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なぜ国民民主党は若者に人気なのか?

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
(写真:つのだよしお/アフロ)

最近、国民民主党の若者人気がすごい。

特に、玉木雄一郎代表の人気が高い。

筆者の周りの高校生や大学生でも「ファン」になっている若者が多く、ネット上でも高い評価となっている。

昨年末、2021年に活躍した国会議員を若者に聞いた際には、「玉木雄一郎」の名前が最も上がった。

若者が選ぶ、2021年活躍した国会議員はだれか?

・政策提案型そして政策先導型の野党、国民民主党の代表。衆議院選挙では給料が上がる経済政策や教育の無償化、トリガー条項の凍結解除などを訴え、まさにこれからの日本に必要な経済政策等を訴えてきた。

そして実際に12月の臨時国会ではトリガー条項凍結解除法案や消費税減税法案を提出し、まさに批判で与党の足を引っ張るのではなく、提案して与党のケツを叩いて政策を実現していく、本来のあるべき野党の姿を実践されている。これからの活躍にも期待したい。

・積極財政、若者政策などを掲げ、政策で支持された政治家

・保守系野党党首として憲法改正論議を推し進めたり、高騰するガソリンを値下げするトリガー法案をどの党よりも先に提案したから

今回の参院選においても、若い層だけで見れば、自民党が圧倒的な人気であることは間違いないが(自民党は全世代でダントツ)、野党第一党の立憲民主党にも引けを取らず、若い世代が国民民主党を支えている。

参院選の出口調査。出典:ABEMA Prime
参院選の出口調査。出典:ABEMA Prime

2021年衆院選の比例投票先、出典:TBS
2021年衆院選の比例投票先、出典:TBS

ちなみに、立憲民主党は、高齢世代からの支持が多い。

2021年衆院選の比例投票先、出典:TBS
2021年衆院選の比例投票先、出典:TBS

その理由については、昨年の衆院選後に書いた通りだ。

立憲民主党はなぜ若者の支持を得られなかったのか?(室橋祐貴)

党の代表選を経て、党執行部は変わったものの、党の性質としては、あまり大きな変化はない。

国民民主党が若者から支持を得ているワケ

では同じルーツ(民主党)を持つ国民民主党はなぜ若者から人気なのか?

大きくは下記に分類できる。

・「対決よりも解決」への共感(改革志向が強い)

・党として若者世代を重視

・玉木雄一郎代表など執行部が人気

「対決よりも解決」への共感

昨年、衆院選の後、日本若者協議会の会員メンバーに対して、各党に投票した理由を聞いたが、そこで最も上がっていたのが、「批判ばかりではない」「現実路線」といった「対決よりも解決」という党の姿勢への共感だ。

国民民主党:積極財政派、対決よりも解決

・積極財政派であること

批判ばかりでないから(18歳)

・提案実績も素晴らしく、現実路線の改革中道政党だから。(18歳)

・自民党も立憲民主党も嫌だから。具体的な政策に則り問題解決を図る国民民主党がいいと思ったから。(21歳)

・最も自分の志向に合致する政策提言をしているため。必要な改憲に賛成、男女格差への言及、人口減少に対する問題意識、教育・子育て拡充の必要性提言、親米独立外交など。また、「育てるべき野党」として着目している節もある。(21歳)

・現在の自民党の体制に賛同しているわけでは無いので、比例では自民党以外に入れるつもりでいた。その上で、自分が重視する安全保障政策や憲法改正を巡って現実的な案を提示していた国民民主党には期待しているから。(20歳)

・野党の中で唯一政策を提案する野党だったから。

積極財政政策が魅力的だから。

若者政策に力を入れているから。(18歳)

・積極財政への転換や検査の拡充、感染拡大防止政策、ジェンダー政策など現実的に実行可能な公約を掲げ、日本の未来を良い方向に変えてくれるような風を感じたから。(18歳)

引用元:若者が各党に投票した理由は何なのか?日本若者協議会アンケート(室橋祐貴)

日本に余裕のあった20世紀後半なら理想主義の方が若者に人気が出たかもしれないが、近年の日本は、多くの課題が表面化しており、若い世代は特に身近な課題を感じている。

具体的には、学費の負担(奨学金の返済)や長時間労働の割に給料の上がらない(生産性の低い)労働環境、子育て環境の大変さ、いじめや自殺などだ。

とにかく、課題解決をしてほしい、その切迫感を抱えている。こうした状況から、現実主義な傾向が強く、一つでも課題を解決してくれる政党を求めている。

それが、「対決よりも解決」を掲げる国民民主党のスタンスにマッチしている。

実際、近年話題のヤングケアラーや生理の貧困など、若い世代の声を受けて、国民民主党が推進した政策課題は多い(逆に同じ要望を届けても、立憲民主党の動きは鈍い)。

選挙期間中にも、2020年はじめに書いた記事が多く読まれていたが、下記の記事が、国民民主党と立憲民主党のスタンスの違いをよく表している。

立憲民主党と国民民主党の違いが際立った代表質問(室橋祐貴)

