元阪神タイガースの藤田太陽監督が愛と情熱を注ぐロキテクノ富山
社会人野球の3大大会である都市対抗野球、社会人野球日本選手権、全日本クラブ野球選手権は、ことしも東京五輪対応により変則スケジュールでの開催です。まず全日本クラブ野球選手権が5月末に終わり、同じ頃から社会人野球日本選手権の各地区最終予選が始まりました。
近畿地区も6月2日に最終予選が終了、元阪神タイガースの藤井宏政コーチがいるカナフレックスが第4代表で2大会(3年)ぶり3回目の日本選手権出場を決めました!歓喜の胴上げなど現地で取材した様子は次の記事でご紹介しますので、しばしお待ちください。
まもなく出場チームが出揃う『第46回社会人野球日本選手権』は、6月19日からの1回戦がほっともっとフィールド神戸で、7月9日からの2回戦以降は京セラドーム大阪で開催予定です。ちなみに元阪神の阪口哲也コーチがいるパナソニックは、既にJABA九州大会で優勝して26大会連続40回目の出場を決めています。
このチームのために、の思い
今回はその日本選手権出場を目指して、初の北信越地区最終予選に臨んだロキテクノ富山の話を書かせていただきます。ことしから元阪神の藤田太陽さん(41)が監督に就任しました。ここで、藤田太陽監督とロキテクノ富山のプロフィールをご紹介しましょう。
藤田太陽さんは秋田県立新屋高校を卒業後、社会人の川崎製鉄千葉(現JFE東日本)を経て、2000年のドラフト1位(逆指名)で阪神タイガースに入団した右腕です。2009年7月、水田圭介内野手との交換トレードで西武へ移籍。2012年オフに戦力外となり、翌2013年はヤクルトでプレー。そのオフに退団、現役を引退しました。
野球解説や少年野球教室での指導、さらに将来を見据えて飲食業も経験しながら人生を模索していた時期、2012年から日本野球連盟に加盟した富山県富山市の社会人クラブチーム・ロキテクノベースボールクラブとの出会いがあったと言います。
2015年12月からコーチ兼投手として入部。2018年から総合コーチ兼投手で、まだ外部コーチの立場だったのですが、2019年2月1日に親会社である株式会社ロキグループへ入社。野球部のヘッドコーチ兼投手となりました。
なおチームは2016年に都市対抗の北信越地区2次予選に初めて進出してベスト4。2018年には『第43回全日本クラブ野球選手権』の本大会初出場。チーム名を現在のロキテクノ富山に変更した2020年シーズンは、コロナ禍で数少ない公式戦だったけれど『第110回金獅子旗争奪富山県大会』と『第6回JABA北信越カップ』で優勝しています。
そして2020年12月8日、翌年から企業チーム登録へと変更されることを受けて藤田監督の就任が発表されました。
ここまでを振り返って「最初は月一回くらい富山へ行っていた程度だったのが、見ていくうちにだんだんと、このチームのためにやっていきたいという思いが強くなって…気づいたらどっぷり!愛と情熱を注いでいます」と笑いながら「素晴らしい会社なので、この会社のためにも野球を通じて社会貢献をしていきたい」と話す藤田監督です。
監督に就任しても変わらぬ姿勢
ことし2月25日、徳島県鳴門市のオロナミンC球場で春季キャンプを行っていたロキテクノ富山と四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスの練習試合があり、見に行ってきました。試合後のベンチへ伺うと、昔話も交えながら気さくにいろいろ話してくれた藤田監督。その時のコメントをご紹介しましょう。
まず、鳴門市で春季キャンプを行うのは初めてで「去年は佐賀へ行っていて、ことしはコロナのため公共交通機関を使って移動できなかったので、どうしようと。それで富山からバスで来られる暖かいところを探していたら鳴門があって、うまく空いていた」といういきさつ。
「鳴門市がスポーツのキャンプ誘致に力を入れるという話で、いろいろ協力してもらって、本当にいいキャンプを送れました。だからぜひ来年も使いたいなと思っています」とのこと。きっとご縁があったのでしょう。「そうですね。やっぱり“人”なので。それを今回すごく感じていますね」
