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ロキテクノ富山の藤田太陽監督(元阪神)、涙があふれた都市対抗野球出場決定

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
ロキテクノ富山の伊東伸オーナー(中)、藤田監督(右)、伊東大輔ヘッドコーチ(左)

 7月に行われる『第93回都市対抗野球大会』の出場チームが、きょう13日に出揃いました。まだ決まっていなかった2地区の二次予選があり、南関東地区(第3代表)は日本製鉄かずさマジック、四国地区(代表1)はJR四国にサヨナラ勝ちした四国銀行が全国切符を手にしています。

 これで12地区の代表31チームが決定。そこに推薦出場の前年度優勝・東京ガスを加えた32チームが、7月18日から東京ドームで行われる本大会に挑みます。組み合わせ抽選会は17日、楽しみですね。

 さて、元阪神の選手たちが所属するチームの中で都市対抗野球の本大会出場を決めた2チームを2回に分けてご紹介します。きょうは阪神や西武、ヤクルトなどでプレーした藤田太陽監督(42)が指揮を執るロキテクノ富山です。

◆ロキテクノ富山、成長中

 富山県中新川郡上市町を本拠地とするロキテクノ富山は、企業チームに登録されて2年目。藤田太陽監督も就任2シーズン目です。そこで手にした都市対抗本大会出場の切符!31チーム中、唯一の初出場となりました。勝利の瞬間に涙があふれたという藤田太陽監督の、まずは就任1年目の記事をご覧ください。

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<元阪神タイガースの藤田太陽監督が愛と情熱を注ぐロキテクノ富山>

 またロキテクノ富山は西武、阪神などでプレーした水田圭介さん(41)が野手総合コーチを務め、ことしから新たに西武、ソフトバンクなどでプレーした細川亨さん(42)がバッテリーコーチとして加わりました。さらに副部長でもある伊東大輔ヘッドコーチ(37)とともに頼もしいスタッフです。

6月5日、優勝旗を持って記念撮影。左から伊東ヘッドコーチ、細川コーチ、伊東オーナー、藤田監督、水田コーチです。
6月5日、優勝旗を持って記念撮影。左から伊東ヘッドコーチ、細川コーチ、伊東オーナー、藤田監督、水田コーチです。

 都市対抗予選の前に、今季のロキテクノ富山を少し振り返ってみましょう。

 今季初公式戦は3月21日から28日までで行われた『第112回富山県社会人野球リーグ戦』(富山アルペンスタジアム)で、結果は3戦全勝で2年連続優勝!ついで4月9日から12日までの『第63回JABA富山大会』(富山アルペンスタジアム)は決勝でバイタルネットに敗れ準優勝です。

 そのあとは社会人野球日本選手権対象のJABA大会が2つ続きました。4月21日から24日までは『第63回JABA長野大会』が長野オリンピックスタジアムで行われ、予選リーグは信越硬式野球クラブに●1-7、Hondaに●6-8、TDKに○8-4で1勝2敗で、決勝トーナメント進出ならず。

 ゴールデンウィークに岐阜県で行われた『第74回JABAベーブルース杯大会』は、0勝3敗で予選リーグ敗退。試合はJR東海に●1-4、三菱自動車岡崎に●1-3、この大会で優勝した鷺宮製作所に●3-7という結果です。

5月のベーブルース杯大会・三菱自動車岡崎戦で先発したルーキーの佐藤良明投手。5回2安打1失点(自責0)でした。
5月のベーブルース杯大会・三菱自動車岡崎戦で先発したルーキーの佐藤良明投手。5回2安打1失点(自責0)でした。

◆今すべてが大切な経験

 5月3日の三菱自動車岡崎戦が終わった時に聞いた藤田監督のコメントをご紹介しましょう。決勝トーナメントには進めなかったものの、社会人野球日本選手権対象大会で強豪相手に“戦えた”印象だと伝えたら「うん、うん」とうなずいて、こんな話をしてくれました。

