『らんまん』の寿恵子(浜辺美波)を、「朝ドラ三大女房」と呼びたいワケとは?
半年間続いてきた連続テレビ小説『らんまん』(NHK)も、いよいよ今週末で幕を閉じます。
関東大震災の前あたりから時間は一気に進み、気がつけば万太郎(神木隆之介)も妻の寿恵子(浜辺美波)も、孫のいる夫婦になっていました。
「寿恵子という存在」の大きさ
ここまで見てきて、つくづく思うことがあります。
それは、このドラマにおける「寿恵子という存在」の大きさです。
万太郎はもちろん、見る側にとっても、彼女がいてくれて本当に良かった。いや、助かったということです。
何しろ、万太郎という主人公は、良くも悪くも、ずっと同じことを続けてきた人物です。
大学に出入りしようが、それを禁じられようが、また多額の借金を抱えようが、年齢を重ねようが、万太郎がやってきたことはいつも変わりません。
ひたすら植物採集を行い、その草花を絵と文で記録し、それが貴重な植物図鑑となっていく。
モデルの牧野富太郎が実際にそうだったのかもしれませんが、ドラマの主人公という意味では、「変化」にとぼしいことは否めませんでした。
その一方で、物語に豊かな「起伏」を与えてくれたのが寿恵子です。
研究に湯水のごとくカネを使う夫のために家計をやりくりし、借金取りたちとの愉快な攻防を繰り返しながら、いつも笑顔を絶やさない。
ついには、自分で「待合茶屋」まで開業してしまった。
夫と暮らす長屋ではごく普通の妻であり母でありながら、自分の店では凛とした美しい女将です。
さらに関東大震災の後、万太郎にも知らせず、東京郊外に土地を購入。
住居と標本の保存だけでなく、四季の草花と常に接することの出来る環境を整えました。
しかも、それらはカネに無頓着な“坊ちゃん”である万太郎のためだけでなく、自らの意思と選択による、自分の「生きる道」でもあったのです。
寿恵子は「朝ドラ三大女房」の一人に
『南総里見八犬伝』の愛読者である寿恵子は、自分の人生を「冒険」に見立て、夫を支える苦労も困難も常に楽しんできました。
誰をも和ませてしまう笑顔と、ここぞという時の思い切りの良さと勝負勘。
その姿が見る側を元気づけ、寿恵子と共に万太郎という“不思議な天才”を応援する気持ちにさせてくれたのです。
『らんまん』における、「もう一人の主人公」だった寿恵子。
これはもう、『ゲゲゲの女房』の布美枝(松下奈緒)や、『まんぷく』の福子(安藤サクラ)と並ぶ、「朝ドラ三大女房」と呼んでもいいのではないでしょうか。
そんな寿恵子の魅力を、浜辺さんが全身で表現してくれました。少し早いですが、大きな拍手を送りたいと思います。