山岳遭難の原因で3番目に多い「転倒」が起きる危険な3つのポイントは?
楽しいはずのハイキングで残念な出来事が起きました。そんなところで何で?といった転倒を防ぐ「歩くを安全・安心にする」ポイントをご紹介します。
「一日一万歩歩きましょう。」といった掛け声やテレビで流れる様々な健康情報、毎日の生活で見たり聞いたりしない日々は無いような気がします。歩くことは生きること。住んでいる場所に関係なく現代に生きる私たちからは「歩く機会」が失われていることを自覚しているでしょうか。「歩く時間」が「無駄」と判断されてしまう時代です。よりよく生きることに繋がる「歩く」をもっと見直していきましょう。
最近、ちょっとした突起につまずいたことはないですか。身近な人が歩く時、地面を擦る音が気になったことはありますか。
下肢の筋肉が衰える原因は使わないからです。脳の記憶とその指令は若くて元気があった頃のままです。衰えた筋肉はいうことを利かないので不意打ち転倒を起こしやすくなります。不意打ちですから防御姿勢はとりにくいのです。
警察庁生活安全局生活安全企画課から発表されている平成30年度資料によれば、登山における遭難原因の第三位は「転倒」です。では「転倒」を起こした原因は何であるのかを考えていきます。
危険なポイント1:見晴らしの良い場所は危険な場所でもあると認識する。
樹木も少ない露岩からは素晴らしい景色が見ることができますね。写真撮影(撮る方も撮られる方も)時の転落事故は数多くあります。このような場所では休憩することも多いわけですが、腰かけたり立ち上がったりするときにふらつきでバランスを失って転倒することが多いものです。
9日午前には、神戸市で男性が登山道から転落、死亡する事故がありました。男性は道の脇の岩に腰を掛けていたところ誤って落下したとみられています。(参考:六甲山で滑落事故 男性1人死亡/兵庫県)
対策 ⇒ 手がかりを持つ、ゆっくり身体を動かす、谷側や崖側に不用意(無自覚)に近づかないようにしましょう。
「転ぶな危険!小さなミスと大きな代償 人気の水平道に相次いだ転落死 あなたもチェック!9つの認識テスト」
危険なポイント2:自分の体力とその自覚です。
加齢や日頃の運動不足の自覚をできず、自分自身の体力を過信、他の登山者の歩行スピードに引きずられてしまうとあっという間に疲労して動けなくなってしまいます。小まめにな水分・ミネラルと栄養の補給を怠ればさらに事態は急激に悪化します。水分摂取不足による立ち眩みや血管疾患発症が引き金となる転倒や転落も十分に考えられます。
対策 ⇒ 目的を頂上に設定しない「フィールド観察ハイキング」で、自分自身の体力運動能力を自覚しながら徐々に行動範囲を広げていきましょう。
「自分は大丈夫!」が一番あぶない。ホッと気を抜いた時に起きる転倒。その訳は?
危険なポイント3:情報過多です。
コースタイムや危険個所など様々な登山コースに書かれている情報はすべての方に当てはまるわけではありません。現代、個人で発信できるSNSからは速報性・季節性を含めるとかつてないほど膨大なデータがインターネット上に存在し、片手のスマートフォンから容易に入手できます。しかし、感動のポイントやコースタイムの安易な参照は程々にとどめておくのが無難です。
対策 ⇒ 登山コースやそのコースタイム設定は自分で決めます。当日の天気や体調、実際の地形やコースコンディションで修正します。登山は登れるところまで行くものではなく、確実に引き返せるところまで登るものです。
ご高齢の方やその年齢領域に向かいつつある年代にとっては「認知症予防」が最も気になる点でしょう。一方、現役世代にとってはオフタイムを充実させ、メンタルをリフレッシュする「生産性向上」が気になる点かもしれません。
有酸素運動領域での登山では脳を含む体全体に血流が増えている状態です。自然にある様々な事象に興味と感心をもち、友人と語らいながらゆっくりと歩いてみましょう。それが安全・安心登山につながる「フィールド観察ハイキング」です。自宅に帰ったときの心地よい疲労と食欲そして熟睡を体験すれば、心と身体の健康は連動していることを実感できることでしょう。
足が疲れ息が上がるような疲れる歩き方は「フィールド観察ハイキング」では必要ありません。以下にあげる「幸せを感じる五つの感覚」を大切にしましょう。
視覚:素晴らしい景色
感動は自分で体験するものですが、気づきのポイントは自分一人では見つけにくいものです。好奇心を大切にしてみましょう。
嗅覚:森林の香り、落ち葉の匂い
聴覚:鳥のさえずりと水や風の音
味覚:美味しい弁当
触覚:木肌の感触
吹き抜ける風がさわやかな季節です。明日からといわず、今日からいつもと違う道を歩いてみませんか。
最初はそれが通勤途中であっても新しい発見があると思います。