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秋元強真は「朝倉海の後継者」なのか?真価が問われる鈴木博昭戦の行方を考察─。『11・17RIZIN』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
9月にRIZINデビューを果たした期待の新鋭・秋元強真(写真:RIZIN FF)

RIZIN2戦目が電撃決定

「目指すは、RIZIN2階級制覇。まずはバンタム級でチャンピオンになりたい。だから、いま一番闘いたいのは王者の井上直樹選手です」

9月28日、さいたまスーパーアリーナでのRIZINデビュー戦で金太郎(ATT)を僅か196秒でTKOした後に、秋元強真(JTT)はそう口にした。前評判通りの強さを披露した18歳の新鋭は、いま自信に満ちている。

この日、セコンドにもついた朝倉海(JTT)は試合前に話していた。

「誰も勝てなくなると思いますよ。先に言っておきます、これからのRIZINは彼が引っ張ります」

いま、RIZINは世代交代期にある。

3年前、2021年大晦日のエキシビションマッチを最後に那須川天心(TARGET/Cygames=当時)が去り、昨年大晦日には朝倉海がフアン・アーチュレッタ(米国)を破った直後に「UFCに挑みたい」と話しバンタム級王座を返上。今年7月の『超RIZIN.3』で平本蓮(剛毅會)にKO負けした朝倉未来(JTT)は現役を引退した。集客能力が高いと思われていた平本も「ドーピング疑惑」でイメージを悪くした状況にある。

そんな中、彗星の如く現れた秋元には「RIZINの新エース」「朝倉海の後継者」を期待する声が大きい。

10月25日、JTTでの公開練習の後にメディアからの質問に答える秋元強真。右は『RIZIN LANDMARK 10』でマゲラム・ガサンザデと対戦する白川ダーク陸斗(写真:RIZIN FF)
10月25日、JTTでの公開練習の後にメディアからの質問に答える秋元強真。右は『RIZIN LANDMARK 10』でマゲラム・ガサンザデと対戦する白川ダーク陸斗(写真:RIZIN FF)

そして、秋元のRIZIN2戦目が近づいている。

当初、次戦は大晦日だと思われていたが、11月17日に愛知・ポートメッセなごや第1展示場『RIZIN LANDMARK 10』に電撃参戦決定。元シュートボクシング2階級制覇王者の”怪物くん”鈴木博昭(BELLWOOD FIGHT TEAM)と対戦することになったのだ。契約ウェイトはバンタム級(61キロ以下)ではなくフェザー級(66キロ以下)となる。これは秋元が、階級を上げるという意ではなく、今回に限った特別措置だろう。

「警戒するほどでもないかな」

フェザー級での闘い、打撃が得意な鈴木を相手に秋元は勝てるのか?

10月25日、自身が所属するJTTでの公開練習を終えた後に秋元は、こう話している。

「(鈴木は)金太郎選手がデカくなって、スピードが遅くなったバージョンくらいにしか思っていないです。一発もらったら危ないとは思いますが、ぶっちゃけスピードは本当に遅い。警戒するほどでもないかな、一本で勝ちたい」

どうやら秋元は鈴木戦を、大晦日の試合、その先に向けての通過点としか考えていないようだ。

対戦相手である鈴木のRIZIN(総合格闘技)戦績は4勝4敗。

今年7月『超RIZIN.3』ではYA-MAN(TARGET SHIBUYA)に1ラウンドで倒されたが、これがRIZINでの初めてのKO負け。そして4勝はすべて1ラウンドTKO勝利で、その中には秋元と同門の西谷大成、昇侍との試合が含まれている。相手を一撃で仕留める武器を有したストライカーだ。

昨年6月、札幌『RIZIN.43』での西谷大成戦。鈴木博昭はカウンターで跳びヒザ蹴りを見舞った後、パウンドでTKO勝利を収めた(写真:RIZIN FF)
昨年6月、札幌『RIZIN.43』での西谷大成戦。鈴木博昭はカウンターで跳びヒザ蹴りを見舞った後、パウンドでTKO勝利を収めた(写真:RIZIN FF)

さて予想だが、優位なのは秋元だろう。

キャリアは浅く、初めてのフェザー級での闘いとなるが彼のポテンシャルは高い。

スピード、反応能力、寝技の技術、そして勢いでも鈴木を上回る。打撃を搔い潜りグラウンド展開に持ち込んで2ラウンド以内にパウンドかサブミッションで勝利するのではないか。

18歳の秋元と、39歳になった鈴木の世代抗争。

ここで秋元が勝利したなら、次は大晦日のリングでバンタム級トップクラスのファイターと対峙する可能性が高い。

牛久絢太郎(ATT/元RIZINフェザー級王者)、太田忍(THE BLACKBELT JAPAN/リオ・デ・ジャネイロ五輪レスリング銀メダリスト)、佐藤将光(坂口道場一族/Fight Base 都立大)のいずれかに挑むことになるのか。さらに、ここを突破できれば、来年前半でのバンタム級王座挑戦が見えてくる。

秋元強真は「朝倉海の後継者」なのか?

まずは、尾張での怪物くんとの対決で新鋭の真価を見極めたい─。

〈11・17『RIZIN LANDMARK 10 in NAGOYA』主要対戦カード〉

※上記のカードを含め全17試合が予定されている(画像提供:RIZIN FF)
※上記のカードを含め全17試合が予定されている(画像提供:RIZIN FF)

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストに。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターも務める。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。仕事のご依頼、お問い合わせは、takao2869@gmail.comまで。

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