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久保建英の未来はどうなる?「バルサが認めた才能」と残留争い中のアギーレ・マジョルカのジレンマ。

森田泰史スポーツライター
バルセロナ戦の久保(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

彼の未来は、明るいのだろうか?

久保建英の話である。先のリーガエスパニョーラで、マジョルカはバルセロナに敗れた。バルセロナの本拠地カンプ・ノウでは、2008年以降、一度も勝利を挙げられていなかったマジョルカだが、この度もその記録を破ることはできなかった。

久保はバルセロナ戦でベンチスタートだった。「突破力が持ち味の選手だ。彼には自由にプレーさせる必要がある。なので、9番の後方でプレーするという役割だけを与えていた。もっと彼にプレータイムを与えたいと思っている。バルセロナとの試合での彼のパフォーマンスは良かった」とは試合後のハビエル・アギーレ監督の談だ。

だが指揮官の言葉とは裏腹に、アギーレ監督就任後、久保の出場機会は減っている。先発出場したのはアラベス戦のみで、ヘタフェ戦、アトレティコ・マドリー戦、エルチェ戦、バルセロナ戦と久保はスタメンから外されている。アギーレ監督のコメントは“メディア向け”のものだと捉えるべきだろう。

アギーレ監督の指示を受ける久保
アギーレ監督の指示を受ける久保写真:なかしまだいすけ/アフロ

アギーレ監督は、“1部残留”を至上命題としてマジョルカ の指揮官に就任した。

そういった背景を踏まえれば、彼が守備的な戦い方にシフトしたのは納得できる。

5バックを使用して、相手の攻撃を跳ね返す。【5−3−2】で、攻撃はカウンターとセットプレー頼みだ。残り少ない試合で、少しでも勝ち点を積み重ねるためには、これしかないというのがアギーレ監督の判断だろう。

ただ、問題の本質は、そのような状況で久保が試合に出られなくなるところにある。

■タラレバと現実

『もっと攻撃的に戦って欲しい』『それなら久保にもチャンスが』そのような声は聞こえてくる。ただ、それは“タラレバ”であり、現実ではない。現実は、守備的な戦いをするチームで、どのように久保がポジションを勝ち取るか、だ。

さらに、現実的な話をするなら、今後、久保にオファーをするチームは、リーガ1部で中位から下位のチームだろう。そこでは、守備に戦うチームが大半だ。つまり、このマジョルカで活躍できない限り、ビッグクラブへのステップアップを望むのは難しくなる。

久保建英という選手を語る時、あまりに期待をかけ過ぎていると、ずっと感じている。

つまるところ、日本人は久保のような選手が好きなのだろう。小柄で、テクニックがあり、ドリブルが上手い。彼のような選手こそ、ビッグクラブに辿り着くべきだーーそんな風潮がある。一部の人間、メディアとファン含め、彼らはそれを盲信している節さえある。

久保はバルセロナのカンテラーノだ。“バルサが認めた才能”というお墨付きがあり、その刻印は消えない。それは否定しない。否定しようがない。だが一方で、バルセロナのカンテラ出身選手というのは、総じて外に出て行った時に弱い。そういう傾向がある。

その点が、レアル・マドリーのカンテラーノとの違いだ。マドリーのカンテラ出身選手は、フィジカル的にもメンタル的にもタフだ。複数クラブを渡り歩きながら、最終的には成功を勝ち取る。アルバロ・モラタ、パブロ・サラビア、ホセル、ラウール・デ・トーマス…。枚挙にいとまがない。

久保は、ビジャレアルでウナイ・エメリ監督に、ヘタフェでホセ・ボルダラス監督に重宝されなかった。これは最早「なかったこと」にされつつあるが、事実である。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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