予約が取れないワールドチョコレート・デザートブッフェの秘密
開始前から話題に
「ウェスティンホテル東京<スイーツブッフェの魔術師>はいかにチーズデザートブッフェを流行させるのか?」でザ・テラスで行われたチーズ・デザートブッフェの人気の秘密について迫りましたが、その次に行われている「ワールドチョコレート・デザートブッフェ」はさらに人気を博しています。
開始前からTwitterでもよく言及されており、「ついっぷるトレンド」の週間ランキングでも5位に輝き、スターバックスの新商品を押さえてフード関連でトップになっているのです。
いちホテルのデザートブッフェがこれほどまでに注目を浴びることは珍しいことであり、ニュースアプリやメディアサイトでも記事を見たことがある人は多いのではないでしょうか。
過去最高の反響
こういったことを踏まえて広報担当は「通常はストロベリーデザートブッフェが最も人気があるが、チーズ・デザートブッフェはそれを超えた。今回はそのチーズ・デザートブッフェをも超える過去最高の反響で驚いている」と話し始めます。
具体的には「ご予約はこれまでもほぼ一杯であったが、今回は通常の180%くらいご予約をいただいている。時間をずらしてご予約していただいたり、暖かい季節なのでパティオ席をご用意したり、ご承諾いただければカウンター席にご案内したりして、少しでもキャパシティを増やしている。しかし、それでも足りず、たくさんお断りしているのが現状」と説明します。
ワールドチョコレート・デザートブッフェはどうしてこれほどまで人気となっているのでしょうか。
プロモーション戦略が成功
広報担当は「チーズ・デザートブッフェに引き続きシックで上質な雰囲気を踏襲している。これがザ・テラスのデザートブッフェのよさを表現できているのではないか」とブランディングの方向性について触れ、「ファッション誌やライフスタイル誌でもご紹介いただき、新しいチャネルが増えている」と露出が拡大した理由について述べます。
また「公式サイトや媒体で公開する日時を調整して、リリースが出た後も継続的に露出するようにしたのが功を奏した」と計画的な戦略が当たったとします。
宣伝商材の質が高かったことはもちろん、プロモーション戦略によって開始前から話題となっていたのです。
時期を調整する
エグゼクティブペストリーシェフ鈴木一夫氏は「開始前から反響が高かったのはプロモーションのおかげであった。しかし、開始してからは中身が勝負なので私達が頑張らなければならない」と前の発言を真摯に受けます。
続けて「ワールドチョコレート・デザートブッフェは、昨年はストロベリーデザートブッフェの後に行った。しかし、バレンタインデーの直後に行うことになり、チョコレートが続くので、今年はチーズ・デザートブッフェを挟んでから行うことにした」と、昨年とは違って初夏にチョコレートをテーマにした理由を説明します。
セパレートヴェリーヌ
昨年よりも開催時期を工夫したことは分かりましたが、メニューについてはどうなのでしょうか。
「新感覚スイーツをご用意した。スイーツ本体とソースやトッピングを分けた、セパレートヴェリーヌを3種類もご用意している。それぞれを別に食べたり、まずはそのまま食べて途中で混ぜたりできるので、楽しみが増える」と自信を持ちます。
具体的には「スパイシーチョコポット ポップコーン添えは、ポップコーンを加えると、食感に変化があって面白い。今ポップコーンが流行しているので取り入れたかった。だが、ポップコーンを単にスナックとしてご提供するのではなく、上質なスイーツに仕上げたかった。エキゾチックフルーツとチョコレートのスープは、パッションフルーツなどのエキゾチックフルーツを加えると、爽やかに変化する。チョコレート豆かんは、豆かんをチョコレートでいただくという新提案。驚きがあって面白いが、相性はよい」と3種類を紹介します。
他にも今回から加わったスイーツはあり、「お客さまがご自分で選択できるスイーツとして、沼尻寿夫総料理長のアイデアでフレンチトーストもご提供を始めた。コンディメントをたくさん用意して、お客さまが選択してより楽しめるようにしている」と述べます。
チョコレートが引き立つように
ところで、鈴木氏と言えば、ブッフェのトータルデザインに極めて優れていますが、今回はどのような思想のもとデザインしたのでしょうか。
「チョコレートをテーマとしたデザートブッフェというと、チョコレートボンボンやチョコレートケーキを思い浮かべる方が多い。しかし、ザ・テラスでは25種類以上もチョコレートをテーマとしたスイーツがあるので、チョコレートが主張しているとすぐに飽きてしまう」と論理的に述べ、「チョコレートを主役にしようと考えてはならない。チョコレートがうまく引き立つようにして、結果的にチョコレートが主役になるようにする必要がある」と鈴木氏らしい哲学を披露します。
