高校乱射事件の犯人は日米ハーフの優等生に「まさか」の声 日本人母の名前なども報道
米ロサンゼルス市北部に位置するサンタ・クラリータ市の高校で14日早朝、銃乱射事件があり、生徒2人が死亡、3人が負傷した。
警察によると、銃を乱射したのは、この日16歳の誕生日を迎えたナサニエル・バーハウ(Nathaniel Berhow)容疑者。自身の通うソーガス高校で、授業が始まる直前の午前7時半すぎ、バックパックから0.45口径の半自動拳銃を取り出し、学友に向かって突然発砲した。さらに、最後に残った弾で自らの頭部を撃ち負傷し、身柄を拘束された。(Updated:容疑者は事件の翌15日午後、死亡)
犯人は日系人というもう一つの衝撃
当初、容疑者は「アジア系の生徒」と報道されていたが、詳細が明らかになるにつれて、日本人の母親を持つ日米ハーフということが判明し、米日系人社会にも大きなショックを与えている。
現地では、容疑者の家族構成などの情報も報道され始めた。NBCニュースには、ナサニエル容疑者の母親の名前などが含まれている。
母親は1992年に容疑者の父にあたる男性と結婚し、2人の子ども ー 姉(21歳)とナサニエル容疑者 ー を授かったという情報もある。
また、ロサンゼルスタイムズ紙やKCAL-TVニュース、ニューヨークポスト紙などの各主要メディアでも、いくつか容疑者の家族について詳細が明かされている。
- 父親は2017年12月、心臓発作で亡くなった。
- 父親は生前、アルコール依存症の問題を抱えており、それが死因に繋がった。
- 自宅で死亡している父親の第一発見者は、ナサニエル容疑者だった。
- 父親は生前、「弾丸を自ら作る」ほどの熱心な銃愛好家で、息子であるナサニエル容疑者を趣味の狩猟によく連れ出していた。
「模範生だった」「まさかこんな事件を起こすような生徒ではない」と学友の声
ロサンゼルスタイムズ紙では、「特定の学生を標的にした逆恨みによる殺人ではない」との見方だが、多くの主要メディアでは、彼のような優等生がなぜこのような事件を犯したのか「動機が謎」と首を傾げている。
報道を通して、まず容疑者のクラスメートからは「まさか、あのナサニエルが信じられない」「乱射事件を起こすような人物とはかけ離れたイメージ」と、彼を擁護する声しか聞こえてこない。学友からは慕われている存在だったことが窺える。
クラスメート、幼馴染、近隣住民の証言として、数々の報道から浮かんできた、容疑者の具体的な人物像はこちら。
- ごく普通の少年だった。
- 恥ずかしがり屋な面はあるけど、決して変な子ではない。
- ほかのどんな子より優しい少年だった。
- 頭がよく、特に歴史が得意だった。
- ボーイスカウトとして活動し、模範として年下から尊敬され頼られるような少年だった。
- ユーモアのある性格でよくジョークを飛ばしていた。時には高尚すぎて意味がよくわからないものもあるほどだった。
- スポーツマンだった。(スポーツをしている容疑者)
- 時々クロスカントリーを一緒にしていた。彼を最後に見た2週間前も、いつも通りだった。一緒にスタートし、僕の健闘を祈ってくれた。
- 父親と鹿などの狩猟や魚釣りによく行っていた。
- 射撃場に一緒に行ったことがあるが「銃は彼にとって身近なもの」と言っていた。銃の取り扱い方や責任についても熟知しているので、心配したことはなかった。
また家族像として、
- バーハウ家は騒ぎを起こすこともなく周囲に友好的で、とても良い人々だった。
- 容疑者の母親と送り迎えで会った印象は「とても優しいお母さん」。子どもたちに何か注意するにしても、言い方を考えてくれるような人物だった。
このように、ナサニエル容疑者が優等生だったことには間違いない。しかしその一方で、彼を取り巻く家族は数々の問題を抱え、父親が亡くなる前後から、容疑者自身も深い心の闇を抱えていたことが、証言で浮き彫りになってきた。
- 父親は2013年と2015年の2度、交通違反で逮捕され、2度目の逮捕時、懲役45日間と5年間の保護観察処分を言い渡された。
- 父親は妻への家庭内暴力で2015年、逮捕された。
- 容疑者は母親との諍いで2015年、警察沙汰になり逮捕された。
- 容疑者の父母は2016年に離婚。同年、母親は子どもたちの親権について父親と法廷で争った。
- 容疑者は父親の死後、「父が大好きだった。恋しい」とよく漏らしていた。
容疑者を子どもの頃から知る近隣の住民は「ナサニエルは近所で愛される少年だった。どんなに愛されていたか、彼は忘れているのだろう」と語った。
楽しいはずの誕生日に、いったい何が起こったのか。愛する父親を亡くし寂しい思いをしていたのだろう。また確執のある母親とこの日もいざこざがあったのかもしれない。しかしどんな事情があったとしても、銃を乱射して罪のない尊い命を奪う理由にはならない。
そして少年の孤独感を汲み取り、「1人ではない」ことを教えてあげられる大人は周囲にいなかったのか。
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(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止