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王者・鈴木千裕はクレベル・コイケにリベンジできるのか?大晦日『RIZIN.49』で何が起こる?

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
大晦日に再戦する王者・鈴木千裕(左)とクレベル・コイケ(写真:RIZIN FF)

「RIZIN」10年目

RIZINは、2015年末から始まった。

同年12月29、31日の『RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2015 ~SARABAの宴&IZAの舞~』。3年半ぶりに復活を遂げたエメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)がシング・心・ジャディブ(インド)を1ラウンドKOで下し、ヘビー級トーナメント決勝ではキング・モー(米国)がイリー・プロハースカ(チェコ)を倒して優勝した大会だ。またここで桜庭和志(フリー)vs.青木真也(パラエストラ東京/Evolve MMA)も行われている。

早いもので、あれから10年目を迎える。そして今年のRIZIN大晦日大会は例年以上に賑やかになりそうだ。

11月5日、都内で開かれた記者会見でRIZIN榊原信行CEOは、こう話した。

「今年の大晦日はファンの方に思いっきり格闘技を楽しんでもらえる一日にします。イベントタイトルは『RIZIN DECADE』。3部構成で『第1部』と『第2部』については追って発表しますが『第3部』で『RIZIN.49』を開催します。おそらく除夜の鐘を跨ぐ大会になると思います」

そして、第3部となる『RIZIN.49』のメインカードも発表された。

〈RIZINフェザー級タイトルマッチ〉

鈴木千裕(王者/クロスポイント吉祥寺)vs.クレベル・コイケ(元王者/ボンサイ柔術)

1年半ぶりのリマッチ。RIZINフェザー級頂上対決である。

クレベル優位、それでも…

昨年6月、北海道・真駒内アイスアリーナ『RIZIN.43』で両者は対戦した。この時はクレベルが王者で、鈴木が挑戦者の立場だったが、決戦前日にまさかの事態が生じた。

クレベルが減量に失敗、400グラムオーバーで計量をパスできずベルトを剥奪されてしまったのだ。よって試合は変則タイトルマッチに。鈴木が勝利したなら王座奪取、クレベルが勝った場合は公式記録はノーコンテストで王座が空位となる取り決めだった。

試合はクレベルが完勝した。僅か179秒、腕ひしぎ十字固めで鈴木はタップを余儀なくされ完敗を喫しているのである。

それから5カ月後の11月に、新王者となっていたヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)に鈴木が敵地で挑む。ここで大方の予想を覆して鈴木が勝利、第5代王座に就いた。

そんな鈴木をクレベルはつけ狙う。幾度も「逃げるな!」と再戦をアピールし今回のタイトルマッチに至った。

昨年6月、北海道・真駒内アイスアリーナ『RIZIN.43』で鈴木千裕に圧勝したクレベル・コイケ。だが計量失格により公式記録はノーコンテスト、フェザー級王座は空位となった(写真:RIZIN FF)
昨年6月、北海道・真駒内アイスアリーナ『RIZIN.43』で鈴木千裕に圧勝したクレベル・コイケ。だが計量失格により公式記録はノーコンテスト、フェザー級王座は空位となった(写真:RIZIN FF)

さて、勝つのはどっちか?

試合展開は予想しやすい。

打撃で圧倒したい王者・鈴木と、得意の寝技に持ち込んで一本を決めたい元王者・クレベル。自らのペースに持ち込めた方が勝者となろう。

大方の予想は「クレベル優位」。

一度圧勝しているうえに、寝技に引き込めば隙がない。慎重に試合を進めながらチャンスを逃さずに決めて勝つ可能性が高い、との見方だ。

私も同意だ。データを重視すれば、そこに至る。

しかし、この試合の興味深いところは鈴木の思い切りの良さにある。

鈴木は自分の可能性を信じて最後まで闘い抜くことができる男だ。そして戦法に迷いがない。

昨年7月『超RIZIN.2』でのパトリシオ・ピットブル(ブラジル)戦、さらには11月のケラモフ戦は、いずれも大方の予想を覆してのアップセット勝利だった。だがこれは「まぐれ」などではない。鈴木の最後まで諦めない強い気持ちがもたらした快挙だったように思う。

総合力で優位なのはクレベル。しかし鈴木は常識破りのミラクルファイター、一撃で相手を倒せる打撃力を秘める。大晦日のメインイベントの結末は如何に─。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストに。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターも務める。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。仕事のご依頼、お問い合わせは、takao2869@gmail.comまで。

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