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婚活コンサルが「年収1000万ならデートで中華も寿司も予約」で炎上! 飲食店の複数予約がダメな理由

東龍グルメジャーナリスト
(写真:アフロ)

クリスマスにレストランを予約

クリスマスが目前です。今年はコロナの影響がないので、クリスマスのイベントとしてレストランに訪れる人も多いかと思います。

レストランを利用する際には、確実に入店して最適なサービスを享受できるように、予約するのが鉄則。大切なデートであれば、なおさらのことです。

ただ、予約するにしても、パートナーが当日の気分によって店を選べるように複数のレストランを予約しているとなれば、少し話は違ってきます。

複数のレストランを予約

X(旧Twitter)で、2020年にポストされた画像を貼った投稿が話題となっています。

そうなんですか?

メイメイ@婚活コンサルタント

女「ディナーは中華がいい」
男「予約しておくね」
~~~当日~~~
女「やっぱり中華じゃなくてお寿司がいい!」
仕事できない男 「え!?中華って言ったじゃん」
仕事できる男 「そう言うと思って、お寿司も予約してるよ」

年収1,000万クラスになると、後者の対応が当たり前なんですよね。

ウタさん/X

婚活コンサルタントのポストに端を発しています。

女性がディナーに中華を食べたいといったので、男性が予約。しかし、当日になって、女性がやはり寿司が食べたいと言い出したところ、仕事ができない男性は対応できず、仕事ができる男性は寿司も予約してあったという物語。婚活コンサルタントは、年収1000万クラスであれば複数のレストランを予約していると、後者を褒めています。

記事執筆時点で1325万以上の表示回数があり、大きな反響に。これを見たユーザーの反応が気になるところですが、返信を見る限り、ほとんどがネガティブな反応です。

賛同する人が少ないのは安心ですが、改めてここで、飲食店の複数予約がよくないことを説明します。

複数予約がノーショーやドタキャンにつながる

件のポストのように中華と寿司など、複数のレストランを予約していると、ノーショー(無断キャンセル)やドタキャン(直前キャンセル)につながります。

大手予約台帳サービスを展開するTableCheck(テーブルチェック)が実施した調査によれば、無断キャンセルをする理由のトップは「場所確保のためとりあえず予約」です。「複数店を同時に予約」や「うっかり忘れ」も上位にランクインしています。

飲食店の無断キャンセル被害をなくす!現状やキャンセル対策を解説/TableCheck

「複数店を同時に予約」は、とりあえず複数店を押さえておくということなので「場所確保のためとりあえず予約」と全く同じです。さらには、複数店を予約すれば「うっかり忘れ」しやすいことは明白。

したがって「複数店を同時に予約」は明らかにノーショーやドタキャンを促進しているといえます。

ノーショーやドタキャンがいけない理由

なぜノーショーやドタキャンはいけないのでしょうか。

まず、飲食店が予約を受け入れる機会を損失してしまうのが問題です。ノーショーやドタキャンの予約があるせいで、他の人が予約できなくなります。

飲食店は来客人数を鑑みて、事前に料理を準備したり、スタッフのシフトを組んだりするものです。席に加えて、コースや料理を予約しているのであれば、なおさらのことでしょう。そのため、ノーショーやドタキャンが起きると、準備したものが提供できなくなったり、スタッフが過剰になったりして、損害を被ります。

ドタキャンであれば、運よく直前に予約が入ったり、ウォークインの客が訪れたりすることもあるかもしれません。しかしその場合でも、同じものをオーダーしなければ、用意していたものが無駄になります。ノーショーの場合には客が遅刻する可能性も考慮して、15分から30分は様子をみるので、ドタキャンよりも売上機会を逸する確率が高いです。

他の利用者にも迷惑

ノーショーやドタキャンは、飲食店だけではなく、他の利用者にも迷惑をかけます。なぜならば、本来であれば、予約できたはずの人が予約できなくなるからです。

ノーショーやドタキャンが度々起きると、飲食店はノーショーやドタキャンの損失分を転嫁して、より高い価格を設定しなければなりません。そうなれば、困るのは他ならぬ利用者です。ノーショーやドタキャンを行う人がいるために、他の人が損害の補填分を支払うことになります。

利用者はノーショーやドタキャンによる不利益をもっと認識するべきです。

最初から訪れる気がなく、キャンセルするために飲食店を予約することは、偽計業務妨害罪となる可能性もあります。ノーショーは当然のことながら、ドタキャンする可能性が高いのに予約するのは言語道断です。

美談化への警鐘

ノーショーやドタキャンが起きても、運良くウォークインの客が入店し、リカバリーできることがあります。ハッピーエンドは面白い物語なので、メディアが美談として紹介することは少なくありません。

しかし、幸運に恵まれていただけの特殊な事例を美化してしまうと、「何とかなるのではないか」「大したことではない」と思われてしまいます。本当にノーショーやドタキャンで困っている飲食店の声がかき消されてしまい、問題が矮小化されるのです。

メディアはノーショーやドタキャンの背景にある問題を多少なりとも掘り下げていき、悪い行為であるとしっかり伝えていく必要があります。

予約を譲ればよいという考えは危険

予約を譲ればいいという考え方もありますが、非常に危険な考え方です。

日時や飲食店が既に決まっている上に、料理のジャンルやコース、値段も決められています。これら全てを承諾してくれる人を、短い時間で探すのは容易ではありません。

飲食店、それもデートで訪れるようなファインダイニングであれば、訪れる人の好みやアレルギーの有無、さらには前回の訪問日や訪問回数によって、最適な料理やサービスを構築します。訪れる客が異なれば、内容を変更しなければならないかもしれないので、飲食店にとっては迷惑な話です。

最近では、席の転売を防ぐために、クラウドファンディング経由や予約困難店の予約では、訪問時に本人かどうかを確認することも増えています。

誰かに譲ればいいという安易な考えで、飲食店を予約するのはいけません。

ノーショーやドタキャンに対する意識の低さ

日本では飲食店の予約が契約であるという意識が低いです。

ホテルを予約して宿泊しなかったり、飛行機や新幹線のチケットを購入して乗らなかったりしても、料金は支払うものであるという認識はあります。しかし、飲食店になると、予約してコースまで注文しているにもかかわらず、何も食べていないからとキャンセル料を支払わなくてもよいと考える人がいるのです。

ノーショーやドタキャンを解決するためには、予約台帳サービスなどのITツールが重要。キャンセルポリシーに従って、ペナルティ料金を科すことができれば、状況は改善するでしょう。

しかし、これだけでは足りません。なぜならば、飲食店の予約は契約であり、ノーショーやドタキャンは非常に悪いことであると認識されなければ、ペナルティを科された客が納得できず、外食産業に対する信頼が損なわれてしまうからです。

件のポストを行った方は食に関係していませんが、婚活コンサルタントを名乗るインフルエンサーであり、デートでレストランを予約しようとしている人に大きな影響を与えます。それだけに、複数予約を推奨するポストは看過できません。

ノーショーやドタキャンは誰も得にならない

2018年に経済産業省から配信された「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」では、ノーショーが与える影響について報告されています。

No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート/経済産業省

ノーショーによる損害は、年間で約2000億円。2日前からのキャンセルも加えると、その発生率は6%強にも達し、被害額は約1.6兆円にもなると推計されています。

飲食店だけではなく、他の利用者にとっても、ノーショーやドタキャンは喜ばしいことではありません。ノーショーやドタキャンが撲滅されるまでには時間を要するかもしれませんが、まず行為を肯定する発言がなくなることを願います。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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