監督になって変わったことはありますか?「全然!全然です。みんな僕のことを監督と思ってないですよ、多分。ただのオジサンみたいな感じ?」。そう言って楽しそうに笑います。「僕はあんまり、そういう(監督然とした)キャラじゃないんで。きょうの試合中も、負けていようが関係ないから思い切ってやろうよって言っていました」
とはいえ企業チームとなっての初代監督に任命されたわけで…責任重大なのでは?「全然、関係ないですよ。やるのは選手ですもん。僕は『頑張れ~!』って言っているだけだもん。たくましいですよ、選手は。とにかく選手がやりやすい環境でやらせてあげたい。だけど勝つことには執着する」
「もちろん準備不足とか怠慢プレーはいけないけど、一生懸命やった結果がダメだったらしょうがないから。あとは練習しよう!と。足が棒になるまで練習すればいいだけ。結果は結果。力がなければ負けるわけで。だからやりやすいと思いますよ」。悔しかったら力をつければいいということですね。
声を出すための3つの要素
選手たちに、これだけは守ってほしいと伝えているのは?「試合中どんなに良くない状況でも声だけは切らすな、ということ」。本当に、すごく声が出ていました!「ずーっとしゃべっているでしょう?それでも、良くない時はちょっと静かになるから『ベンチどうしたの?』って言う。そしたらワー!って、また声が出る。それだけでいいんです」
続けて、その根拠も説明してくれました。「要は、自信がないと声も出ないし、わからないと出ないし、チームのことを思っていないと声は出ないんですよ。だからこの3つは徹底していくと話しています。この中でプロを目指している子もいるので、だからこそ良くない時にどうするかということですね」
サードの神藤廉太選手(23)が、特に素晴らしい声!「明徳義塾出身、2年目の選手です。あいつはボイスリーダー。声のリーダーにしているんです。彼はね、ほんと最高!4タコだろうが、声だけは4の4だから。ホームランを打ったぐらいの大声を出すので最高です」。確かに、ミスなどで一瞬静かになった?と思っても、すぐ復活して大きな声が聞こえます。
「きょう先発した飯塚 (亜希彦投手、2年目の23歳)は途中で爪をやっちゃって。血マメもできて交代せざるを得なかったんだけど…うちのエースとして頑張ってもらいたい子で本人も悔しかっただろうと思う。でも代わった後もちゃんと声を出していたので、よかった!」と、これは本当にホッとした感じの藤田監督です。
それから「勝手に育ちますよ、選手は」と、ベテランパパみたいなひとこと。
一番大事にしているのは会話
この日の試合中、ヒットかエラーか微妙な当たりだった選手と「本人がヒット!と言い、こっちはエラーだろ!とやりあいました。ベンチで」と大笑いの藤田監督。またゴロの打球を蹴ってしまって併殺が取れなかった選手には「キャプテン翼やな(笑)」と突っ込んだとか。「ぎりぎりでやっているプレーだから、そこで『コラー!』って言っても仕方ない。同じような打球を捕って繰り返すしかないです」
そのあと「僕らの時代は許されませんでしたけどね、ああいうミス。怖かったですよねえ!」と、こっちを見てニヤリ。そうですねえ。あの頃はベンチから怒号や破壊音が聞こえてくることもありましたっけ。それはもちろん阪神に限らず、ですけど。
「今の子の8割は、言うことを“そうだな”って聞いてあげないと心を開かないです。それで『俺はこう思うんだよ。だからやってみようよ』と。でも中には厳しく言った方がいい子もいるので、その子には言いますよ。それでギュッと締まる子もいるし。厳しい時は厳しいですよ、もちろん。練習中とか、やる時はやる」
そこは相手を知って臨機応変に、ということでしょう。「言葉って怖いなと思います。『何しとるねん!バカ』って言われたら、その人を嫌いになるもん。まあ、そういうのがあったから成長できたと思いますけどね。今となれば」。また少しニヤリ?しかも『何しとるねん!』が関西弁だし(笑)。今となれば成長の糧だったと言ってもらえるなら、よかったです。
