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「人権守ろう」に大ブーイング、「白々しい」「どの口で言う」―上川法相に批判相次ぐ

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
上川法務大臣のツイッターから

 誰もが人権を尊重し合う社会を共に実現していきましょう―確かに、それは大切なこと。ただ、発言の主が入管施設でのスリランカ人女性死亡事件での対応を批判されている上川陽子法務大臣だったために、「どの口で人権を語るんですか?」「白々しい」との反発を買ったようだ。人権問題に取り組む複数のNGOからも、スリランカ人女性死亡事件についての法務省/入管の調査に対し、連名で抗議声明が出されている。

○上川法相の「Myじんけん宣言 」

 上川法相は、今月3日、自身のツイッターで"誰もが #人権 を尊重し合う社会の実現を目指し,人権を尊重する行動をとることを宣言する「 #Myじんけん宣言 」"とアピールした。これは、公益財団法人 人権教育啓発推進センターのキャンペーンで、団体や企業のトップや一般の個人が、人権擁護の宣言をするというもの。

ウィシュマさん 遺族提供
ウィシュマさん 遺族提供

 だが、今年3月に名古屋入管の収容施設で、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが著しい体調悪化にもかかわらず、適切な医療を受けられないまま死亡したことや(関連記事)、これへの対応で出入国在留管理庁(入管庁)及び同庁を所管する法務省への批判は高まるばかりだ。

○ツイッターで批判相次ぐ

 「 #Myじんけん宣言 」についての上川法相のツイッターの投稿も大いに反発を買ってしまったようだ。「一万五千枚の黒塗り文書出してきて何が人権だか」と、ウィシュマさん遺族の代理人らが法務省/入管に開示を求めた関連書類がことごとく墨塗りであったことへの批判、「ではまずウィシュマさんのビデオ開示をお願いしますね」と、ウィシュマさんが死亡した状況を知る客観的な情報である入管内監視カメラの映像を、ウィシュマさん遺族代理人や野党議員等への開示を拒み続けていることなどへの批判が相次いだ。

○法務省/入管は国際法を守れ

 ウィシュマさんの死亡以前から、難民認定申請者や日本に家族がいる等の自国に戻れない事情を持つ人々を収容施設に長期収容することについて法務省/入管は、国連の人権関連の各委員会から再三、改善を勧告されていた。昨年9月にも、国連人権理事会の恣意的拘束作業部会から、司法の審査なしに収容の開始と継続することを可能とする日本の入管制度や入管法自体が、「国際人権規約(自由権規約9条4項)に反する」と指摘されていた。

 これに対し法務省/入管は「事実誤認」等と反発したが、恣意的拘禁ネットワークや認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ、外国人人権連絡会は今月17日に発表した共同声明で「本件死亡事故は、繰り返されてきた国際社会からの指摘に真摯に耳を傾けなかった結果とも言いうる」と、法務省/入管を批判。同日行なわれた会見で、ヒューマンライツ・ナウ事務局次長の小川隆太郎弁護士は「日本は法治国家ですから、法務省/入管は国際法を守るべきです」と強調した。日本国憲法第98条2項は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」としている。

○国連からの改善勧告を受け入れよう

 ウィシュマさんの死亡について、法務省/入管は今月10日に報告書をまとめ、名古屋入管局長と次長の訓戒処分を決定したが、ウィシュマさんの死因すら特定せず、人が一人死んでいることへの評価や処分も軽すぎるとして、遺族やその代理人、人権団体等から批判の声が上がっている。また、法務省/入管の再発防止策も、医療体制の拡充や入管職員の意識改革等にとどまっており、収容制度自体を見直すものではない。まずは、ウィシュマさん収容中の監視カメラ映像等、法務省や入管は国会等に対しても情報開示していくべきだろうし、「収容は最後の手段」「司法審査は必須」「収容期間の上限を決めるべき」との恣意的拘束作業部会の意見書に対し、真摯な対応をすべきだろう。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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