「60歳から始める山歩き」は人生を豊かにする。山歩きをはじめるあなたへ贈る5つのメッセージ
日中の陽射しは強いですが、先日過ぎ去った台風10号以降、空気の温度が変わり秋を感じるようになりました。これから山歩きをはじめようかと考えている中高年の皆様へ贈る5つのメッセージをご紹介します。
良いメンター(助言者又は指導者)と山歩きを始めてみましょう。間違いなく素晴らしい人生に近づきます。
おすすめするのは「頂上を目指さない山歩き」です。
忙しいビジネスパーソンの皆さんにも、これから第二の人生へ向かう高齢者の方にも、自然が好きな全ての方にふさわしい山歩きのスタイルです。四季を通じた動植物とのふれあい、変化に富んだジオパーク巡り、古道を歩いて歴史の舞台をたどるなど、五感と脳を刺激する森林浴しながらの山歩きです。
ひとり? でもご安心ください。1960年生まれ来年60歳となる山岳ガイドの私が実践するメソッド(方法)です。
1:小学生の遠足程度のコースを選択します。他の誰とも競争せず山を歩いて体力チェックしてみましょう。
かつてのスポーツマンや20年中断していた運動を「昔取ったきねづか」とばかりに張り切るのはお勧めできません。登山案内は初級・中級・上級などとレベル分けされていますが、私たちの心理上「中級」を選びがちなことを忘れてはいけません。
あなたご自身以外には誰も「あなたが弱い!」などという人はいませんからご安心ください。足首の捻挫や膝痛、心臓や脳の血管疾患を起こしてしまうことは絶対避けたい事なのです。
2:酸素が無くては生きられません。友人と歩いているのであれば、会話が続けられる程度の歩行速度を意識します。一人で歩いているならば、時々ろうそくの炎を吹き消すように吐き切ってから深く吸い込みます。
他の登山者の追越し・すれ違いは小休憩のチャンスと考えるようにしてみましょう。
3:30分に一回程度は水分を飲みます。身体の60%は水です。体重の2%にあたる水分を失うだけで喉の渇きが現れ、3%まで失うと危険な状態の一歩手前となります。登山活動での脱水量は「体重Kg×行動時間hrs×5ml」で概算されるといわれています。
例を挙げると、60Kgの人が5時間登山したのであれば1500mlの水分を身体から失うということです。5時間の登山行動中に小まめに水を飲んで補給していくことが重要となります。この時、ミネラル分の補給を考えて「経口補水液」を利用することをおすすめしています。
4:60分に一回は行動食(糖質を含む食べ物)を食べます。私たちの身体には様々な形(肝臓や筋肉のグリコーゲンや脂質やタンパク質)で栄養が蓄積されています。長年の不摂生でためこまれた腹回りの脂肪もその一つです。
しかし、運動中に利用できる即効性があるエネルギー源は60分程度しか維持できません。血中糖度が低下し空腹を感じている状態では、筋肉だけでなく重要臓器である脳への栄養補給が弱まっているということになります。
足が動かなくなるといった「ハンガーノック(シャリバテ)」だけでなく、脳の活動低下によって転倒や判断ミスが起きやすくなってしまいます。
安全な行動をするには気合ではなく、健全な状態の筋肉と脳が必要だということを忘れてはいけません。
5:四季の彩りをみせる草木、懸命に生きる昆虫たち、さえずる小鳥、火山がつくった地形、プレートテクトニクスによって明らかにされてきた様々な種類の「海からやってきた岩石」、寺社仏閣や路傍の石仏など、ゆっくり歩くからこそ視界に飛び込み、心に感じられるものがあります。
今までの人生で得意としていなかった分野もあると思います。第二の人生のスタートですから、子供の心に戻って新しい分野に興味を示してみてはいかがでしょうか。
「頂上を目指さない山歩き」は「脳活・健康山歩き」でもあるのです。もうすぐ9月!山歩き、あなたも始めてみませんか?
「登山初心者が絶景を楽しむために大切にしてほしい5つのポイント」 ⇒ こちら