「とにかく会話して、それだけですね。会話しないと人間性も見えてこないし、イメージではできないから。やっぱり100回、200回やっているサインプレーを、ここで出すか出さないか決めるのって相手をわかっていないとできない。そいつと心中するわけなので」
「野球ってやっぱり人でやるので、すべては人なんです。“この人と野球をやりたい”と思ってくれたら、こっちはそれを裏切れないでしょう?その子から野球を奪うわけにいかないですもんね」
いい言葉です。ちょっと違うかもしれませんけど、ふと武田信玄の「人は石垣、人は城、人は堀」という名言が浮かびました。
ここまでは2月のキャンプで聞いた話で、それから3か月過ぎた先日も監督として大事にしていることを尋ねたら、やはり会話だという答え。
「現代野球では一喝することで委縮してしまう子も多い。だから理由と現状を理解させるためにも、声かけを大切にしています。何よりこれからのチームで、ハートの弱さが試合で露呈することも時おり見えるので、とにかく気持ちから闘う姿勢を見せられるように指導しています」
今季ここまでの公式戦結果
続いて、ことし藤田監督になってからの公式戦を簡単に振り返りましょう。今季最初の公式戦は長野オリンピックスタジアムなどで4月7日から行われた『第62回JABA長野大会』。優勝すれば社会人野球日本選手権に出場できる“対象大会”でした。
予選リーグ初戦で、藤田監督は自身の古巣・JFE東日本(当時は川崎製鉄千葉)を相手にしての初采配となりました。結果は先発の新村将斗投手(22)が3回4失点で、以降の5投手は無失点に抑えたものの4対2で敗れています。
次の七十七銀行戦は、前日も中継ぎで2イニングを投げた飯塚投手が7回を無失点。同じく連投の斎藤央兆投手(25)も0点に抑え、2対0の完封勝利でした。しかし3試合目のトヨタ自動車には5点を取りながら9対5で負け通算1勝2敗で予選敗退。
4月16日からは、地元で開催の『第62回JABA富山大会(富山市長旗争奪)』に出場しました。 “日本選手権対象大会”ではありませんが各地区主催JABA大会の1つで、これまでもロキテクノベースボールクラブとして参加してきた公式戦です。
1回戦(県営富山野球場)のルネス紅葉スポーツ柔整専門学校は6対3で勝利、雨の中で行われた2回戦(アルペンスタジアム)はHard Ball Club金沢に14対4の7回コールド勝ち。しかし準決勝(アルペン)はエイジェックと対戦して4対1で敗れました。このエイジェックが優勝しています。
1回戦は、まだ立山連峰にしっかり雪が積もる現地で見てきました。試合後の話を少しご紹介します。スコアはこちら。
ルネ 100 001 010 = 3
ロキ 010 002 30X= 6
藤田監督は「トーナメントって本当に難しい。強いチームが勝つのがトーナメントじゃなくて勝ったチームが強いという、その難しさを改めて感じています。でも結局、底力が後半の攻め方で出てくる。5回まで均衡していても、このあと普通に点を取るだろうなと思って見ていましたけど…もうちょっと早くエンジンかかってほしいですよね」と最後は苦笑いです。
時代の流れも、人の変化も柔軟に
後半にミスで1点ずつ失った件に触れ「ちょっと残念なミスだったので、徹底的に鍛えます!守備を」と言ったあと、すかさず「いや、攻守ともですね」と訂正。「まだ“よーいドン”がちょっと…。入り方がぬるい!1球目のスイングとか、最初の打球処理とか、その1歩目とか。そこにまだぬるさを感じて、練習では厳しく言っているんですけど実際、試合になるとね」
そして「試合でできなかったら、それはできていないのと一緒。そこはもう、しつこくやっていきます。はい、しつこく!」と強調する藤田監督。「アマチュアってのは、プロのように“あしたがある”っていう野球じゃない。このミス1つが命取りになるので、肝に銘じてやってほしいです」とのことでした。
この試合で起きた、とある内野エラーについて藤田監督が「きょうに関しては正面に入って捕るべき打球だったから完全なミスですけど」と前置きしたうえで、こんな話をしています。「実は今、あの捕り方の練習をしていて。逆シングルで捕ってから早く投げる練習をやっている最中なんです」