続けて「抹茶と黒豆のチョコレートクリームも、抹茶の渋味がチョコレートの風味を生かせるという発想から生まれた」と具体例を挙げます。
チョコレートが引き立つような組み合わせを考えていったので、他では見掛けられないような、オリジナルのスイーツが多くなったのでしょう。
ポップオーバーも
他に注目するべきスイーツは何があるのでしょうか。
「チーズ・デザートブッフェの時からご提供しているポップオーバーは大人気となったので、引き続きご提供している。しかし、もちろん同じではなく、今回はチョコレートとピーナッツのポップオーバーに仕上げている。軽い食感のポップオーバーとしっかりとしたピーナッツ風味のコントラストがポイント」であると紹介します。
さらには「ラズベリーショコラはウェスティン デリで販売するケーキと同じ以上に手間をかけている」と話し、どういったことであるかと問うと「焼いた生地と焼いていない生地を使って層を作り、風味と食感にグラデーションを付けている。少しでも質を高めるには、このような手間隙を惜しんではならない」と答えます。
また「フォレノワールは断面の美しさも見ていただきたいので、ココットではなく、あえてグラスで仕立てている」と見た目にもこだわっているとします。
氷菓も充実
鈴木氏が力を入れているには、ケーキだけではありません。
「チーズ・デザートブッフェの後半からは氷菓にも力を入れた。ソフトクリームには、世界的に高い評価を受けている日世の『CREMIA(クレミア)』を導入した。展示会で試食した時にそのおいしさに圧倒された。採算度外視で導入を試み、2年前から経営層を説得してきてようやく実現できた」と、直営店では1つ500円程度で売られているCREMIAをブッフェでも導入したとします。
「CREMIAはお客さまにとても喜んでいただけた。そのため、ケーキだけではなく氷菓にもより力を入れなければと考え、アイスクリームとシャーベットも、6種類から9種類に増やした」と話し、おすすめを尋ねると「スイーツで定番となっているニューヨークチーズケーキをアイスクリームにした。オリジナルの自信作なので、是非召し上がっていただきたい」と答えます。
ここに来ないと食べられないスイーツ
鈴木氏のデザートブッフェは絶大な人気を誇っていますが、ウェスティン デリで販売されている店売りスイーツも人気で、シュークリームやスペシャルウェスティンプリンは夕方前には必ず売り切れ、テレビなどでも入手困難のテイクアウト商品としてよく紹介されます。
もっと広く展開しないのかという問いに対して、鈴木氏は「通販の展開や催事への出展は予定していない。ここに来ないと食べられないスイーツをご提供することで、価値を高めていきたい。その代わり、ここに来ていただければ必ず、おいしくて美しいスイーツを召し上がっていただけることを、お約束する」と真摯に話します。
プラチナのデザートブッフェへ
デザートブッフェの今後については「次のステージへと押し上げたい。フェアは2ヶ月単位となっているが、2年後くらいには、フェアがスタートした直後に2ヶ月先のフェア終了まで全て予約が埋まるようにしたい。そこまでクオリティを高められたら、プラチナのデザートブッフェとなる」と述べます。
どういうことであるかと訊くと「プラチナのデザートブッフェはコンサートのプラチナチケットと同じ価値がある。予約が取れないデザートブッフェとなれば、お客さまにいつも選ばれる存在となり、ノーショーもなくなる」と、「今日もどこかでノーショーは繰り返される」で触れた無断キャンセル問題についても、とてもポジティブに語ります。
今回のワールドチョコレート・デザートブッフェが記録的な人気となっているにも関わらず、鈴木氏がなお頭と手を休めないのは、<デザートブッフェの魔術師>から<デザートブッフェの錬金術師>へとなり、約20億年前に地球へともたらされたプラチナが世界の中でも突出して高い人気を誇る日本において、デザートブッフェを<プラチナのデザートブッフェ>へと昇華させようとしているからなのです。
非常に難しい試みですが、私だけではなく鈴木氏のデザートブッフェを体験したことがある人であればきっと、この<プラチナのデザートブッフェ>が錬成されることと信じるのではないでしょうか。
情報
詳しくは公式サイトをご確認ください。
参考
すみれ草201にもインターナショナルブッフェレストラン ザ・テラスが詳しく掲載されていますので、ご参考にどうぞ。