 「彼らが持っている能力はすごいんですよ。冗談抜きで。自分のチームだからではなくて、そういう素材の子を集めているのもあります。ただ実績はない。大学時代も中央の六大とか、そういうところにはいない子ばっかりで。でも今、野球をひとつひとつ覚えている段階だから一進一退はあるけど、こういう経験が僕は大事だと思う」

 「社会人の企業チームとして2年目じゃないですか。まだまだ本当の、こういうトップ企業と当たったことがない中で初めて試合をして、すごくいい経験をしている。相当悔しいだろうし、僕も期待している分、悔しいし。すべてが成功するわけではないですからね、野球は」

 「だからこそ、このあと本当にビッグチームを倒すかもしれない。そういう可能性も秘めているので、僕はすべてマイナスにはとらえていないんですよ。監督としては甘いかもしれないけど。でもこの子たちを見ていて、もちろん怒る時もあるけど、何より前を向いてやってほしい」

ベーブルース杯大会・鷺宮製作所戦で先発したのもルーキーの斎藤康徳投手でした。これは強烈な打球が足を直撃したにもかかわらず「大丈夫」というジェスチャーをするところ。
ベーブルース杯大会・鷺宮製作所戦で先発したのもルーキーの斎藤康徳投手でした。これは強烈な打球が足を直撃したにもかかわらず「大丈夫」というジェスチャーをするところ。

 水田コーチから「若い子が多いので、監督も長い目で見ている」という話を聞きましたが、それにも期限はありますか?「もちろん。結果ばかりを求めたらきりがない。そりゃあ結果を出してほしいけど、そこへ導くのもこっちの仕事なので。何よりも僕は“ピッチャーをちゃんと作る”というところからです。みんなよくなってきたのでね。まだ眠っている子もいるけど」

 「それに」と続けた藤田監督は「ことし初めて、チーム内で競争しているんですよ。実は」と少し目を輝かせます。競争ですか。「去年まではなかったんですけど、ことし初めて選手たちが競争している。だからチーム内競争もあるし、相手に勝つこともそうだし」

 なるほど。チーム内にライバルがいると成長につながると聞いたことがあります。ライバルに勝って、試合でも勝つ。いい競争ですね。「(学生時代に)ずっとレギュラーでしかやってきていない子が基本なのでね。僕はそっと見ていますけど、これがまた目の色が変わっているやつもいて」

 そう話す監督自身も嬉しそうでした。「そういう成長も見えるので、来年、再来年ともっと激しくなるだろうと思いますね。やっぱり競争がないとトーナメントでは勝っていけない。ハートの強さと体の強さと」

ことしからタテジマに!

 ところで、ユニホームが変わりましたよね?「そうそう!ホームのユニホームはタテジマにしたんですよ(笑)」。おお、タテジマ!昨年まで白いところは無地でしたね。ビジターの方も、袖に炎が描かれて勇ましくなったような。「この炎、選手たちがみんな気に入ってくれていると思います」

 イニング間の円陣にも入って、声を出す選手を優しく見守る藤田監督。「みんな明るく前を向いてやってほしいですね。三振して帰ってきても『気にすんな、気にすんな』とか言いますし。だって三振したいバッターなんかいないんで。ただ意図がないとダメ。準備なく三振して帰ってきたとか、それは違うよと」

 そんな藤田監督が締めくくったのは、こんな言葉。「すべて経験。頑張らせるしかないから。今がちょうど変革期でしょう。来年になったら、また違うチームになる。僕が少しずつ、そういう方向に仕向けながらですね」

 「本当にそうですよ。子どもを大人にする段階。もちろん社会人野球は大人だけど、学生野球から本当の大人の野球へ」

これは昨年4月、JABA富山大会での藤田監督。ユニホームはまだ無地でした。
これは昨年4月、JABA富山大会での藤田監督。ユニホームはまだ無地でした。

こちらは今季、新しくタテジマとなったホーム用ユニホーム。モデル?は5月のベーブルース杯大会で投げるキャプテンの斎藤央兆投手です。
こちらは今季、新しくタテジマとなったホーム用ユニホーム。モデル?は5月のベーブルース杯大会で投げるキャプテンの斎藤央兆投手です。

これがビジター用です。右袖の炎がかっこいいですね。ベーブルース杯大会での藤田監督。
これがビジター用です。右袖の炎がかっこいいですね。ベーブルース杯大会での藤田監督。

◆祝・都市対抗初出場!

