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カリスマ女性シェフが待望の日本初イベント! 唯一アメリカから持参した「意外なあるモノ」

東龍グルメジャーナリスト
ナンシー・シルバートン@メトロポリタングリル (C) 東龍

ポップアップレストラン

ポップアップレストランとは、どこかのレストランで、ゲストシェフが数日間だけ営業を行うこと。コラボレーションでは、開催されるレストランのシェフとゲストシェフが協業しますが、ポップアップレストランの主役はゲストシェフです。

その土地の食材を用いたり、技法を真似たり、伝統料理をオマージュしたりすることはありますが、あくまでもゲストシェフがそこでレストランをオープンすればこうなる、というスタイルを貫きます。ゲストシェフのレストランに訪れなくても、その味を体験できるのは嬉しいことです。

ヒルトン東京で開催

ヒルトン東京「メトロポリタングリル」 (C) 東龍
ヒルトン東京「メトロポリタングリル」 (C) 東龍

最近話題となったポップアップレストランが、2023年8月31日から9月3日にかけてヒルトン東京「メトロポリタングリル」で行われた「ナンシー・シルバートン@メトロポリタングリル」です。

アメリカのミシュランガイド一つ星レストラン「オステリア・モッツァ」オーナーシェフのカリスマシェフ、ナンシー・シルバートン氏が腕をふるいました。

シルバートン氏は、2014年には料理界における最高の名誉と名高いジェームズビアード賞で「2014年度全米優秀シェフ」を受賞。2017年に配信されたNetflixオリジナルドキュメンタリー「Chef’s Table(シェフのテーブル)」シーズン3に出演して、世界的な知名度を誇ります。

私もNetflixで初めてシルバートン氏の存在を知りました。料理、デザート、パンのいずれも得意であり、プレゼンテーションは奇をてらわず、自身の感性を通して素材の持ち味を引き出す料理人です。人格的にも尊敬できる方なので、日本でのイベント開催を嬉しく思いました。

コース内容

提供されていたのは、ランチコース(10,000円、ドリンクペアリング +6,000円)とディナーコース(14,000円、ドリンクペアリング +10,000円)で、どちらともドリンクペアリングが用意されていました。

※価格は税・サ込

ランチコース

・ナンシーシーザーサラダ/卵、長ネギ&アンチョビクロスティーニ

・リコッタ&卵のラビオリ/ブラウンバター

・かんぱちの焼き串/ズッキーニ、ローリエ&フレゴラサラダ

・シッコ風のブロッコリーのグリル/ガーリックレモンビネグレット

・ロースト人参/ディルヨーグルト

・バタースコッチイタリアンプリン/キャラメルソース、生クリーム&マルドンシーソルト

ディナーコース

・ナンシーシーザーサラダ/卵、長ネギ&アンチョビクロスティーニ

・リコッタ&卵のラビオリ/ブラウンバター または タリアテッレ/オックステールラグーソース

・牛肉のグリルのタリアータ/ルッコラ、パルメザンチーズ&バルサミコビネガ

・かんぱちの焼き串/ズッキーニ、ローリエ&フレゴラサラダ

・シッコ風のブロッコリーのグリル/ガーリックレモンビネグレット

・ロースト人参/ディルヨーグルト

・バタースコッチイタリアンプリン/キャラメルソース、生クリーム&マルドンシーソルト

ディナーはしっかりとしたフルコースで、ランチはディナーコースのショートバージョンであると考えてよいでしょう。

シルバートン氏が自らキッチンに立ち、世界中の美食家を虜にするイタリア料理からインスパイアを受けたカリフォルニアスタイル料理を提供。さらには、「メトロポリタングリル」のシグネチャーである桜の薪を用いたグリル料理まで味わえました。

では、コースのうち、いくつかのメニューを紹介しましょう。

ナンシーシーザーサラダ

ナンシーシーザーサラダ (C) 東龍
ナンシーシーザーサラダ (C) 東龍

シルバートン氏の名前が付けられたオリジナルのシーザーサラダ。同氏いわく「伝統をリスペクトすることが大切です。シーザーサラダは昔から食べられている前菜なので、是非とも召し上がってください」。

左にはシンプルなロメインレタス。右にはクルトンの代わりにパンを敷き、その上に、食味に優れたスペイン産アンチョビ、ニンニク風味のマヨネーズ、長ネギ、ゆで卵のスライスを載せました。右にあるクロスティーニは手にとり、豪快にほおばって食べるとよいでしょう。

タリアテッレ

タリアテッレ (C) 東龍
タリアテッレ (C) 東龍

タリアテッレは卵を用いた平打ちパスタで、シルバートン氏も満足する鮮やかな色合いと味わいでした。旨味が凝縮されたオックステールの煮込みソースでいただきます。フルボディの赤ワインとのペアリングが秀逸です。

バタースコッチイタリアンプリン

バタースコッチイタリアンプリン (C) 東龍
バタースコッチイタリアンプリン (C) 東龍

シルバートン氏のシグネチャーデザートのひとつ。温かくて濃厚なキャラメルソースに、冷たくてやわらかいプリンの取り合わせが、出色のコントラスト。なめらかな生クリームと塩味のあるマルドンシーソルトが、プリンとキャラメルを引き立てています。上から下まですくって一緒に食べると、その複雑な味わいをより堪能できます。

付け合わせはトウモロコシのクッキーで、松の実とローズマリーの風味。シルバートン氏いわく「デザートは甘すぎない方がおいしくて、甘味と塩味のバランスが重要です。ローズマリーとキャラメルは相性がいいですね」。

開催された背景

ナンシー・シルバートン氏 (C) ヒルトン東京
ナンシー・シルバートン氏 (C) ヒルトン東京

シルバートン氏が来日するのは、今回が4度目です。最初は20数年前で、その時は食品関係の視察で訪れたといいます。日本におけるオフィシャルなイベントは初めてでしたが、どういった経緯だったのでしょうか。

シルバートン氏はヒルトン・シンガポール・オーチャードに「オステリア・モッツァ」を出店しています。もともとヒルトン・ホテルズ&リゾーツと関係が深かったので、日本でポップアップレストランを開催する運びとなりました。イベントが正式に決定したのは、開催の3、4ヶ月前。シルバートン氏は次のように話します。

「海外にはたくさんのレストランを展開しており、どれも個性が違いますが、共通しているのはイタリアを大切にしていることと、季節の野菜を大切にしていることです。それは、今回のポップアップレストランでも同じでした」

ポップアップレストランとなると、普段とは状況が異なるので苦労はつきものです。

「日本のイタリア料理はおいしくて、特にパスタは茹で方が素晴らしいです。食材も非常に良質ですが、ブラウンシュガーだけはイメージがぴったりなものが見つけられなかったので、アメリカからスーツケースいっぱいに詰めて持参しました」

日本にも関心

シルバートン氏は何冊もの本を刊行しており、日本でも2004年にレシピ本「パンの呼吸が聞こえる」(朝日出版社)を上梓しています。

「日本が大好きで、鮨、唐揚げ、天ぷら、ラーメンなど、たくさんの料理に興味があります。ただ、実際のところまだ回る時間がとれていなくて、あまり詳しく知りません。ファッションも好きなので、表参道や銀座を巡ってみたいですね」

シルバートン氏ほどの世界的な女性シェフが日本に興味をもち、日本で腕をふるう機会があったのは嬉しいことです。食に定評のあるヒルトン東京で開催されたポップアップレストランが、日本のガストロノミーシーンによい影響を与えたことは間違いありません。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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