今週末、どこ行く? はじめての女性「ひとり温泉」で”絶対外さない宿”【絶景と名湯とラーメン】を堪能
とことんひとりになりたい
*岬の突端にある宿
お相手は海の景観となる温泉をご案内しよう。
和歌山県南紀白浜温泉「浜千鳥の湯 海舟」は、太平洋の大海原に夕日が沈む景色が染み入る。
それは宿が岬の突端にあり、岬すべてが宿になっているから。宿のどこにいても海を眺められる設えは、海好きにはたまらない。
特に露天風呂からの景観は大迫力で、潮風を全身で受けることができる。かつて八咫烏の夫婦が愛を深めたという伝説が残っている。夕暮れの海の景色が、さぞかし愛を盛り上げたことだろう。
一番大きな露天風呂の他に、ひとりでしみじみ入浴したいなら貸切風呂へ。
また紀州と言えば、梅の産地。梅酒作りで使われた樽が湯船で、大人ひとりが身体ごとすっぽり入れる樽湯船は、大きくしっかりした樽に包まれている安心感を与えてくれる。樽湯船の周りには梅干しの種が敷かれていて、湯船に行くまでに足の裏を刺激するのも面白かった。温泉で温まった湯上がりに足裏を刺激するのも、これまた良し。温泉の温熱効果と足裏マッサージ効果で、より体が温まる。
お風呂だけでなく、食事処でも大海原を楽しめる。カウンターが海に面しているので、海を眺めながら食事ができるのだ。
かつて、「海舟」にはひとり部屋があった。海に面した角部屋で、部屋の2面が大きなガラス窓になっていて、下を見ると断崖絶壁。私が宿泊するのはこの部屋だった。岬の突端にあるひとり部屋は、窓に面した位置にひとり用のリクライニングソファーが置かれている。ソファーに座り、刻々と変化する夕暮れの海の表情、空の景色を眺めるのが、なによりの“ご馳走”。ただただ海を見ているだけで、あっという間に時間が経つ。今は現存しないようで、残念。
本格的なスパトリートメント施設にはメンズ用のコースもあるので、女性だけでなく、男性のひとり温泉客もいかが。
この宿には「夜泣きラーメン」のサービスがある。毎晩、10時半になると、フロント脇のカウンターで提供される。通常のどんぶりの半分のサイズだから、夕食を食べても、夜泣きラーメンくらい入る。無理なくいけるサイズ感も嬉しい。
かくいう私も、夕食で満腹になったのでとても無理かと思いきや、ふらふらと出ていき、ラーメンの匂いをかいで食べたくなり、結局、麺を少なめにしてもらって、完食できた。この夜泣きラーメンは、無料のサービス。
※この記事は2024年9月6日に発売された自著『ひとり温泉 おいしいごはん』(河出文庫)から抜粋し転載しています。