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福島県伊達市で国内33地点目の最高気温40度超え 16年前に提案された「酷暑日」等の新しい用語が必要

饒村曜気象予報士
暑さに耐える若い女性(提供:イメージマート)

最高気温が40度超え

 令和5年(2023年)は、7月末から太平洋高気圧の強まりによって記録的な暑さとなっています。

 8月にはいると、太平洋高気圧が少し弱まってきましたが、西~北日本は太平洋高気圧に覆われて晴れる所が多く、強い日射によって気温が上昇した日が続いています。

 令和5年(2023年)8月5日の本州付近は、朝から晴れている所が多いことに加えて、南からは台風6号の周辺を回る暖かい空気が流れ込みました(図1)。

図1 地上天気図と衛星画像(令和5年(2023年)8月5日12時)
図1 地上天気図と衛星画像(令和5年(2023年)8月5日12時)

 8月4日に全国で最高気温35度以上の猛暑日を観測したのが274地点(全国で気温を観測している914地点の約30パーセント)と、前日の290地点(約32パーセント)に次ぐ多さでした(図2)。

図2 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~8月5日)
図2 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~8月5日)

 また、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが695地点(約76パーセント)、最高気温25度以上の夏日を観測したのが808地点(約88パーセント)でした。

 今年、一番多くの真夏日を観測した7月29日の847地点(約93パーセント)、一番多くの夏日を観測した7月28日の911地点(約100パーセント)には及びませんでした。

 しかし、福島県伊達市・梁川で、日最高気温が40.0となり、今年の全国の最高気温を更新しました。

 福島県梁川では南風が山を越えて気温が上がるフェーン現象の効果も加わり、14時00分に全国で今年初めてとなる40.0度を観測しました。

 これまで、最高気温が40度を超した観測地点は、静岡県・浜松の41.1度など、32地点あり、33地点目です(表)。

表 最高気温の観測地点ランキング(複数ある場合は最も高い値、気温が同じ場合は新しいほうを上位に記載)
表 最高気温の観測地点ランキング(複数ある場合は最も高い値、気温が同じ場合は新しいほうを上位に記載)

 また、これまで14都県で最高気温40度以上を観測していますが、福島県は初めてです(図3)。

図3 令和4年(2022年)までに最高気温40度以上を観測した14都県
図3 令和4年(2022年)までに最高気温40度以上を観測した14都県

 40度以上を観測しているのは東日本から東北南部に集中しており、平均気温が高い西日本や沖縄では意外と40度以上を観測していません。

 8月6日も、鳥取で最高気温38度の予報となっており、全国で猛暑日は150地点程度、真夏日は615地点程度、夏日は800地点程度を観測すると予想されていますが、一頃に比べれば猛暑日、真夏日、夏日を観測した地点数は減っています。

 とはいえ、湿度は高くなっていますので、引き続き、熱中症対策が必要です。

近年増えてきた40度以上の観測

 福島県・梁川の観測で、40度以上を観測した地点数は33地点となりましたが、岐阜県・多治見で8回も40度以上を観測しているなど、複数観測している地点がありますので、延べ数は72回です。

 そして、72回のうち、明治・大正時代は0回、昭和時代は、昭和2年(1927年)の愛媛県・宇和島、昭和8年(1933年)の山形県・山形、昭和53年(1978年)の山形県・酒田の3回しかありません。

 残りの69回は平成・令和時代です。

 それも、平成12年(2000年)以降に急増しています。

 気象庁は、最高気温が40度以上の日に特別な名称を付けていませんが、猛暑日や真夏日などのように、特別な名称を付けて警戒を呼び掛ける時期にきているのかもしれません。

 ちなみに、日本気象協会では、令和4年(2022年)に、気象予報士130人にアンケート調査を行い、最高気温が40度以上の日を独自に「酷暑日」と呼ぶことにしていますので、「酷暑日」の名称がちらほら使われだしています。

猛暑日が作られる16年前の候補だった「酷暑日」

 平成14年(2002年)ころ、増えてきた35度以上の日に特別な名称を付けようとする動きができています。

 猛暑日という名称が使われる前の話です。

引用:中日新聞(平成14年(2002年)8月16日夕刊) 

