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過去100年の三大震災から学ぶ災害軽減のための価値観

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長
(提供:MeijiShowa.com/アフロ)

地震規模が大きく違う3つの大震災

過去100年、大震災と称されたのは、1923年9月1日関東大震災、1995年1月17日阪神淡路大震災、2011年3月11日東日本大震災の3つです。それぞれ、関東地震、兵庫県南部地震、東北地方太平洋沖地震による災害です。各地震のマグニチュード(M)は、関東地震は気象庁M7.9、モーメントM8.2、兵庫県南部地震は気象庁M7.3、モーメントM6.9、東北地方太平洋沖地震はモーメントM9.0です。Mが2つ大きくなると放出エネルギーは1000倍になるので、おおよそ、兵庫県南部地震に比べて、関東地震は30倍、東北地方太平洋沖地震は1000倍の規模になります。関東地震と東北地方太平洋沖地震は海溝型地震で、関東地震は北米プレートとフィリピン海プレート、東北地方太平洋沖地震は北米プレートと太平洋プレートの境界で発生しました。一方、兵庫県南部地震は内陸直下の活断層による地震です。一般に、後者に比べ前者の地震の方が、発生間隔が短く規模も大きくなります。

小さな地震でも被害が大きくなることも

各震災の犠牲者数は、関東大震災が約10万人、阪神淡路大震災は約6千人、東日本大震災は約2万人です。災害規模は、地震の大きさだけでは決まりません。関東地震では、東京で7万人弱の犠牲者が出ました。当時の日本の人口は約6000万人、東京市の人口は約200万人ですから、現代に換算すると数十万人に相当します。東日本大震災の十倍以上の災害です。その後の地震の続発もあり、金融恐慌や満州事変、開戦と我が国は暗い時代に移っていきました。なぜ、こういった被害の差が生まれるのでしょうか。

東日本大震災
東日本大震災

人口集中、軟弱地盤、低地、発生時間に要注意

3つの震災の主たる被害原因は、関東大震災は火災、阪神淡路大震災は建物倒壊、東日本大震災は津波と、異なっています。

関東地震の震源域は東京直下ではありませんが、地盤が軟弱な東京下町では揺れが強く、密集家屋が倒壊して、火災が延焼しました。正午直前の地震で、炊事の時間に当たったことも不運でした。

阪神淡路大震災は、地震規模は比較的小さいものの、都市直下の地震で、揺れが強く、多数の家屋が倒壊しました。全壊棟数約10万は、東日本大震災の全壊棟数と余り変わりません。被害量の差が小さい理由は、被災者数にあると思われます。兵庫県と東北被災3県の住民の数はほぼ等しく、600万人弱です。また、東日本大震災では、戦後の都市化で低地に町が広がった宮城県沿岸地域で、多くの犠牲者が出ました。

このように、人口集中度や家屋密集度、地盤の硬軟、標高の高低、地震の発生時間などによって被害量が異なってきます。

阪神淡路大震災
阪神淡路大震災
名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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