若者が自民党を支持していることから、よく「若者は保守化している」と言われるが、実際は現実主義かつ改革志向だ。

読売新聞・早稲田大学の調査にある通り、若者にとって改革政党は自民党であり、改革色の弱まった岸田政権になってから、若者の支持率が下がっていることもそれを裏付けている。

「自民党こそリベラルで革新的」——20代の「保守・リベラル」観はこんなに変わってきている(室橋祐貴)

また、国民民主党の予算案賛成に対して、政界、特に他の野党や、政治評論家からはかなり低い評価となっていたが、国民からは、前向きに評価されている。

日本経済新聞社が3月25~27日に行った世論調査によると、「評価する」と答えたのは56%で、「評価しない」の28%を上回った。

世代別にみると、特に現役世代からの評価が高く、「評価する」は18~39歳が63%、40~50歳代が65%、60歳以上は51%だった。

国民民主党の予算案賛成は、「日程闘争」から「政策本位」の国会運営への転換点になるか?(室橋祐貴)

党として若者世代を重視

次に、単純に、国民民主党が若者世代を重視しているという点が挙げられる。

昨年の衆院選から掲げている「給料が上がる経済」というのはまさに、現役世代をメインターゲットとした政策であるし、教育国債の発行などもそうだ。

今回の出口調査でも、若い世代が重視する政策は「教育・子育て政策」、「景気・雇用」、「外交・安全保障」が高くなっているが、国民民主党はそこを重点政策として掲げている。

出典:日本テレビ
出典:日本テレビ

一方、立憲民主党も確かに「国公立大学の授業料を無償化」を掲げているのだが、財源がイマイチ不透明で、実現性が乏しいのに加え、党首討論を見ても、物価高対策として年金受給者への対策をよく訴えたりと、やはり高齢世代を重視している印象が否めない。

玉木雄一郎人気の理由

最後に、玉木雄一郎代表など執行部の人気が高い。

冒頭で紹介した「若者が選ぶ、2021年活躍した国会議員はだれか?」では、一番目の玉木雄一郎代表に続き、二番目が副代表の伊藤孝恵参議院議員になっている。

伊藤孝恵 参議院議員(国民民主党)

・コロナ禍で問題になった孤独政策に大きく寄与。世界で二例目の孤独担当大臣を提案した。また、女性の生理問題など今まで表に出なかった政策を次々と提案し、日本に大きく貢献した。

・生理政策、虐待防止

・伊藤さんは子どもを産め産めという国の少子化対策に疑問を呈していて、まずは、子どもを産み育てることができる環境を整えることこそが1番の少子化対策であると訴えている。具体的には子どもを産み育てられるだけの給与水準の引き上げであったり教育にお金がかからないようにすることで子どもを育てるのにできる限りお金がかからないようにすることが必要であると訴えている。

この考えが世の中に広まって欲しい。

・ヤングケアラーの実態調査の実現

引用元:若者が選ぶ、2021年活躍した国会議員はだれか?(室橋祐貴)

中でも人気なのが、玉木雄一郎代表だが、なぜ若者から、玉木雄一郎代表が人気なのか?

周りの意見やネット上の反応を見ると、大きくは下記の理由が考えられる。

・明るい

・前向き、柔軟(否定から入らない)

・国民(特に若者)を重視しているから

こうした印象は、日経テレ東大学の玉木雄一郎代表の回と立憲民主党の泉健太代表の回を見比べればよくわかる。

【ひろゆき&成田悠輔】衝撃結末!野党党首に前代未聞の刺客【国民民主党 玉木雄一郎の野望】|Re:Hack

【ひろゆき&成田悠輔】日本を立憲民主党に任せて良いのか?【前代未聞の激論】

銃撃事件で死去された安倍晋三元首相が、若い世代から人気だったことを考えても、明るさやかわいらしさの「キャラ」は意外と重要である。

若年人口が少ないため、国民民主党が大きく躍進するほどの勢いはまだない(それでも昨年の衆院選に比べ主要政党の中で最も比例獲得票数は増やしている)。

ただ今後、主権者教育をきちんと受けた政治リテラシーの高い若い世代が増え、世代交代が進む中で、一つでも具体的に課題を解決しようとする、「対決よりも解決」の姿勢を持つ政党の方が支持を伸ばすことは間違いないのではないだろうか。

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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