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ボールはどこで奪われるのがベストなのか。いまだ高さしかデータ化されていない日本サッカーの後進性

杉山茂樹スポーツライター
三笘薫(ブライトン)(写真:REX/アフロ)

 攻撃的サッカーと守備的サッカー。それぞれの見分け方にはいろいろあるが、筆者が一番だと考えるのは攻守が入れ替わるポイントだ。ボールを奪うポイントであり、奪われるポイントだ。好守が高い位置で入れ替わるほど攻撃的。低ければ守備的となる。

 だが、それには相手との戦力差が関係する。互角だとすればとの前提に基づく。対中国、対バーレーンがいい例だ。戦力差が大きいと傾向は見えにくい。守備的サッカーをしても相手が弱ければ、超攻撃的に見えてしまう可能性がある。

 以前にこの欄で、日本には攻守が入れ替わる場所を示すデータがないと述べたことがある。肝心要の情報をデータ会社は提供していない。調べていないのか。その必要性を感じていないのか。あえて公表していないのか、定かではないが、それを示さなくてどうするのと嘆きたくなる状態が続いていた。

 ところが先日、DAZNを見ていたらハーフタイムと試合後、紹介されていた。両軍のボールを失った場所の平均的高さを比較し、実況と解説者が語り合っていた。いつから実施されていたのか定かではないが、半歩前進したことは確かだ。

 しかしあくまでも半歩だ。高さだけでは情報として不十分だからだ。加えて問われるべきは、真ん中か外かになる。攻撃的サッカーか守備的サッカーかと言うより、これはよいサッカーかダメなサッカーかの識別だ。サッカーの善し悪しは、真横に引いた直線の高さだけでは分からない。

 奪われるなら外。真ん中で奪われる率が高いチームはサッカーの質が悪い。こちらはサッカーのレベルに関係ない。自軍ゴールまで、相手ゴールまでの距離は、それぞれ真ん中とライン際とで10m程度は違う。同じ高さで奪われるのなら、サイドの方が何倍もいい。2プレー、3プレー分、時間にしても数秒の差が生まれる。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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