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ノート(256) 就労支援よりも福祉的支援が求められる受刑者のための施策

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~釈前編(16)

受刑380/384日目(続)

福祉的支援を要する受刑者

 この日は、3本目として「年金と暮らし」というタイトルのVTR教材を視聴した。国民年金や生活保護の制度などについて解説したものだった。これまで述べてきたとおり、犯罪者の改善、更生や社会復帰を促進するためには、きめ細やかな就労支援が極めて重要だ。

 しかし、本人の「やる気」とは全く無関係に、その網から漏れる受刑者も多い。高齢であったり、精神や身体に障害や疾病を抱えていたりし、自立が困難であるにもかかわらず、身寄りがないという受刑者だ。満期出所者の約7割が障害や疾病などによって精神・身体上の配慮を要する者だし、そうした問題を抱えているか否かを問わず、65歳以上の満期出所者の約7割が5年以内に刑務所に舞い戻ってきているという現実もある。

 刑務所は社会の縮図だから、社会全体が高齢化するのと比例し、刑務所の中も高齢化する一方だ。心身に障害や疾病を抱えた受刑者も増えている。取り急ぎ彼らに求められるのは就労ではなく、福祉的支援にほかならない。刑務所も、再犯防止に向けて取りこぼしがないように、彼らを福祉サービスに繋げるための様々な施策を実施している。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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