日本人が見習うべき欧州サッカーの建前と本音
バルセロナの監督、ルイス・エンリケは、元レアル・マドリーの選手だ。21歳から26歳までマドリーでプレイした後、バルサへ移籍した。現役時代を二つに分ければ、前半をマドリーで、後半をバルサで、奇麗に半分ずつ過ごした珍しい人物になる。
バルサとマドリー。この二つのライバルクラブの間を行き来することは、現地では裏切り行為と見られる。禁じ手とさえ言われる。ミカエル・ラウドルップやフィーゴも、それを犯した選手として知られるが、彼らは外国人。当事者ではない。カンプノウのスタンドから、フィーゴめがけて豚の頭が投げ込まれたクラシコを僕は観戦しているが、印象に残っているのは、フィーゴの「なぜ?」と言いたげな表情だった。罪の意識を必要以上に感じている様子はなかった。
ルイス・エンリケは、ヒホン生まれとはいえ、れっきとしたスペイン人だ。全てを承知の上でバルサヘ移籍した。マドリーの首脳陣と起用法をめぐって対立関係にあったと言われたが、その末に、天敵のバルサへ移籍することは、相当な肝っ玉の持ち主でないとできない芸当だ。
バルサに移籍した当初、周囲の選手にルイス・エンリケ評を聞けば、典型的な“ガナドール”だと言った。スペイン語で勝利者という意味だが、こちらが意味をつかみかねていると「勝ちたくて勝ちたくてしょうがない男」と、かみ砕いてくれた。バルサに最も欠けているタイプだとする声も聞いた。
そうした傾向は、ルイス・エンリケのプレイそのものにも見られた。どこでもこなせる多機能型。たが、プレイそのものはスピーディで直線的だった。推進力に優れたその韋駄天ぶりは、パスワーク自慢のバルサにあって、ひときわ異彩を放っていた。
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