なぜPayPayで「他社クレカ」? ポイント無しでも使う理由
6月22日、PayPayが8月に予定していた「他社クレカの利用停止」について延期することを発表し、注目を集めています。
他社クレカではPayPayのポイントは付与されないにもかかわらず、なぜ使う人がいるのでしょうか。掘り下げてみたいと思います。
2025年1月に延期
PayPayの支払い方法としては、主に「PayPay残高」や「PayPayあと払い(PayPayカード)」、「他社クレカ」があります。
混同されがちですが、これはPayPay残高へのチャージ方法とは異なります。残高チャージができるクレカはPayPayカード(旧Yahoo! JAPANカード)のみです。
5月1日、PayPayは支払い方法についても他社クレカを利用停止することを発表したものの、これが連休中に大きな話題になりました。
そして6月20日、PayPayの親会社に相当するソフトバンクの株主総会では、「事前質問」に回答する形で宮川潤一社長が「延期」の可能性に言及。そして今回、2023年8月から2025年1月まで1年半の延期が発表されるに至っています。
PayPayの広報によれば、「2025年1月」という日程に特別な意味はなく、これから1年半をかけてPayPayの魅力を高めていく方針に切り替えたと説明しています。
また、PayPayはコード決済で高いシェアがあることから、公正取引委員会から何らかの指摘があったのではないか、との見方も出ていますが、「当社としては認識しておりません」(広報)と回答しています。
なお、2023年7月に予定されていた他社クレカの「新規登録」についても停止日を見直すとしています。こちらは具体的な日付がまだ決まっていないとのことです。
なぜPayPayで他社クレカ?
延期に至った直接の理由について、PayPay側は「当社の想定を超える反響があった」(広報)と説明しています。
しかし、他社クレカを使ってもPayPayのポイントは付与されません。このことから、ポイントをあきらめてでも他社クレカを使いたい人が一定数いることがうかがえます。
その理由として、まずはPayPayカードを持っておらず、新しく作る予定もないという人が多くを占めていると考えられます。
PayPayカードの発行枚数は1000万枚を超えているものの、PayPayの登録者数は5800万人もいることから、単純計算で4800万人はPayPayカードを持っていないことになるからです。
また、残高チャージに対応した金融機関は増え続けており、8月からは地方銀行や信用金庫を含む1000社超に拡大する予定です。しかし楽天銀行、SBI新生銀行など対応していない銀行も意外と残っています。
キャッシュレス決済のメリットの1つに、アプリと連携して家計簿を自動でつけられるというものがあります。しかしPayPayはマネーフォワードとの連携に対応していません(PayPayカードは対応しています)。
経費精算などビジネス上の理由で特定のクレカを使いたい場合もあります。しかしPayPayカードには法人や個人事業主向けのカードがなく、こうした需要に応えられていない可能性があります。
もちろん、クレカが使えるお店なら他社クレカを直接使えばいいのですが、PayPayの営業部隊が全国に加盟店を広げた結果、「現金とPayPayしか使えない」お店はまだまだあります。
そこでPayPayに他社クレカを紐付けることができれば、そういうお店でも間接的にクレカを使えるというわけです。
クレカの利用範囲が広がるという意味では、キャッシュレス残高の「出口利用」においてもPayPayの他社クレカは重宝されています。
たとえば筆者の場合、PayPayに紐付けているのは「ANA Pay」のカードです。これはキャンペーンなどの影響でANA Payに大きな残高があり、少しでも使って減らしたいためです。
クレカの「修行」も拍車をかけています。たとえば三井住友カードによる年間100万円の利用に対する特典では、PayPayのほかにKyashやMIXI Mなどへのチャージもカウント対象になっています。
ポイ活でチャージをする機会が多い人にとっては、新たにポイントを獲得するよりも、まずは積み上がった残高を減らすのが先、となります。PayPayはこうした残高の出口として便利というわけです。
「他社クレカ」無視できない規模に?
PayPay広報の説明によれば、他社クレカを紐付けて使っている人の割合は全体の中で非常に少ないとのことです。
しかし全体で5800万人ものユーザーがいると、たとえ数パーセントであっても、数十万人から数百万人が使っていることになり、影響力は無視できません。
さらに、SNSや動画ではポイント制度などの「改悪」の話は盛り上がることから、発信も増えがちです。これは他社クレカの利用に興味がないPayPayユーザーの心理にも悪い影響を与えている可能性があります。
かつてVisa LINE Payカードは、「3%還元」でポイ活勢のハートをつかんだことがあります。これからPayPayカードが主戦場になっていくことは間違いない中で、他社クレカを上回るような施策を期待したいところです。