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不祥事で角界を追われた元幕内・貴源治が「RIZIN」に参戦──いかに闘う?何を見せる?

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
昨年の名古屋場所で炎鵬(右)に張り手を見舞う貴源治(写真:日刊スポーツ/アフロ)

入門翌年に正代を破る

「力士の時からMMA(総合格闘技)には凄く興味がありました。大きな怪我をせずやめることがあれば、MMAをやりたいと思っていたんです。

これまで喧嘩をしても、本気で相手を殴ったことはない。やっと人前で思いっきり殴れる機会を得ました。楽しみです」(貴賢神)

3月23日、東京・目黒で開かれた記者会見で大相撲元幕内力士・貴源治の『RIZIN TRIGGER 3rd』(4月16日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ)参戦が発表された。リングネームは「貴賢神」。

対戦相手はベテラン柔術ファイターでプロレスのリングにも上がっている関根”シュレック”秀樹(ボンサイ柔術)。試合はオープンウェイト(体重制限なし)で行われる。

昨年大晦日、貴賢神は『RIZIN.33』のリングに上がりMMA転向を表明、それから3カ月余りを経てようやく正式にデビュー戦が決まった。

「試合が決まって嬉しい。対戦を受けてくれた関根選手に感謝している。試合では本気で殴れることが楽しみ」と会見で話す貴賢神(写真:RIZIN FF)
「試合が決まって嬉しい。対戦を受けてくれた関根選手に感謝している。試合では本気で殴れることが楽しみ」と会見で話す貴賢神(写真:RIZIN FF)

貴賢神は角界入りする前に、さまざまなスポーツを経験している。

小学生の時にカラテ、キックボクシングを始め、中学校ではバスケットボールに熱中、類い稀な運動センスを発揮し茨城県選抜チームの主力として全国大会でも活躍した。強豪高校からの誘いも受けたが、経済的理由から進学を断念。双子の兄(現・総合格闘家のスダリオ剛)とともに中学卒業後、大相撲の貴乃花部屋に入門した。

周囲の期待は高かった。

入門翌年(2014年)の名古屋場所(三段目)では、元学生横綱で入門以来無敗だった正代(現・大関)に勝利した。得意なのは突き・押し相撲。パワーは圧巻で型にはまると、とてつもなく強く観る者を驚かせる。しかし、雑な相撲が目立ち取りこぼしも多く、出世には時間がかかった。

十両昇進は2017年。それから2年後に十両優勝を果たし幕内に上がる。だが僅か2場所で十両に陥落。昨年の名古屋場所の最中に大麻の陽性反応が確認されたことで角界から追放された。

シンプルな闘いに

さて、RIZINデビュー戦を貴賢神はいかに闘うのか?何を見せてくれるのか?

彼はいま、総合格闘技ジム「ALLIANCE-SQUARE」に通い、元UFCファイター高阪剛から指導を受けている。新天地で充実した日々を過ごし、自らの格闘家としての成長を実感しているようだ。

「楽しんで毎日、練習しています。特に難しいと感じることはありませんが自分の一番の課題はスタミナ面。いま追い込んだ練習をして、そこを上げているところです」

会見で、そう話した貴賢神は今回の試合のフィニッシュイメージについても言及。

「相手の顔面の骨を折って勝ちたい」と。

これに対してサングラス姿の関根は言った。

「顔面骨折はいやだなぁ(笑)。でも僕は右手に勇気、左手に涙、心に愛を持って闘います」

24歳年下の相手の躊躇ないコメントに苦笑いする関根には、余裕が感じられた。

(キャリアが違うだろう)

そう言わんばかりだった。

記者会見後に撮影に応じた関根”シュレック”秀樹(左)と貴賢神(写真:RIZIN FF)
記者会見後に撮影に応じた関根”シュレック”秀樹(左)と貴賢神(写真:RIZIN FF)

この一戦、シンプルな闘いになるだろう。

24歳でMMAの練習を始めたばかりの貴賢神は、総合格闘家としては未完成。ならば、力士時代に培ってきたことを活かして闘うことを選択するしかない。開始早々にラッシュをかけて、一気に攻め込むつもりだ。一撃に活路を見出そうとする。

対して、関根は長期戦を望む。

48歳のベテランは闘いのペース配分を知っている。攻撃をいなしながら貴賢神のスタミナ切れを誘い、グラウンドの展開に持ち込んで勝負を決めるつもりだ。

貴賢神が秒殺するか、関根が長期戦に持ち込んで持ち味を発揮するか─。

私はキャリアで勝り、高いモチベーションを有している関根優位と予想するが、貴賢神の驚異の瞬発力がケージで爆発する可能性も十分だ。いずれにせよヘビー級ならではのド迫力ファイトは必至である。

ちなみに、双子の兄弟でありながらスダリオ剛と貴賢神は仲が良くない。口も利かない状態で、兄弟が一緒に練習することはなさそうだ。

<「RIZIN TRIGGFR 3rd」主要対戦カード>

上記の試合を含め11~13試合が予定されている(提供:RIZIN FF)
上記の試合を含め11~13試合が予定されている(提供:RIZIN FF)

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストに。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターも務める。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。仕事のご依頼、お問い合わせは、takao2869@gmail.comまで。

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