チョーアツイ 「真夏日」超えている 35度以上 呼称は何 TVは『酷暑日』も 冷めた気象庁『新語に慎重』

 猛暑続きで最高気温が35度を超す日が急増している。

 東京都心ではかつて年に1日あるかないかだったが、1990年代には年平均3.7日まで急増し、今月だけでも15日までに6日もあった。気象庁内でも「真夏日(30度以上)では表現しきれない暑さだ」との声が聞かれるが、35度以上の日を表す新しい名前は、まだない。(略)。

 同庁によると、温暖化や都市化の影響が考えられるが、熱帯夜(未明の最低気温が25度以上)の増加や冬場の最低気温の上昇と違って、因果関係は不明確だという。

 この最高気温35度以上の日を、天気キャスターの森田正光さんは「酷暑日」と呼んでいる。「数年前に番組で視聴者から公募したら『熱帯日』が多かったが『酷暑日』『猛暑日』もあった。当初は『熱帯日』を使ったが、熱帯夜と重なるので『酷暑日』を使いだしました」と言う。新聞など報道機関も時々「酷暑日」を使う。

 だが、気象庁の用語集に「酷暑日」はない。予報に使えない解説用語として「酷暑」はあるが「厳しい暑さ」の意味とされているだけだ。

 同庁予報課の青木孝課長は「『酷暑日』のような新しいネーミングは検討していない。新用語を決める時は気象庁だけで勝手にやるのでなく事前に報道機関にも相談するが、新しい言葉をつくることには慎重でありたい」と話す。

 その後、30度以上の「真夏日」より暑い日の呼び名はなく、報道機関などによって「酷暑日」「猛暑日」などバラバラな名称が使われていました。

 気象庁が天気予報等で用いる用語集を改正し、最高気温が35度以上の日を「猛暑日」と呼ぶほか、暑い日には「熱中症」の注意を呼びかけることにしたのは、平成19年(2007年)4月1日からです。

 この時、35度以上の日については、「常夏日」、「超暑日」、「激暑日」などいろいろな提案がありましたが、「猛暑日」以外の多数意見は「酷暑日」でした。

 「35度未満の日も猛暑と言ってきたので酷暑日にしてほしい」と訴える報道機関もありました。

 しかし、「酷」は「残酷」や「過酷」など人体へのダメージや被害のイメージにつながるため気象用語としてはふさわしくないと判断されました。

 気温が37度以上と、体温以上に高くなると、人体へのダメージは相当なものになることから、「35度以上の日を酷暑日とすると、将来、体温以上の日が増えてきた時の呼び名に困る」という意見もあったといわれています。

 以後、35度以上の日を「猛暑日」と呼ぶことが定着し、「酷暑日」という言葉はしばらく使われなくなっています。

台風の北上と東日本の猛暑

 東シナ海で速度を落としていた台風6号は、太平洋高気圧の弱まりとともに東進をはじめ、鹿児島県奄美大島近海を通過し、九州の南海上に進む見込みです。

 台風が長時間にわたって海面をかき混ぜた結果、深海から冷たい海水を湧昇させたため、台風6号周辺の海面水温は、台風が発達する目安とされる海面水温27度を下回っています(図4)。

図4 台風6号の進路予報と海面水温(8月6日0時)
図4 台風6号の進路予報と海面水温(8月6日0時)

 しかし、台風が海面水温の高い海域に動き始めたことにより、強い勢力で九州の南海上に進む見込みです。

 そして、8月8日から9日にかけて北上し、九州にかなり接近・上陸する見込みです。

 台風が北上する予報となっているのは、東日本から東北南部をおおっている高気圧の勢力が強まってくるため、東へ進めないためと考えられるからです。

 となると、東日本から東北南部では、晴れて気温が上昇することになり、熱中症対策は長丁場となります。

 台風6号と猛暑、いずれも太平洋高気圧の動向に振り回される一週間になりそうです。

図1、図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図4の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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