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ノート(258) 再犯の大きな要因となる酒害や薬害を巡る特別な指導の内容

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~釈前編(18)

受刑380/384日目(続)

依存症という「病気」

 この日は、5本目として「酒害・薬害教育」というタイトルのVTR教材を視聴した。アルコールや規制薬物が心身に与える影響など、再犯の大きな要因となる酒害や薬害に関して解説したものだった。

 刑務所では覚醒剤などの規制薬物はもちろん、酒も厳禁だから、少なくとも服役中は物理的にこれらと距離を置くことができる。しかし、刑期満了や仮釈放によって社会に出たらそうはいかない。

 酒はスーパーやコンビニなどで簡単に手に入るし、規制薬物も馴染の密売人に自ら連絡をとれば入手できる。密売人や昔の悪仲間が接触してきて堕落へと誘うことも多く、彼らが「放免祝い」と称して数回分の覚醒剤を無料でくれることもある。

 しかも厄介なのは、たとえ「もうやめよう」と思っていたとしても、アルコール依存症も薬物依存症も根治が難しい「病気」にほかならず、本人の意志の強さだけは再犯を防げないという点だ。刑務所に閉じ込めて放置しておくだけだと何の解決にもならず、再犯予備軍を社会に送り込むに等しい。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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