 では都市対抗野球予選での、ロキテクノ富山の勝ち上がりを振り返りましょう。

 第一次予選の福井・石川・富山県大会は5月13日から富山アルペンスタジアムで行われました。5チームのうち3チームが二次へ進む、その初戦で伏木海陸運送に2対3のサヨナラ負け。敗者復活の3位(第3代表)決定戦へ回り、富山ベースボールクラブと戦って3対0の完封勝利。2年連続の二次予選進出を決めています。

 そして6月2日から長野オリンピックスタジアムで行われた第二次予選北信越地区大会は、敗者復活なしで8チーム中1チームしか全国切符を手にできない、まさに負けたら終わりの戦いです。同じやまがたに、難敵であるバイタルネットと伏木海陸運送がいるという厳しいトーナメントでした。

 初戦は、昨年の二次予選・準決勝で敗れたバイタルネットが相手です。

《都市対抗 第二次予選 北信越大会》

 ◇1 回戦 (6/2)

  バイタルネット-ロキテクノ富山

    バイ 000 002 001 = 3

    ロキ 110 220 00X = 6

   ▼バッテリー

    【バイ】永島-沖垣-松本 / 梅田

    【ロキ】飯塚-斎藤央-澤柳 / 黒田

   ▼本塁打 ロキ:北村2ラン(永島)

   ▼二塁打 ロキ:岡田、横田、横山、櫻吉

 飯塚亜希彦投手が先発し、5回まで無失点。打線は1回に4番・中井雄輝選手のタイムリーで1点先制、2回は内野ゴロで1点、4回には6番・北村進太朗選手が2ラン!5回にも2番・横山圭祐選手のタイムリー二塁打、中井選手のタイムリーで2点を加え、6対3で勝ちました。

4番・中井選手。写真は『JABAベーブルース杯大会』の5月4日、鷺宮製作所戦でタイムリーを放ったところです。
4番・中井選手。写真は『JABAベーブルース杯大会』の5月4日、鷺宮製作所戦でタイムリーを放ったところです。

 2日後の2回戦(準決勝)は昨年の代表チーム・伏木海陸運送との対戦です。

《都市対抗 第二次予選 北信越大会》

 ◇2回戦 (6/4)

  伏木海陸運送-ロキテクノ富山

    伏木 101 000 000 = 2

    ロキ 000 000 003x = 3

   ▼バッテリー

    【伏木】下川-與座 / 幸明

    【ロキ】佐藤-飯塚-澤柳 / 黒田-河野

   ▼三塁打 ロキ:櫻吉

   ▼二塁打 伏木:森川

 先発の佐藤良明投手が1回と3回に1点ずつ取られたものの、以降は飯塚投手が5イニング、澤柳亮太郎投手が1イニングを0点に抑えます。そして0対2で迎えた9回裏、代打・金原瑶選手と1番の横田勝大選手が連打し、1死後に3番・櫻吉宏樹選手の2点タイムリー三塁打で同点!さらに暴投で櫻吉選手が生還し、サヨナラ勝ち!土壇場でひっくり返す勝負強さも見えました。

この写真も5月4日、ベーブルース杯大会の櫻吉選手。背中ですけど、結果はセンター前ヒットでした!
この写真も5月4日、ベーブルース杯大会の櫻吉選手。背中ですけど、結果はセンター前ヒットでした!

