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特番のバイキング企画でダイアン津田氏が「取って戻す/皿を重ねる」で炎上! “役割”主張も何がダメ?

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

バイキング企画でとった行動が炎上

2024年1月9日にテレビ朝日系で特別番組の「ロンドンハーツ×テレビ千鳥 合体3時間SP」が放送されました。お笑いコンビ・ダイアンの津田篤宏氏が人気企画「一周だけバイキング!!」に登場し、そこでとった行動に批判が殺到しています。

「一周だけバイキング!!」は、ブッフェで一回だけ料理を取ってもらい、その様子を観察するという企画。スタジオには和洋中80種類以上もの料理を用意。サラダ、カレーやクロワッサン、刺し身や寿司、チャーハンや点心、シーフードプラッターやステーキ、ケーキやカヌレ、さらには実演で天ぷらやステーキまで提供されており、まるでホテルのブッフェのようです。

津田氏は和食中心で18品を取りました。置いてある他の皿を触ったり、取ったものを戻したり、小鉢から玉子焼きを他のお皿に移したり、その小鉢をブッフェ台に置きっぱなしにしたり、皿の上に皿を載せたり、セイロの蓋を戻さなかったりと、眉をひそめるような行為を連発。

SNSでも大きく炎上したことにより、10日に津田氏はX(旧Twitter)に、これらは“役割”で行ったと弁明しました(現在はそのポストを確認できません)。テレビ番組では、笑いをとるために、意図的にマナー違反を行うのはよくあることです。

当記事では改めてブッフェのマナーについて説明していきます。

ブッフェの基本マナー

1958年8月1日に、日本におけるブッフェスタイルの発祥となった帝国ホテルのバイキングが誕生しました。バイキングにおけるマナーや、バイキングのもとになった北欧料理のスモーガスボードをベースにして、日本ブッフェ協会はブッフェの基本マナーと上級マナーを紹介しています。

ブッフェを正しく楽しく味わうためのマナーを提案/一般社団法人 日本ブッフェ協会

以下の基本マナーは、是非とも知っていただきたいものばかりです。

・自分の分だけを取る
・全て食べる
・ブッフェ台をきれいに使う
・適度に食べる
・ドリンクを飲み終えてからお替わりする

自分の分だけを取る

ブッフェでは、自分が食べるものを、自分で自由に取って食べます。幼児など面倒をみなければならない人がいる場合を除いて、基本的に他人の分を取ってはいけません。なぜならば、他の人がどれをどれくらい食べたいのかをはっきりと把握することが難しいからです。同行者の分まで取ると、食べ残した時の責任も曖昧になってしまいます。

全て食べる

ブッフェのもとになったスモーガスボードも、適量だけを取って食べるスタイル。自分が食べられる分量だけを取らなければなりません。もしも余計な食べ残しが多くなると、店は余計な支出が増えるため、料理の質を下げたり、種類を減らしたりする必要に迫られます。そうなると結局は、利用者にその負担が跳ね返ってくるでしょう。

ブッフェ台をきれいに使う

ブッフェ台はみんなで共有しているので、他の人も気持ちよく使えるように、きれいに使う必要があります。トングやサーバーを使ったら次の人が取りやすいように元の位置に戻したり、開けた蓋を閉じたりしなければなりません。他の人に迷惑をかけないよう、使う前の状態に戻しておく必要があります。ブッフェ台をきれいに使えば、料理がより美しく見え、より楽しく、よりおいしく食べられるでしょう。

適度に食べる

「ちょうどいいが いちばんおいしい」ので、限度を超えて食べて、苦しくならないように食べた方がよいです。せっかくおいしいものを食べても、こんなに食べなければよかったと、後悔してしまうのは残念。最後のあともう一皿をやめておくなど、適度にお腹を満たし、おいしい思い出を持ち帰るのがベストです。

