「自分は大丈夫!」が一番あぶない。ホッと気を抜いた時に起きる転倒。その訳は?
これから本番となる低山の紅葉、楽しみを台無しにしてしまう登山での怪我、その発生原因で多いのが「転倒」です。転倒したとき切り傷擦り傷だけですめば笑って済ますこともできます。しかし捻挫や骨折を起こし歩行困難となる事例、残念なことに大変多いのです。誰にでも起きる転倒の原因と予防対策をお伝えします。
登山は老若男女が楽しむことができる生涯スポーツと言われています。体力や技術に応じたコースを選ぶことで安全は大きく高まるものです。では実際に怪我を起こしてしまうのはどのような場合でしょうか。トレーニングで鍛えていれば防げるのでしょうか。
屈強な男たちがぶつかり合うワールドカップラグビーを見ていると、選手が激しく接触する瞬間、テレビ前の自分が身をねじり緊張しているのを感じます。鍛えられた肉体を激しくぶつけ合い、倒れても立ち上がりプレーを続けることができるまでに鍛えていること、本当にすごいことだと感じます。そしてホイッスルの後にみられるスポーツマンシップに胸が熱くなります。
長年の歴史から培われたルール運用で大きな怪我を防ぐ工夫がなされているとはいえ、選手の身体が心配になります。
では、登山やハイキングではどんな時に怪我が発生するのでしょうか。
1:体力を消耗し筋力が低下、姿勢を安定させられなくなった時です。
体力に見合わない歩行スピードで歩いてしまったり、小まめ且つ十分な栄養とミネラル・水分補給が行われないと筋肉は自らを分解してしまい痩せてしまいます。
そのため筋力は低下し、動きながらの姿勢保持がうまくできなくなり、つまづきや転倒を起こしやすくなります。
2:十分な水分・ミネラル・糖質・酸素を供給できず、脳機能が低下している時です。
筋肉が弱くなる点は1)で述べました。加えて大切な脳という「司令塔」への栄養(糖質)と酸素を常に十分供給しなければなりません。五感を通じた情報入力処理と行動指示、様々な機能がスムーズに活動できるようにしましょう。
掴んだつもりのホールドのつかみ損ね、越したつもりスタンスでのつまづき、分岐や道標の見逃しなどを起こしやすくなります。
3:前を歩く仲間に追いつこうとした時です。
先頭は常に後続の足並みを確認して目と声が届く範囲を維持します。グループ登山では多くの人は自分の前を歩く人との距離を一定に保ちたいと考えるものです。アップダウンやつづら折り、梯子やクサリ場など歩行スピードは一定であることの方が珍しいのが普通です。
リーダーは「必ず待っているので安心してください。無理に追いつこうとスピードを上げてはいけませんよ。」と声をかけましょう。
4:行程の遅れを取り戻そうと歩行スピードを上げた時です。
メンバーの足並みがそろわず行程に遅れる事態になる原因を見定めましょう。例えば、体力的ハンディがある人がいるのであれば、行程の短縮を前提に安全重視の歩行スピードに切り替えます。
体力が落ちたメンバーを急がせて、もし怪我をしたら更なる困難が我が身に降りかかると認識しましょう。
5:雨・雪・霜やコケなどで登山道や木道のグリップ(摩擦)が目まぐるしく変化する時です。
雨や霜で濡れた木道下山でのスリップ転倒は気を付けたいものです。自分自身が「滑りそうだな、怖いな」と感じている箇所ではミスは起きにくいものです。繰り返し様々な経験を積むことで、安定感も増しスムーズになるものです。慌てず確実性を重点に行動するようにします。
登山道の状態が変化した時はスリップや転倒が起きやすいものです。はじめの一歩、登山靴のグリップ感を確認する習慣を身に付けましょう。
6:梯子、クサリ場などの危険地帯を通過した後のホッとした時です。
自分で考えているほど集中力は長続きしません。緊張するところが終わった時、何でもないようなところで転ぶことが多いので要注意です。
安定した場所で姿勢を正し深呼吸して脳のスイッチをリセットしてから歩き出すことをおすすめします。
打ちどころが悪ければ大きな怪我となってしまう転倒は自宅でも街中でも身近に発生します。どのような場面でも100%の力を出すのではなく70%程度で行動しましょう。
余裕は無駄とは違います。予期せぬ事態のとき自分を守るのだと思いましょう。
登りや下り凸凹道をゆっくりと森林浴や自然を楽しみながら歩くチカラが身に付く「頂上を目指さないハイキング」を始めてみませんか。