 そして翌5日の決勝(代表決定戦)は、もう1つのやまがたを勝ち上がってきた千曲川硬式野球クラブが相手で、結果は8対0の快勝。都市対抗野球本大会初出場を決めた試合です。

《都市対抗 第二次予選 北信越大会》

 ◇決勝 (6/5)

  千曲川硬式野球クラブ-ロキテクノ富山

    千曲 000 000 000 = 0

    ロキ 100 005 20X = 3

   ▼バッテリー

    【千曲】水科-名取-本多 / 石渡

    【ロキ】飯塚 / 黒田

   ▼本塁打 ロキ:黒田2ラン(本多)

   ▼二塁打 ロキ:櫻吉

 ロキテクノ富山が1回、相手エラーにより1点を先取。5回にも2安打などで1死一、三塁として犠打失策があり1人生還、さらに四球で満塁として1番・横田選手が中前タイムリー。横山選手と櫻吉選手も連打でもう1点、なおも1死満塁で中井選手が右犠飛と、この回5点を追加。

 7回には8番・黒田翼選手が2ランを放って計8得点です。投げては3連投の飯塚投手が、6回の内野安打のみの1安打で完封!しかも毎回の13奪三振と圧巻の内容でした。

 この勝利で念願の本大会出場を成し遂げたロキテクノ富山。試合後に行われた表彰式では、飯塚投手が最高殊勲選手賞、北村選手が最高打率賞(11打席9打数6安打で打率.666)、そして最優秀監督賞を藤田監督が受賞しています。

5月3日のベーブルース杯大会・三菱自動車岡崎戦での黒田選手。二塁へ滑り込んでセーフ!ガッツポーズです。
5月3日のベーブルース杯大会・三菱自動車岡崎戦での黒田選手。二塁へ滑り込んでセーフ!ガッツポーズです。

◆「どこが相手でも臆せず臨む!」

 藤田監督に、ベーブルース杯から都市対抗予選までの間に取り組んだことを聞いてみたら「投手は、変化球の使い方、配球を含めたバッテリーの技術向上。野手は、速いストレートに対する準備の仕方、打席での反応を高めるための練習」という答えです。

 この3試合ではチーム打率が3割を超え、さらに防御率が1点台でした!“ピッチャーをちゃんと作る”ことに加え、取り組んできた課題の成果でしょうか?

 「すべてにおいて選手が持っている力を『普通』に発揮出来た結果なので驚きはありませんでした。ただ、ピッチャーの飯塚の連投だけが心配だったのですが、彼自身が一皮むけてくれて、本当の意味でエースになってくれました」

 細川コーチの加入で、何か変わったことはありますか?ベンチで腕を組む姿は非常に頼もしいですね。「バッテリーの質の向上は必須条件なので、彼の存在は大きい。ヘッドコーチの伊東とバッティング面でも、よく協議して練習メニューを作ってくれるので本当に助かっています」

後列左から藤田監督、斎藤央兆投手、長坂拓夢投手、新村将斗投手、佐藤良明投手、前列左から森内寿誠投手、伊藤開生投手、斎藤康徳投手、澤柳亮太郎投手、飯塚亜希彦投手。
後列左から藤田監督、斎藤央兆投手、長坂拓夢投手、新村将斗投手、佐藤良明投手、前列左から森内寿誠投手、伊藤開生投手、斎藤康徳投手、澤柳亮太郎投手、飯塚亜希彦投手。

 改めて、都市対抗出場が決まっての感想を教えてください。「選手の能力を考えれば当然といえば当然かなと思います。ただ、経験値の浅い選手ばかりなので、これをきっかけに自信をつけてくれるといいですね」

 ちなみに勝利の瞬間、藤田監督は号泣だったそうで。「本当に伊東ヘッドと試行錯誤の毎日だったので、とにかくホッとしたのと達成感で涙があふれました」

 最後に本戦へ向けての意気込みと、この1カ月間の取り組みを聞いたところ「もう一度初心に返り、細かな作戦練習を繰り返すことと。選手の身体作りを並行し、起こりうるミスを最小限に出来るような戦略を練ります」という返事。

 そして「素晴らしいチームが出る大会ですが、しっかりと勝ちにこだわり、というか、どこが相手でも臆せず臨み、勝ってみせます」と力強く締めてくれました。クラブチーム時代の2018年に出場した『第43回全日本クラブ野球選手権大会』以来の全国、楽しみにしています!

 <掲載写真はチーム提供>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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