楽天ペイ 経済圏の外にも広まるか
最近、キャッシュレス決済ではコード決済の決済回数が電子マネーを上回ったことが話題になっています。
その中で、楽天のコード決済「楽天ペイ」は、まだ認知度が足りないという課題があるようです。これから経済圏の外にも広まっていく可能性はあるのでしょうか。
「おトク」の複雑さ どう伝える?
すでに楽天経済圏を活用している人にとって、楽天ペイのおトクさや便利さはすでに実感しており、ほとんど説明は不要でしょう。
たとえば、楽天市場での買い物でどんどん付与される「期間限定ポイント」は、使える用途が限られていますが、楽天ペイを通せば実店舗などの決済で使うことができます。
支払いにはオンラインの電子マネー「楽天キャッシュ」の残高も使えます。この楽天キャッシュをチャージする方法によっては、さらにポイントを得られる場合があります。
楽天キャッシュは楽天の中で使えるだけでなく、「地方税」の支払いや「投信積立」など活用範囲は広く、楽天ペイのおトクさを底上げしています。
しかしこうした経済圏の仕組みは、順を追って学んできた人にとっては簡単なことでも、これから始める人には難しく、ハードルが上がっている印象があります。
よく携帯キャリアの料金プランは複雑といわれますが、ショップに行けば教えてもらえます。しかし経済圏はそういう機会があまりないのは気になるところです。
7月12日に開かれた事業説明会では、楽天ペイの認知率がまだトップではないとの調査を示し、今後の課題として挙げています。
ここから楽天ペイをどうやって広めていくのでしょうか。その1つとしては「オープン」戦略を掲げ、「楽天ペイには楽天カードだけでなく、すべてのクレカを登録できる」(楽天ペイメント社長の小林重信氏)と強調しています。
これは他社クレカの紐づけをいったん不可と発表した後、延期せざるを得ない事態に陥ったPayPayを意識した発言と考えられます。
また、楽天ペイの新しいキャンペーンでは、印象的な数字を前面に出しています。楽天ポイントカードと組み合わせた期間限定のポイント増量は、これまでの2倍を「3倍」に高めてきました。
このキャンペーンの見どころは、ポイントカードを提示する条件として、楽天ペイのアプリ内から表示できるポイントカードを使う必要があるという点です。
アプリ内には、楽天ペイのコード払いと、楽天ポイントカードのタブが横に並んでいます。このアプリからポイントカードを提示した場合、自然な流れで楽天ペイで支払えるように設計されているわけです。
楽天としては、この「楽天ポイントカードから楽天ペイ」の流れを定着させたいのでしょう。還元率は合計で最大3.5%(今回のポイントアップでは最大4.5%)となることから、還元率の数字にこだわる人を惹き付けることにもつながっています。
一方、最大20%還元のキャンペーンは、「はじめて」または「久しぶり」の利用のみ全員が対象で、上限は500ポイントという点には注意が必要ですが、コード決済の還元率としては馴染みのある数字といえます。
さすがに利用者が増えていることから、初期の頃のような全員への高額還元は難しいとみられるものの、楽天ペイを使うための分かりやすい入り口を作ろうという意気込みは感じられます。
IDを中心とした次の展開に期待
楽天ポイントについては「21周年」を強調。これは先日リニューアルを発表したTポイントの「20周年」を意識している印象です。
6月26日からはiPhoneでもSuicaへのチャージに対応し、楽天ポイントからSuicaへの道が開けるなど新機能は増え続けています。次のイノベーションはあるのでしょうか。
たとえば、楽天ポイントは楽天ペイのコード決済を通して使うことができますが、Vポイントのようにクレカのタッチ決済には直接対応していません。
またVポイントは、ポイント付与と決済が1回の操作で済む機能や、ポイントカードを出し忘れても後から付けることができる機能の構想を打ち出しています。
楽天の場合、楽天会員IDを中心にポイントや決済手段が紐付いているのは強みといえるだけに、それを活用した新たな展開はあるか、注目しています。