メイウェザーvs那須川天心から1年 令和最初の大晦日はキック界珠玉の「魂の闘い」
日本キック界珠玉のカード
「今年の大晦日のカード、ちょっと地味じゃないですか?」
そんな風に話しかけられることが多い。
昨年の「フロイド・メイウェザーvs那須川天心」のイメージが強いのだろう。大晦日のリングには、芸能人や格闘家以外の有名人が上がるものだと思っている人も少なからずいるようだ。
今年のRIZINのマッチメイクに、世間を巻き込むサプライズはない。奇を衒わなかった。そういう意味では地味に映るかもしれない。だが格闘技ファンにとっては、胸躍るカードが揃っている。
年末恒例の格闘技スーパーイベント、今年は2年ぶりの2days。
12月29日、『BELLATOR(ベラトール) JAPAN』
12月31日、『RIZIN20』
場所はいずれも、”聖地”さいたまスーパーアリーナだ。
12・29のメインカードは、「PRIDEレジェンド対決」エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)vsクイントン・ランペイジ・ジャクソン
(米国)。大晦日のメインは「RIZINバンタム級王座決定戦」朝倉海(トライフォース赤坂)vsマネル・ケイプ(アンゴラ)。2日間で総合格闘技を軸に、キックボクシング2戦を合わせて計29試合が行われる。
RIZINキックボクシング部門のエース・那須川天心(TARGET/Cygames)も、もちろん参戦。大晦日『RIZIN20』のセミファイナルでキックボクシングルール(56キロ契約、3分×3ラウンド、延長1ラウンド)の下、江幡塁(伊原道場)と対戦する。
那須川天心vs江幡塁。
これは、キックボクシング界・珠玉のカードである。
那須川と「K-1」のエースである武尊の対決が熱望されて久しい。だが現状、諸事情により実現の糸口が見い出せていない。
ならば、無敵の那須川天心をもっとも追い詰めることができる日本人キックボクサーは誰か?
それは、江幡塁をおいて他にいないだろう。
江幡は、2007年にプロデビューし「打倒!ムエタイ」に燃える28歳。戦績/45戦39勝(20KO)3敗3分け。
タイの強豪選手との対戦が豊富で、2013年9月にはラジャダムナンスタジアム認定スーパーバンタム級王座に挑んだこともある。
今年は、『KING OF KNOCKOUT初代スーパーバンタム級王座決定トーナメント』に出場し見事、優勝。ここ3年、連勝街道を驀進中だ。
これまでに那須川は、RIZINのリングにおいてキックボクシング6試合を行っているが、今回、最強の相手を迎えることになったのである。
大方の予想は「那須川優位」だが…
12月23日に千葉・新松戸の「TEPPEN GYM」において公開練習を行った那須川は、次のように話している。
「9月以来の試合で、間隔が少し空きましたけど、ダメージが抜けて調子はいいです。
江幡選手は、基本がしっかりとできている選手。右ストレートは強いですし、上手に強弱をつけてタイミングも変えて打ってきます。日本人選手では珍しいタイプですが、早い段階で読み切っちゃおうと思います。
右ローキックも重そうですが、対策を練っています。これまでの(江幡の対戦)相手はローキックをどう避けようかと考えていたでしょうが、僕は避けるのではなく技を合わせていきます。
『大晦日は、盛り上げないと』という気持ちは強いですから、リスクを冒してでもKOを狙っていきますよ。必殺技、これまでにやったことのないパターンも準備しています」
その翌日、24日には、東京・代官山にある「伊原道場」で江幡が練習を公開。ミット打ちを終えた後、彼が口を開いた。
「那須川選手は、器用だと思います。カラテが混ざったスタイルで、ボクシングも上手なファイターですよね。闘うのが、とても楽しみです。
キックボクシングにも、闘い方にいろいろなスタイルがあります。カラテが混ざっていたり、ムエタイの要素が強く取り入れられていたり。
でも、僕の闘い方は、打倒ムエタイを念頭においての伝統的なキックボクシングです。最初は、那須川選手と闘った時に、どんな展開になるのか上手くイメージできませんでした。でも、戦略を立てているうちに感じました、『凄く噛み合う』と。
(那須川は)ポイントアウトでの判定勝ちではなくアグレッシブにKOを狙って攻めてくるはずです。それは、僕にとっては、とても闘いやすい。自信もあります。背負っているものも大きいですし、心の闘いで勝ちたい」
さて、勝つのは那須川か? 江幡か?
下馬評では「那須川優位」。
瞬発的な打撃力で上回ることに加えて、RIZINという大舞台にも慣れおり勢いもある。それが大方の見方だ。
この予想に異存はない。私も「那須川優位」と見ている。
だが闘いばかりは、やってみなければわからない。
総合格闘技の話になるが、『RIZIN18』で朝倉海が堀口恭司を倒したアップセットは、記憶に新しいところだ。
序盤に一気に攻め入りペースを掴んでしまえば、那須川がKOで勝つだろう。しかし、これを攻防一体の粘り強い闘い方で江幡がしのぎ切り、最終ラウンド、あるいは延長ラウンドにまで持ち込んだならば、勝負の行方はわからなくなる。
令和最初の大晦日に繰り広げられる魂の闘いは、決して地味なものにはならない。