賄賂を受け取ってくださいと差し出せば、3年以下の懲役または250万円以下の罰金です
ネットのニュースを見ていて、驚きました。森友学園理事長夫妻と自民党の鴻池元防災担当相が3年前に面会した際に、理事長夫妻が鴻池氏に具体的な金額は分かりませんが、「これでお願いします」と言いながら「商品券」を渡そうとしたというのです。
「これでお願いします」と金銭(商品券)を渡す行為は、刑法198条の贈賄(ぞうわい)罪が問題となるような行為なのです。
(贈賄)
第198条 第197条から第197条の4までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。
本条は、単純収賄罪、受託収賄罪、事前収賄罪、第三者供賄罪、加重収賄罪、事後収賄罪、あっせん収賄罪に規定されている〈賄賂〉の、(1)供与、(2)申込み、(3)約束を処罰する規定です。
贈賄罪の規定は、非常に単純な規定になっていますが、上のようなさまざまな賄賂罪が前提となっていますので、それぞれの贈賄が成立するためには、それぞれの収賄罪もまた前提となります。したがって、賄賂の〈供与〉や〈約束〉については、たとえば、受託収賄罪では賄賂をもらう側において具体的な依頼(請託)を受けることが要件ですから、賄賂を贈る贈賄側においても、具体的な依頼をもって賄賂を贈ることが条件となります。
ところが賄賂申込罪は、賄賂供与罪や約束罪とは異なり、一方の行為だけで成立する犯罪なのです。つまり、相手方である公務員が依頼(請託)を承諾したかどうかは、申込行為の犯罪性には関係がないのです。相手(公務員)が「賄賂」を突き返したとしても、申込罪は成立します。
判例では、本条にいう「申込み」とは、相手方に賄賂を受領するように促すことをいい(最高裁昭和24年12月6日刑集3巻12号1884頁)、相手方が賄賂と認識できる事情の下に、金銭その他の利益の収受を促す意思表示をすればたり、相手方が実際にその意思表示あるいは利益が収賄の性質を持つことを認識するかどうかは申込罪の成立に関係がない(最高裁昭和37年4月13日半時315号4頁)、とされています。
なお、鴻池氏の発言について、森友学園の籠池泰典理事長は商品券を渡そうとしたが、口利きを依頼したりしたことは一切ないと否定されています。「商品券は、いろいろなところにあいさつに行く際に、ふだんから持っていっているもので、特別なことではない。」(太字は筆者)と述べられています。
どちらの発言が真実なのかは不明ですが、自民党の重鎮が公の場で贈賄行為となりうるような行為があったと具体的に発言されているわけですから、これは籠池氏に対する重大な名誉毀損となりうる行為でもあり、この点の真相究明が大いに気になるところです。(了)
[補足]
賄賂罪の全体については、次の拙稿をご参照ください。