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トランプ弾劾はあるのか? オッズが示す確率は75%!

山田順作家、ジャーナリスト
バグダデイ殺害を発表する大統領。弾劾調査が進行するなか言動が支離滅裂化している。(写真:ロイター/アフロ)

 ウクライナゲートが始まって以来、ベッティングサイトでのオッズの動きを注視してきたが、最近は、「弾劾される」が記録的な人気となっている。

 ブックメーカーは、何種類かのベッティングを用意しているが、いちばんシンプルなのが、「トランプは最初の任期中に弾劾されるか」(Trump will be impeached within his first term.)というもの。このオッズが、10月24日に75%を超えて以来、高止まりしている。

 予想サイトの「プレディクト・イット」(PredictIt)やオッズ情報サイトの「オッズ・ウオッチ」(Odds Watch)などを見ると、現在(10月30日)も、なお75%をつけている。

 オッズが75%ということは、株式売買と同じ仕組みなので、75セントをベットすれば1ドルになるということ。つまり、倍率は約1.3倍。これは、非常に高いオッズだ。

(注)一般的にオッズが高いというと、人気がないことを指す。しかし、ここは「倍率オッズ」ではなく「%オッズ」なので、高いほど人気があることになる。

 オッズ75%、倍率約1.3倍というのは、競馬なら大本命馬のオッズである。オッズ75%は確率も75%ということだから、トランプの弾劾はかなり濃厚と多くの人間が考えていることになる。

 しかし、トランプが任期中に大統領をやめてしまう(任期をまっとうできない)というベットは、ここまで高くなっていない。「オッズ・ウオッチ」では、「トランプは最初の任期が終わる前に弾劾や辞任などの理由によりオフィスを去るか」(Trump will leave office early before the end of his first term due to impeachment, quitting etc.)というベットがあり、そのオッズは24%となっている。

 24%というのは確率24%で、倍率は約4倍である。となると、多くの人間は、トランプは任期をまっとうできると考えているということになる。トランプの岩盤人気の強さが、ここに表れているのだろうか?

 じつは、このベットは、2017年8月から行われている。そこで、始まったときのオッズを見ると、50%を超えている。当時は、ポール・マナフォートの家宅捜査などがあり、ロシアゲートが盛り上がっていた。状況によっては弾劾もありえるとされていた。だから、高かったのだろう。

 しかし、その後、オッズは下がり続け、2018年になると40%を割り、2019年になると30%も割った。しかも、ウクライナゲートが始まる前の8月には、10%近くまで下がっていた。

 それが、9月になって反発、24日にナンシー・ペロシが正式に弾劾調査を開始すると発表してから上がり出し、10月22日を潮目に流れが大きく変わった。20%を一気に超えたのだ。この日は、ウクライナ代理大使のビル・テイラーが下院の聴聞会で証言した日だった。

 トランプ弾劾ベットとともに、「エリザベス・ウォーレンは2020年大統領選挙に勝つか」(Elizabeth Warren will win Presidential Election 2020.)というベットも行われている。これは、10月9日、民主党支持者の世論調査でエリザベス・ウォーレンがジョー・バイデンを抜いてトップに立ったからだ。ただし、当初のオッズは25%、その後28%まで上がったが、現在は22%まで下がっている。

 ちなみに、「トランプは次の2020年大統領選挙に勝つか」(Trump will win the next election Presidential Election 2020.)のオッズは42%である。

 民主党は、10月31日に弾劾調査の議会証言を公開で開く方針を盛り込んだ決議案を下院で決議する。これまで証言(聴聞会)は非公開で行われてきたが、これを公開にすることで、世論の支持を得ようというのだ。

 ここまで、弾劾調査委員会は、ウクライナゲートの鍵を握るとされるルディ・ジュリアーニやマイク・ポンペオに召喚状を出して証言を求めたが、拒否されている。

 弾劾手続きは、証言や資料がそれなりに揃わないと進まない。当初、民主党は11月28日のサンクスギビングまでに「弾劾条項」と呼ばれる訴追の採決を目指すとしていた。しかし、これが実現する可能性は、いまのところ低い。

 となると、年内いっぱい弾劾調査は続くだろう。

 しかし、2020年になれば、2月から大統領選予備選が始まる。そうなると、弾劾訴追での政党間の駆け引きや争いに、アメリカ国民は嫌気がさす可能性がある。国民が関心のあるのは、政治より経済だ。その意味で、弾劾は時間との戦いになるかもしれない。はたしてトランプは逃げ切れるのか?

 オッズの動きに、引き続き注目していきたい。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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