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トレード移籍で復活は間違いなし!? 新天地のホームでは出塁率.440&OPS1.032

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェシー・ウィンカー Aug 6, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 12月2日のトレードで、シアトル・マリナーズは、コルテン・ウォンと175万ドルを手に入れた。ウォンを放出したミルウォーキー・ブルワーズは、エイブラハム・トロジェシー・ウィンカーを獲得した。

 今シーズン、マリナーズは、2001年以来のポストシーズン進出を果たし、「最もポストシーズンから遠ざかるチーム」の称号を返上した。ウォンを加えたのは、今シーズンの結果を継続させるためだ。

 一方、ブルワーズは、5年ぶりにポストシーズン進出を逃した。だが、シーズン86勝は、ポストシーズンへ進めなかった18チームのなかで最も多く、ナ・リーグのワイルドカード3番手、フィラデルフィア・フィリーズとは1勝しか違わなかった。ウォンの前には、ハンター・レンフローをロサンゼルス・エンジェルスへ放出しているが、再建に向かうのではなく、来シーズンはポストシーズン返り咲きをめざす。USAトゥデイのボブ・ナイテンゲールによると、ブルワーズに、コービン・バーンズブランドン・ウッドラフウィリー・アダメスを放出する気はないという。

 ウォンと交換に得た2人は、今シーズン、どちらもOPS.700に届かなかった。トロは352打席で.563、ウィンカーは547打席で.688だ。それぞれ、350打席以上のワースト5位(246人中242位)と500打席以上のワースト24位(132人中109位)に位置した。ブルワーズが彼らに期待しているのは、ブレイクと復活だろう。

 トロは、今月下旬に誕生日を迎えても、26歳と若い。現時点では、ウォンに代わる二塁手候補の一人だ。

 29歳のウィンカーには、こんなデータがある。昨シーズンまで、ウィンカーは、ブルワーズと同じナ・リーグ中地区のシンシナティ・レッズにいた。ブルワーズの本拠地、ミラー・パークでは、通算32試合に出場し、109打席で打率.344と出塁率.440、OPS1.032を記録している。

 もちろん、これだけでは、来シーズンの復活を予測することはできない。けれども、ウィンカーが不振だったのは、今シーズンだけだ。レッズでプレーした5シーズンは、いずれも規定打席未満ながら、出塁率.355とOPS.830を下回ったことはなく、計1523打席で出塁率.385とOPS.888を記録している。なかでも、昨シーズンの出塁率.394とOPS.949は、450打席以上の161人中、4番目と6番目に高かった。

 ブルワーズを去ったレンフローとブルワーズに加わったウィンカーは、同じ外野手だが、投打の左右だけでなく、打者としてのタイプが異なる。レンフローはパワーがあり、ウィンカーは選球眼に優れる。今シーズン、ウィンカーが記録した四球率15.4%は、500打席以上の132人中4位。121位の打率.219に対し、出塁率は38位の.344だった。出塁率が打率より120ポイント以上高かった打者は、ホアン・ソト(現サンディエゴ・パドレス)とマックス・マンシー(ロサンゼルス・ドジャース)に、ウィンカーしかいない。

 今シーズンの打率が低かったのは、119位のBABIP.251と健康状態が理由だろう。オフに入り、ウィンカーは、左膝と首の手術を受けた。また、昨シーズンは24本塁打と32二塁打を記録しているように、まったくのノンパワーではない。

 なお、ブルワーズが放出したレンフローとウォンについては、それぞれ、こちらで書いた。

「エンジェルスが獲得した外野手の○と×。ここ2年の本塁打は17位タイ、出塁率はワースト22位」

「2年前に逃した二塁手をトレードで獲得する。今年の守備は芳しくなく、FAまではあと1年だが…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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