ようやくコロナ禍の制限が全面解除へ! ただそれでも飲食店に不安が残る4つのワケ
自粛要請が全面解除に
東京都をはじめとした神奈川県、埼玉県、千葉県の一都三県は、2021年10月25日から、飲食店への時短営業や酒類提供の制限を全面解除します。自治体によって内容は異なりますが、東京都であれば、都の認証を受けた飲食店に対してほぼ全面的に解除。1テーブル5人以上の場合には、店側によるワクチン接種証明の確認を必要とします。
東京都の認証飲食店は都内にある飲食店全体の約85%にあたるので、多くの飲食店が通常営業できることになるでしょう。
通常営業できるのは非常に素晴らしいことです。ただ、飲食店は1月8日から9月30日までの緊急事態宣言、および、まん延防止等重点措置、さらには10月1日から24日までのリバウンド防止措置期間によって、自粛を余儀なくされてきました。
それだけに大きなブランクがあり、すぐ順調に営業できないという面もあります。飲食店の方々に話を聞くと大変喜んでいますが、その一方で、やや不安も入り混じっているのです。
料理人の勘
休業したり、時短営業したりしていると、調理する時間も機会も少なくなるので、料理人は腕がなまってしまいます。お菓子とは違って、料理はそこまで厳密さは必要とされないだけに感覚が非常に重要。大きなブランクがあったために、調理の勘が鈍りがちです。
さらには、新型コロナウイルスの影響で必要な食材などが仕入れられなかったり、客の減少によってメニューを絞ったりしている場合もあります。限定したメニューをいきなりこれまでと同じように戻しても、クオリティを保って提供することは簡単ではないでしょう。営業時間が延びて、回転数が増えればなおさらのことです。
通常営業ができるようになっても、料理人の勘が戻るまでは少し時間がかかるかもしれません。
お酒のサービス
新型コロナウイルス感染防止の施策として、最も厳しい措置がとられたのは酒類に対してです。
ソムリエはワインを開けられなくなり、バーテンダーはカクテルをつくることができなくなりました。料理人よりも、さらに勘が鈍っていることは間違いありません。これまでと同じように最適なペアリングが閃いたり、スマートにサービスしたりすることは、すぐには叶わないかもしれません。
数ヶ月にも及ぶブランクがあるので、ワインなどお酒の状態も改めて確認する必要があります。酒類に関係するサービススタッフは、再始動にあたって準備が必要でしょう。
スタッフ不足
飲食店は多くのアルバイトによって成り立っています。正社員ももちろんいますが、小箱の個店でない限り、パートタイマーが全くいないという飲食店は少ないでしょう。
自粛期間中に、アルバイトが辞めたというケースをよく聞きます。飲食店は遅くまで営業できず、酒類提供の制限もありました。客入りも低調でスタッフの数を抑えた結果、アルバイトが辞めてしまい、他の業態に移ったのです。
多くの飲食店がフルに営業するようになれば、再びスタッフを募ってもすぐには集まりません。アルバイトが不足しているのに、客足は急激に回復するので、オペレーションに滞りが起こるかもしれません。
不安定な仕入れ
食材やお酒の仕入れには時間がかかるものがあります。漁師とLINEでつながっていて、朝獲れた魚を夕方までに直送することもありますが、注文してから数日かかる食材や食品もあります。
加えて、先に述べたように、新型コロナウイルスの影響を受けて製造が遅延している食品もあるだけに、メニューを変更せざるを得なかったり、代替品でアレンジしたりしなかったりすることもあるでしょう。
飲食店が本当に提供したいメニューとは異なるものが提供されることもあります。
客足が伸びる
大手飲食店予約サイトのTableCheckは、定期的に有用な情報を公開しており、最新のレポートによれば、前回の緊急事態宣言解除後に比べて客足は8割程度。
ただ、それでも客足が急伸していることには間違いなく、全面解除後にはもっと伸びることは自明です。私が自分で体験したり、飲食店から聞いたりする範囲でも、客は非常に増えています。
温かく見守ってもらいたい
認証された飲食店に対して制限が全面解除され、客が増えるのは大変喜ばしいことです。ただ、ここまでみてきたように、10ヶ月近くにも及ぶ大きなブランクがあるために、これまでと同じような食体験が提供できない可能性があります。
客が殺到するにもかかわらず、飲食店はまだこれまで通りのパフォーマンスを発揮できないかもしれません。そのようなことがあったとしても、ここまで説明してきたような事情を汲んでいただき、飲食店の再スタートを温かく見守り、辛抱強く応援してほしいと思います。