それと同じことを先日、深夜のテレビ番組にゲスト出演した西岡剛選手(元BCリーグ・栃木)が言っていたんですよね。昔はどんな打球であれ、必ず体の正面で捕らねばならないと教えられたけど、それではスローイング動作に入るのが遅れる。だから投げることを前提にした捕球をするのが理想、というような内容でした。時代とともに変わっていくのかもしれません。
私が中学の時(大昔!)なんて、野球部のピッチャーだった子は肩を冷やすなと夏休みのプール禁止だったのが、投げたら氷で冷やす時代になったり。水はどんどん飲めと言われるし、うさぎ跳びは『巨人の星』でしか見たことがない子もいるし。って脱線しましたね。とにかく藤田監督は、自身をニュートラルなところに置いて向き合える人だなと思います。
日本選手権最終予選に初挑戦
では最後に『第46回社会人野球日本選手権・北信越地区最終予選』の結果をご覧ください。5月28日から30日まで、長野オリンピックスタジアムで行われました。参加したのは7チームで、代表は1チーム。ロキテクノが日本選手権の予選に出場するのは初めてです。
【5月28日 1回戦】
信越硬式野球クラブ vs ロキテクノ富山
信越 020 130 000 = 6
ロキ 310 001 004x= 9
◆バッテリー
信越:中村-長澤-和田/北村
ロキ:新村-伊藤-飯塚/黒田
《試合経過》 ※敬称略
1回に連打などで3点を先取したロキテクノは、2回に信越・百目鬼の2ランを許すも直後に1点を追加。しかし4回に1点、5回に3点を失って6対4と逆転されました。6回に5番・宮本がタイムリー三塁打を放って1点差。
そのまま迎えた9回裏、1死一、三塁でセーフティースクイズ成功!これで追いついたロキテクノはなおも1死一、二塁で4番・中井が3ラン!劇的なサヨナラ勝ちで準決勝進出です。
【5月29日 準決勝】
バイタルネット vs ロキテクノ富山
ロキ 100 000 000 = 1
バイ 006 010 10X = 8
◆バッテリー
ロキ:新村-孫大-長坂-伊藤-斎藤-松原/黒田-沢田
バイ:佐々木-江村-松本/梅田
《試合経過》 ※敬称略
この試合も1回に4番・中井のタイムリーで先制したロキテクノですが、2試合連続先発の新村が3回につかまりました。先頭から4連打で3点(連続タイムリー二塁打)、2人目の孫大に交代してからも暴投やタイムリー三塁打で3点と、この回は打者一巡で計6点を失います。
その後も5回に1点、7回は守備の乱れにより1点を追加され、1回を除く毎回ランナーを出し、3回以降は毎回の計13安打を浴びた投手陣。一方、打線は6回の2死満塁などチャンスを作ったものの、終わってみれば1回の1得点のみ。8対1で敗れ、決勝進出はなりませんでした。
泥臭い野球を徹底しなければ全国へは行けない
この2試合について藤田監督が寄せてくれたコメントをご紹介します。
課題と収穫を聞いたところ「明るい兆しとしては、今まで越えられなかった信越硬式野球クラブに対して最後まで集中力を切らさずチャンスを作り続けてプレッシャーをかけ、投手陣では飯塚の仕上がりの良さが見えました」と、まず収穫。「対して課題は、まだまだ1球に対する執念が足りず徹底した細かな作戦面でのミスも多くて、積極的な機動力は物足りませんでした」
これまでは全日本クラブ野球選手権の本大会と時期が重なるため、今季初めて臨んだ地区最終予選。「だからこそ、毎年全国へ出ているような信越クラブさんに勝てたことはかなりの収穫であり、その先の連戦を連勝するチーム力は、まだまだこれからの課題といった感じですね」と藤田監督は繰り返します。
1回戦でサヨナラ3ランを放った中井雄輝選手(22)は、ルーキーながら4番ですね。「中井はきっちりと最低限、自分がやるべき仕事を理解し、努力しています。春先は宮本を4番で使ったのですが、中井が4番を自力で勝ち取りました。広角に打てる器用さと長打力が魅力です」
投手陣もルーキーの新村投手、伊藤開生投手(23)が連投、しかも新村投手は2日連続の先発!「投手陣の新村はまだまだこれから。経験を積ませるためももちろんですが、彼は考えすぎて不利なカウントにしてしまうところがあるので、今回はいい勉強をしたのではないでしょうか。将来は彼が右のエースとして成長してほしいという思いも込めて連投させました」