ドリンクを飲み終えてからお替わりする

ドリンクもブッフェスタイルの場合には、しっかりと飲み終わってからお替わりします。飲み終わらないうちにお替わりしてしまうのはいけません。ドリンクを残してしまったり、ドリンクを飲みすぎて色々な料理が食べられなくなったりしてしまいます。

上級マナー

上級マナーは、基本マナーができた上で、知っておいてもらいたいマナーです。ブッフェならではの体験を深めることができ、さらに楽しめるようになります。

・少しずつ取る
・色々なものを試してみる
・コースで食べる

少しずつ取る

取りに行くのが面倒だからといって、山盛りにするのはやめるべきです。せっかく、料理人が一品一品素晴らしい料理をつくってくれているのに、味が混ざったり、温度が変わったりするのは残念。料理がくっつかない程度に盛るのがよいです。もしも気に入った料理があれば、何度でも取りに行って大丈夫です。少しずつ取ることによって、適量食べることにつながったり、色々な料理を味わえたりもします。

色々なものを試してみる

少ない種類をたくさん食べるのではなく、様々なものを少しずつ食べるのが、ブッフェの楽しみ方です。ブッフェであれば、一口だけテイスティングすることもできます。新しい食の好みが発見されるかもしれません。同じものばかりを食べていないで、食べたことがないものや予想がつかないものを食べてみると、食体験が広がります。

コースで食べる

ブッフェ台に並んでいるものを、闇雲に取るのではなく、どの料理をどのように食べるのがよいかを考えながら取ります。ブッフェでは、基本的に好きなものから食べてよいです。ただ、軽いものから重たいものへと食べるのが、身体的にも食味的にも自然なので、前菜、主菜、デザートという順番で食べるのがベスト。自分でオリジナルコースを組み立てて、何コースも楽しめれば完璧です。

食育にブッフェ

ブッフェは自由な食のスタイルであり、自主性と協調性を養えるので、食育に最適です。中学や高校でも「バイキング給食」が実施されることがあります。

・食品のバランスを考える(自主性)
タンパク質を含む「赤」の食品、ビタミンなどを含む「緑」の食品、糖質を含む「黄」の食品をバランスよく食べる
・料理を皿に整えて盛る(自主性)
自分のお皿に丁寧に盛る
・きれいに片づける(協調性)
使ったトングなどの器具を、次の人が使いやすいようにする

通常の給食では給食当番が配膳しますが、バイキング給食では自分で考えて料理を取る必要があるので、上記のような振る舞いが必要となるのです。

ブッフェ台での行為

ブッフェのマナーやバイキング給食を紹介しましたが、大前提にあるのは、他の人に迷惑をかけないようにして、よりおいしく、より健康的に、より楽しめるようにすることです。

こういった視点から、先に紹介した津田氏の行動を振り返ってみます。

置いてある他の皿を触ったり、取ったものを戻したり、空の小鉢をブッフェ台に置きっぱなしにしたり、セイロの蓋を戻さなかったりしました。スタジオに設置されたブッフェ台ですが、本来であればブッフェ台や皿やカトラリーは共有物なので、こういった行為は好ましくありません。

皿の上に皿を載せるほど山盛りにしていましたが、適量を取った方がよいでしょう。皿の上に皿をのせるのは、バランスが悪いので、持ち運ぶのに危ないです。

玉子焼きを小鉢から他の皿に移していましたが、カスタマイズやトッピングのコーナーでない限り、ブッフェ台で作業するのも推奨されません。小鉢に入れられて独立した一品となっているのに、あえて皿を移して、他の料理とくっついたりして、味や温度が変わってしまうのも残念なところです。

テレビの影響力

津田氏のマナーは、大多数のテレビの視聴者にとってよい反面教師になると思います。

ただ、テレビは影響力が非常に大きいので、有名人や人気者が行っていると、やってもいいのだと思って、真似する人が現れるかもしれません。判断力が備わっていない子どもであれば、その傾向は強くなるでしょう。

番組内では、よいマナーという扱いではありませんでしたが、もっとはっきりと好ましくないマナーであると明示した方がよかったと考えています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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