増税!森林環境税と森林バンクの怪しい内実
このところ消費税アップに観光促進税(出国税)の導入など増税の動きが目立つが、森林環境税の創設が検討されていることをご存じだろうか。
森林整備の財源とするため、市町村民税(個人住民税)に定額を上乗せして、森林整備に充てる財源を得る構想だ。年間一人当たり数百円~1000円を徴収して数百億円の収入を見込む。
旗を振っている林野庁や林業関連団体からすれば「長年の悲願」なんだそう。ようするに税収は、ほとんど林業界に回ってくるわけだし、林野庁も自前の財源(徴収は総務省の担当だが)を持てると期待している様子。
だが、肝心の税の使い道はどうなっているのだろうか。
これを財源に市町村に「森林バンク」を設立させる構想が進んでいる。所有者が不明のほか相続手続きがされず、境界線が確定していない、経営意欲がない……などの理由で放棄状態の山林を市町村が預かり、それを意欲的な林業事業体に委託して木材生産をさせるという。なんのことはない、環境対策としての森林整備というよりは林業振興策である。
しかし、ほとんどの市町村には森林や林業の専門職員がいず、適正な運営を行えるか疑問だ。これまでも、やみくもに間伐を推進して逆に森林を傷だらけにしたり、業者の皆伐を容認しはげ山を増やしたりするケースが続発している。委託対象となりそうな“意欲的な林業事業体”が、どんな方針や技術を持っているのか十分に吟味するほか、施業内容を指導できるのだろうか。
かといって地域の事情に疎い霞が関の言いなりになって、よい森づくりができるとは到底思えない。
また山林の預かりには強制権を伴うケースも想定されるだけに、裁判沙汰も起きかねないだろう。
また森林バンクに預けられる放棄山林は、所有者が利益を見込めないと諦めたところが多いだけに、税金を注ぎ込んでも焦げつく心配がある。実は農地においても同じような目的で「農地バンク」(農地中間管理機構)が設立されたが、現在ほとんど機能していないのだ。
実は森林環境税は、すでにある。37の府県、および横浜市が導入している、森林整備のための財源として生み出した自治体の独自課税だ。しかし今検討されているのは国の税金である。名前が同じだけでなく、目的も同じ。すでに導入している自治体からすれば「二重課税」になりかねない。この件については、すでに2年前に私が指摘してきた。
(当時35だった自治体の森林環境税は2府県増えた。環境省の新税は、まだ動き出していない。)
不思議なことに一般的な増税には反発する国民も、森林など環境保全を持ち出すと理解を示しやすい傾向にある。しかし目的や効果がはっきりせず、単なるバラマキになりかねない新税には、もっと厳しい目を向けた方がよい。