「有事の際に戦車を運ぶのは鉄道」 鉄道ファン、石破茂首相誕生で期待高まる地方鉄道の存続・活性化
2024年9月27日に実施された自民党総裁選で石破茂氏が第28代総裁に選ばれた。第1回の投票では高市早苗氏に続く2位となったものの、過半数を得られた候補がいなかったことから上位2人による決選投票が行われ石破氏が高市氏に勝利した。今後は10月1日召集の臨時国会で第102代首相に指名される見通しだ。
石破茂氏といえば、政界きっての鉄道ファンとて有名な存在だ。2006年に廃止された寝台特急出雲に通算で1000回以上乗車したというエピソードもあり、「夜行特急がなくなると、地方が衰退する」という持論も持ち合わせている。他紙のインタビューでも、東日本大震災時のガソリンなどの緊急輸送に普段は貨物列車が走行していない磐越西線が利用されたことに触れ「少ない人数で大量の物資輸送ができる鉄道はネットワークとして考えることが重要」「原子力発電所がミサイル攻撃などでダメージを受け大勢の住民を避難させるようなことになれば、クルマだと大渋滞になるので鉄道の方が合理的」「有事の際に戦車や弾薬を運ぶのは、一義的には鉄道」と発言している。
こうしたことから、昨今、全国各地で浮上しているローカル線の廃線危機についても、鉄道ファンなどの間からは期待の声が上がっており、筆者と交流のある有識者は「北海道新幹線の並行在来線の小樽―長万部間や広島県の芸備線でさえも残せる仕組みができるかもしれない」と話していた。
8月31日に北海道を襲った豪雨被害で、JR北海道の石勝線が4日間に渡って不通となった際には、札幌と帯広・釧路方面を結ぶ特急列車の代行バスが運行されなかったことや、同区間を走る貨物列車のトラック代行輸送がほとんどできなかったことも明らかとなっており、収穫期を迎えた北海道の農産物の輸送に影響が出た。こうしたことから、この3月31日に廃線となった「根室本線の富良野―新得間を廃止にせず、リスク分散の視点から特急列車や貨物列車が迂回運転できるように整備しておくべきではなかったのか」という声もあがっていた。
石破内閣の発足で、日本の鉄道を地方創生や災害時・有事の際の物資輸送のための必要不可欠なインフラとして、地方鉄道も含めて鉄道ネットワークとして再評価し、それを維持・活性化するための仕組みは実現できるのか、注目が集まっている。
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