【脱炭素】エネルギー基本計画改定案、問われる日本の本気度
今年7月21日、国の新たなエネルギー政策の方針「エネルギー基本計画」の改定案が示された。2030年までにCO2排出を46%削減し、2050年に実質ゼロとするという菅政権の決定を実現化する上で、日本でのCO2排出の8割を占めるエネルギー分野での変革はさけられない。今回のエネルギー基本計画改定案は、これまでのそれに比べれば、脱炭素や再生可能エネルギーに重きをおいたものではあるが、非現実的な原発への依存や、火力発電の中でも最もCO2を排出する石炭火力からのフェードアウトを明確にしていないなど、CO2排出の大幅削減の実現性に不安の残る内容と言わざるを得ない。火力発電や原発を既得利権とする大手電力会社への配慮が今なお経産省や政権にもあるのだろうが、欧州が先陣を切って世界経済の脱炭素化に進む中、特定の業界への配慮が日本全体の競争力を失わせることにつながりかねない。
○「石炭中毒」から脱却せよ
今回のエネルギー基本計画改定案では、2030年の電力構成について、以下のような目標設定をしている。
・2030年の火力発電を2019年度実績の約半分の41%程度に減らす。
・再生可能エネルギーの比率を「36~38%」に引き上げる。
・2030年の原発の割合は20~22%とする。
2019年実績で、火力発電は電源構成の76%を占め、これまでの2030年目標では56%であったので、今回示された41%への削減は、あくまで日本政府の目標としてではあるが、やや改善したと言える。しかし、この目標での火力発電の内訳を見ると、LNG(液化天然ガス)が約20%、石油が約2%、石炭が約19%という配分だ。石炭火力発電は高効率のものであっても、LNG火力発電の2倍以上という大量のCO2を排出する。温暖化防止のためには、真っ先に廃止していかなければならないものだ。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、先進諸国に対し2030年までに石炭火力発電の全廃を求めており、G7では、フランスが2022年までに、イギリスは2024年までに、カナダは2030年までに石炭火力発電を廃止するとしている。米国もバイデン政権は2035年までに発電分野からのCO2排出をなくすとしており、石炭火力発電の廃止は「優先事項」としている。石炭産出国で組合の強いドイツでも、2038年には石炭火力発電を廃止するとの目標を掲げているのだ。
このような中で、日本は2030年においてもまだ石炭火力発電を電源構成の19%とし、石炭全廃は定めていない。しかも、日本の石炭火力発電は、投資が回収できない「座礁試算」となるとの指摘もある。
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