「伊藤は本来であれば先発起用したいのですが、トーナメント戦なので中に入れました。彼もまだ経験が浅く、持っている能力だけで投げている段階。スケールも大きく、将来的にプロも狙える逸材なので、この悔しさや失敗を経験し、さらなる練習に励むことでしょう。2人の連投は予定通り。勝てば3連投予定でした」
3連投予定!社会人野球で、ないとは言えないことですが…でも連投した2人にとって大きな経験だったはず。次の都市対抗予選にも生きてくるでしょう。
その都市対抗野球は9月に1次予選が始まります。現時点で強化すべきところを尋ねたら「都市対抗予選は、すべてのチームが均衡しており、どこが出てもおかしくありません。何よりバッテリーのレベルアップと、走塁技術の向上は必須。これから打線や守備位置も変更し、選手個人の意識改革に着手する予定です」と藤田監督。
そして締めはこんな言葉でした。「現実と理想のギャップに気付かせ、泥臭い野球を徹底させなければ、我々は全国に行けないと思います」
「今、進行形で最高に楽しい!」
2月のキャンプで聞いた話を最後にまた書きます。監督業は大変でしょう?と記者陣に労われた藤田監督は「最高ですよ、この仕事。本当に」と笑顔いっぱい。そして「僕、選手より指導者の方が絶対に向いているんですよ。野球選手は向いていない!」と。あらま、言いきっちゃいましたね。
「インハイとか投げたくないタイプのピッチャーなので(笑)。できればアウトコースばっかり投げたいんですけど…って。だから、ほんと選手には向いていない」。爆弾発言ですよねえ。でもみんなで爆笑しちゃいました。
今、楽しいですか?「楽しい。最高、最高です!今、進行形で最高です」
「これまでもプロを含めて、いろんな指導者としてのお話をいただいたんですけど、今ここで指導しているのが一番幸せ。未来はまだわからないし、何か展開があるかもしれないけど、今現在ここに携わらせてもらえるってのは最高ですね」
目標は?「そりゃあ都市対抗で優勝しますよ。したいじゃないですか。あと50年くらいかかるかもしれませんけど(笑)。まだ生きててよ!僕は死なないよ」。いや~私はさすがに約束できないですねえ。一応、頑張ってみますが。
「でも大げさな話じゃなくて、それくらいのちゃんとした夢…じゃないな、目標だな。目標を持って、ちょっとずつですけどね。若い子たちとこうやって野球ができるんでね。あんまり老けないように僕も頑張りますわ」
老けないどころか、昔と全然変わっていませんよ。「変わってるよ~!ユニホーム脱いだ途端、こうなるからね」と、おなかを前へ突き出すジェスチャー。それはお互い様です。
エピローグはテニスの王子様
ところで、藤田監督には高校3年生の息子さんがいます。小学6年生まで野球をやっていたのですが、中学へ入る際に「テニスをやりたい」という意思表示をしてきたとか。そして中学1年からレッスンを開始し、高校はテニスの強豪校・相生学院へ入学しました。寮に住み、テニス漬けの毎日なので「母親がせっせと通って応援してる」と父・藤田監督は言います。
お父さんは右投げだったけど息子さんはサウスポー。同級生の藤高選手と組み、ダブルスで活躍中です。3月に行われた全国選抜高校テニス大会の団体戦で相生学院が連覇!さらに5月末、藤田監督が日本選手権最終予選で戦っていたのと同じ日にあった兵庫県高校総体の団体戦も優勝!どちらもフジフジペア(と勝手に名付けました)が大きく貢献しています。
藤田監督が言うには「野球だとあれこれ言いたくなっちゃうけど(笑)、テニスのことはよくわからないから」ただ応援するというスタンスみたいです。でも「今、息子を尊敬していますよ」という言葉。父としてか、アスリートとしてか。きっと両方でしょうね。
あ~これなんだなと納得です。こんな素直で自然な気持ちを、たとえ息子に対してでも表現できる。そんな監督との“会話”で成長していくロキテクノ富山の選手たちを、これからも見守っていきたいと思います。
<掲載写真は筆者撮影>