBCリーグ栃木で投げていた坂田将人(元ソフトバンク)の前に空振り三振。午後の部となり、第3打席はカウント2-2から渡邉啓太(前ロッテ)の136キロのストレートを打ち返すが、ショートゴロに倒れた。第4打席は前述のとおり、ヤクルトの同僚だった風張蓮の145キロのストレートに空振り三振。こちらは結果でアピールすることはできなかった。

 この合同トライアウト出場を経てNPBの球団との契約にこぎ着ける選手の割合は、過去20年で5パーセントほどと“狭き門”なのは間違いない。元ヤクルトの由規を含め、今年のトライアウトに挑んだ8人の「燕戦士」のうち、吉報は何人に届くだろうか?

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フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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