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トラックに貼ってある「G」のシールはなに?  「G」マークトラックが営業用トラックの50%を超えた

森田富士夫物流ジャーナリスト
Gマークトラック (国土交通省HPより)

 意識していないとなかなか気づかないが、トラックに「G」マークがついているのを偶然に見た、という人もいるだろう。これは「安全性優良事業所」の認定を受けた事業所に所属するトラックだ。2020年12月に、そのGマークトラックが営業用トラックの50%を初めて超えた。

営業用トラックと自家用トラックの違いと、コンプライアンスや安全性を重視した「安全性優良事業所(Gマーク)」の認定制度

 営業用トラックとは、有償で運送事業を営む許可を得た会社に所属するトラックのことだ。自家用トラックと営業用トラックを見分けるのは簡単で、濃い緑色のプレートに白い文字で番号などが書かれているのが営業用トラック(通称:緑ナンバー)。自家用車とタクシーのナンバーの色の違いと同じである。

 トラック運送事業者は公共の道路を使って仕事をしているので、安全管理(事故減少)や環境保全(CO2排出削減)などに努力しなければならない。環境にやさしい経営の認証制度もあるが、ここでは安全について紹介する。安全性に関する客観的な評価基準を設けて、その要件を満たした事業所を第三者機関が認定する制度が「安全性優良事業所(Gマーク)」である。「G」のロゴは、Good(良い)とGlory(繁栄)の頭文字をデザインしたもの。

 Gマーク認定の要件は、1)安全性に対する法令順守の状況、2)事故や違反の状況、3)安全性に対する取り組みの積極性の3項目。これらの項目の評価が一定の点数以上なら、「貨物自動車運送適正化事業実施機関(適正化実施機関)」が、安全性優良事業所(Gマーク)として認定する。その事業所に所属するトラックにはGマークが貼ってある。Gマークには有効期限があって、継続するには更新申請をして要件をクリアしなければならない。

 なお、適正化実施機関は1990年12月に施行された貨物自動車運送事業法とともに、運送事業者の法令順守などを指導、推進するために創設された機関である。経済的規制を緩和して、社会的規制を強化するという考え方に基づいている。Gマーク制度もそれらの事業の一環として2003年から始まった。目的は、1)荷主企業などの利用者がコンプライアンスなどの面からも信頼できる事業者かどうかを判断するメルクマールにできる、2)運送事業者の安全性向上への取り組みを一そう促進する、ことである。

 このGマーク認定事業所が2020年12月に全国で2万7065になった。12月1日現在のトラック運送会社の事業所数は8万6445なのでGマーク事業所は31.3%である。また、Gマーク事業所に所属する営業用トラックの台数は70万7683台で、2019年3月末現在の全国の営業用トラック140万2185台の50.5%と、初めて50%を超えた。

 肝心なGマーク制度導入の効果も数字に表れている。国土交通省の資料によると2019年(1月~12月)における、営業用トラックの車両1万台当たりの乗務員に起因する事故発生件数は、Gマーク未取得事業所の8.6件に対して、Gマーク取得事業所は4.0件と半数以下である。残念ながら人間が運転する以上、事故ゼロにはならない。事故発生率をいかに下げるかである。その点、国交省のデータからはGマーク効果が明らかだ。

トラック運送会社の安全管理、プロのトラックドライバーの安全意識向上、運送事業への社会的な関心の高まりが事故減少につながる

 Gマーク制度がスタートした2003年当時、1回目の認定を取得した全国の事業者を分析したことがある。すると興味深い傾向が分かった。大手でも、第三者から認定される「客観的品質」を重視する事業者は、全国的に一斉に申請して多くの事業所で認定を取得した。それに対して、同じ大手でも自社のサービスは社会的に高く評価されているので「知覚的品質」優先で良いという事業者は、最初はGマークをさほど重視していなかった。あるいはGマークに対して全社的な方針を打ち出していない大手事業者もあり、地域ブロックごとに認定取得にバラツキがあるケースも見られた。

 このように陸運の大手事業者でもそれぞれの姿勢の違いが現れた。むしろ中堅クラスの事業者の方が前向きだったように感じる。また、Gマークの認定取得に積極的に取り組む中小事業者もいた。

 だが、Gマーク制度が定着するにしたがって、大手事業者は各社とも認定取得に力を入れるようになった。このように全体的に見ると大手中堅事業者や積極的な中小事業者からGマーク制度が浸透してきたという経緯がある。Gマーク認定事業所数では3割強にもかかわらず、トラック台数では半数を超えているのは、このような理由による。

 Gマーク制度がスタートした2003年以降、毎年その年に新たに認定された中小事業者を数社ずつ取材してきた。これら各社に共通するのは、「安全には力を入れて取り組み、それなりの成果を出してきたが、社内だけでは自己満足に陥る可能性があるので、第三者から客観的に評価してもらうことが必要」という認識である。

 また、Gマークのついたトラックに乗務することになったドライバーの人たちも同じような感想をのべる。「Gマークのトラックに乗っていると、誰から見られているかも分からないので、安全運転をこれまで以上に心がけるようになった」というのだ。

 ところがドライバーの人たちが思っているほどには、周りから注視されているとはいいがたい実態もある。少し以前になるが2017年秋に、全日本トラック協会が東名高速道路の海老名サービスエリアの上りで、Webアンケートへの協力を呼びかけ、Gマークをどれくらい知っているかを調査した。その結果、物流には関係のない一般の人たちでは「Gマークを見たことがある」65.1%(n=189)、見たことのある人たちで「Gマークの呼び方を知っていた」61.8%(n=123)、さらに呼び方を知っていた人たちで「Gマークの意味を知っていた」90.8%(n=76)だった。

 高速道路でWebアンケートの協力を要請したので、「見たことがある」という回答が予想よりも多かったように思える。だが、普段あまり車を運転しない人たちでは認知度がもっと低いものと推測される。

 これには様々な理由が考えられるが、その一つにGマークの貼ってある位置がある。トラックのボディは運ぶ荷物や主な使用目的などによって形状が多様だ。そのためGマークが貼ってある位置がそれぞれ違う。だから、気をつけて見ないと分からない。

 以上のようにGマーク制度は、運送事業者の安全管理の推進、ドライバーの安全意識の向上を促している。さらにもう一つ、Gマークに対する社会的関心(一般の人たちからの注視)が加われば、より事故減少につながるものと思われる。

物流ジャーナリスト

茨城県常総市(旧水海道市)生まれ 物流分野を専門に取材・執筆・講演などを行う。会員制情報誌『M Report』を1997年から毎月発行。物流業界向け各種媒体(新聞・雑誌・Web)に連載し、著書も多数。日本物流学会会員。

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