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福島・鮫川の焼却炉爆発事故-二重のマニュアル違反、警察・消防にも通報せず

関口威人ジャーナリスト
爆発し、裂けるように変形したコンベヤーの囲い(フリーライター・畠山理仁さん撮影)

福島県鮫川村で発生した仮設焼却炉の爆発事故について、環境省は2日、原因調査結果の第一次報告を発表した。

それによると、焼却炉下部のゲートシリンダと呼ばれる弁の閉め忘れと、爆発した主灰コンベヤーがつながるセメント混練機の上部点検口の開け放しという2つのマニュアル違反が重なり、通常より圧力の低下したコンベヤーに焼却炉から可燃性ガスが漏れて滞留、運ばれてきた焼却灰が火種となって爆発につながった可能性が高いという。

また、緊急対応連絡網では現場事務所が行うことになっていた警察、消防への通報がなされず、事故の約6時間後に地元の消防署から環境省の本省に問い合わせがあり、それを受けて同省が地元警察に連絡を入れていたことも分かった。

施設内外の放射線量に異常はなかったというが、高濃度の除染廃棄物などを扱う環境省肝いりの施設で本格稼働から半月足らずの間に起こった事故のお粗末な原因と対応に、事業を問い直す声が強まりそうだ。

主灰も排出の可能性、目視では確認されず

事故は8月29日午後2時33分、コンベヤー付近で「パン」という大きな爆発音(報告では「破裂音」と表現)とともに発生。すぐに着火バーナー、二次バーナーが停止されたが、作業員が現場を確認中に二度目の小爆発(同じく「異常音」と表現)が起こった。

焼却炉は午前8時過ぎに運転を開始し、汚染された牧草と稲わらなどを毎時190キログラムの定格運転で燃やし、事故発生時までに約1トンを焼却していた。

通常、焼却中は閉められているゲートシリンダが朝の点検で開けたままになっており、可燃性ガスと主灰が少量ずつコンベヤー内に排出されていたと考えられる。ただし目視では爆発後、コンベヤー周辺に主灰の飛散は認められなかったとしている。

セメント混練機の上部点検口も点検時以外は閉めることとなっており、二重の運転マニュアル違反が発覚した。

施設の破損状況は当初、コンベヤーの金属製の囲いが長さ3メートルに渡って破裂していたと発表していたが、さらに点検口の取り付け金具4カ所の破損や軸受けの変形、接続シュートの破れなども確認された。

詳細は環境省「指定廃棄物処理情報サイト」の「福島県鮫川村における実証事業」サイトで。

ジャーナリスト

1973年横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科(建築学)修了。中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で社会問題をはじめ環境や防災、科学技術などの諸問題を追い掛ける。東日本大震災発生前後の4年間は災害救援NPOの非常勤スタッフを経験。2012年からは環境専門紙の編集長を10年間務めた。2018年に名古屋エリアのライターやカメラマン、編集者らと一般社団法人「なごやメディア研究会(nameken)」を立ち上げて代表理事に就任。

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