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ネット上で賛否騒然!自衛隊戦車の鉄道輸送 国交省は検討会で「建築限界内で運べるのでは」と否定せず

鉄道乗蔵鉄道ライター
自衛隊の機材輸送列車では装甲車や火砲などが輸送されている(写真AC)

 2024年10月1日、政界きっての鉄道ファンでもあり軍事オタクであるという石破茂氏が総理大臣となった。この日の夜に首相官邸で開かれた記者会見の場では「ネットメディアの影響力はよく認識しており、総裁・総理就任前には可能な限り取材には積極的に受けてきた」という趣旨の発言をしている。こうした石破氏の発言を裏付けるようにインターネット上には、石破氏のインタビュー記事がさまざま掲載されており、その中で石破氏は「鉄道をネットワークとして考えることの重要性」「有事の際の戦車や弾薬輸送の可能性」についても触れている。

 筆者は、自衛隊戦車の鉄道輸送の可能性について記事(「有事の際に戦車を運ぶのは鉄道」 鉄道ファン、石破茂首相誕生で期待高まる地方鉄道の存続・活性化)と(「日本の鉄道では戦車は運べない」ネット上の批判に欠けている視点 現状追認ではなく課題解決型思考が必要)で触れているが、こうした記事を執筆すると必ずと言っていいほど、「日本の鉄道の建築限界や路盤の強度の関係から戦車輸送は不可能である」ということや、「そもそも戦車輸送の実績がないことから荒唐無稽だ」などという否定的なコメントが大量に寄せられる。

 そもそも日本において戦車の鉄道輸送に関する話題が表に出始めたのはいつからであろうか。筆者の記憶する限りでは、それは2022年5月19日に国土交通省で開かれた「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」に防衛省が招かれ、ロシア・ウクライナ両軍の戦車や装甲車が鉄道輸送されている画像とともに「自衛隊の輸送力向上のため、鉄道輸送のさらなる活用を追求」する旨が記載された資料を提出したころからではないかと感じている。この資料には、自衛隊の装備品の輸送については、「鉄道だけではなくトラックや船舶も含めて民間輸送力も含めて効果的に使用する」といった内容も記されていた。

 こうした防衛省の提出資料について、国土交通省側はどのように認識したのかについては、議事概要に当時の鉄道局田口鉄道事業課長の発言が残されている。議事概要の中で、田口課長は、「軍事輸送については今まで鉄道分野で正面から考えてこなかった」としながらも、現状については「通常の基地間の輸送に鉄道コンテナを使用しているという実状があるが、大規模な部隊輸送は一部を除きやっていない」という認識を示した。戦車輸送については「実際に図ってみると、戦車の幅が貨車の幅よりも広いものの、建築限界の中におさまっているので、専用の板のようなものに乗せれば運べるのではないかという議論もある」と、国土交通省側は戦車の鉄道輸送の可能性については否定していない。

 さらに、今後についても、「色々な訓練などで練度を高める上で、本格的に必要なら、貨車であるとか、積み込みの施設であるとか、費用負担も含めて、防衛省とも色々議論していかなくてはいけない話だと思う」と、戦車の鉄道輸送の実現について踏み込んだ発言がなされた。

 こうしたことからも、今日の日本においては、社会が抱える諸問題に対応し、日本の未来を創っていくために求められることは、「現状で実績がないので不可能である」という現状追認型の思考ではなく、「必要であるならば実現の方策を議論する」という課題解決型の未来思考なのではないのかと筆者は考えている。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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