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【対談企画】「”生産性”を考えよう」井上一鷹×倉重公太朗 第4回 組織の生産性とは?(2)

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

(第4回 組織の生産性とは?(2))

倉重:他に、 MEMEを使ってその問題が分かった例をお話しいただければと思いますが。

井上:最近面白かったのが、ある会社の子会社だったんですけれども、結構古いビルで働いていて、いろんな人の集中を測っていたら明らかに顕著にある空間の集中だけ低かったんです。

倉重:そこの場所だけですね。

井上:はい。そこの場所だけ。何でか分かんなかったんですね。で、もう何でだろうというので、いろんなのをまた違うデバイスを持ってきて測ったらCO2濃度、二酸化炭素濃度が高過ぎたんです。それは古いビルでその空間だけ空調がしっかりしていなくて。

 一般的には単位を聞いたことはないかもしれないですけれども、400ppmというのが二酸化炭素濃度の平均的な外の状態。外って400ぐらいなんですね。これがそこの部分は2,200ぐらいあったんです。

倉重:むちゃくちゃCO2濃いですね。

井上:その状態だと建築基準とかで見ても、もう寝ちゃってしょうがないぐらい。

倉重:もう酸素が足りないんだ。

井上:そうです。もう生存的に危ないから、エネルギーを抑えるために寝ちゃうぐらいCO2濃度が高いらしくて。それはもう明らかに低いから、もう空調を300万かけて直しちゃおうといって、直していました。

倉重:それがMEMEを使って分かったということですよね。

井上:そうです。今まで「もうなんか調子悪いな」とかぐらいの言い方しかできなかったんで。

倉重:なるほど。そういうのって、本当に感覚的なものかもしれないし、もしかしたらその人の体調とかによっても眠気って変わってくるから分かんないですもんね。

井上:そうですね。

倉重:でもやっぱりデータで「一律、ここだけおかしい」って言われると、「ああ、何かあるんだろうな」という目で検討しますから、やはり見える化することに意味がありますね。

井上:そうです。建築、ビルのオペレーションを回しているような会社に聞いたら、だいたいオフィスで光熱費で月に1人当たり5,000円かかって、そのオフィスの賃料を含めて設計とか施工するのの償却費に5万ぐらいかかるそうなんですね。その場所代が5万、人はだいたい人件費で50万ぐらいかかりますよね。

 そうすると、人のデータを取ってその人のレバレッジを効かすというのが、5万円を6万円にしてでも50万円の人が10%でも上るほうが効果むちゃくちゃある訳です。

倉重:そうですね。はるかに効率が良いですよね。

井上:なので、やっぱり人の状態を知って、その人のコンディンションを上げていくというためにしっかりした投資をする。300万って聞くと結構高く聞こえるんですけれども、いやもう多分、2カ月ぐらいで回収できるんです。

倉重:確かに何十人も社員がいるわけですからね。その CO2高いところは何人働いていたんですか?

井上:そこはデータを取っていたのが10人ぐらいです。その10人だけ顕著に低くて。

倉重:そうすると毎月で500万ぐらい人件費かかっているわけだから。それが10%多く働くだけでも、もう50万分のということですよね。

井上:半年ぐらいで返せるという。

倉重:本当ですね。

井上:そういうやっぱり人のデータをもって、そのコンディンションを上げてという、いわゆる生産性を上げると言っている文脈のものをしっかり進めれば、明らかに投資すべきものを投資できるんですよね。

倉重:あと、データという意味では、集中できる曜日とかあるんですよね?よくノー残業デーという取り組みがあって、それが水曜日になぜか作っているのが多いんだけれども、それはどうなんだという見方もありますか?

井上:今までほぼ日本人ですけれども、延べで5,000人ぐらいのJINS MEMEのデータをずっと取ってきたんですが、日本人は水曜が一番集中してるんですよ。そうすると「あれ、ノー残業デーもったいなくね?」みたいな。

倉重:逆説的ですね。ノー残業デーの日が一番集中できる日という。

井上:そう。せっかく集中しているのに、なんで17時に帰らすのと。

倉重:あれですね、金と月は集中力が低いんですよね。

井上:だからもう休み明けと休み前は人は集中していないです。

倉重:それはだいたいの人がそうだということですね。

井上:そうです。

倉重:だから一番の人がだいたい週の初めで慣れてきて水曜日、そこに早く帰らせるって逆に効率悪くないですかという話ですよね。

井上:そうです。それをちゃんと。で、逆のことも言えて、ノー残業デーの会社が多いからむしろ集中しているんじゃないかと。早く帰らなきゃいけないから。

倉重:やはり逆説的ですね。

井上:そうです。だから、それはそれで正しいんですよ。組織においてちゃんと測ってみて、どっちの休み方が正しいか検証すればいいんです。

倉重:確かにそれも分かってやっていれば別にいいんですよね。

井上:そうそう。分かってやるべきなんです。

倉重:そういう意味では朝がいいかって、さっき話がありましたけれども、それって個人の持っている遺伝子で決まっているんでしたっけ?

井上:そうです。時計遺伝子というのが見つかっていて。僕も遺伝子検査したんですけれども、朝型だったんですね。

それは測ったら分かるんですよ。もう生まれもって決まっているのに、夜型に生まれちゃった人はなぜか社会要請上、8時半に学校に行かされ、9時に会社に行かされているんです。

倉重:そうですね。社会不適合者になりかねないですよね。

井上:そうです。だからかわいそうなんです。

倉重:そこはだからもう何だろう、朝型の人は確かに日本人は多いけれども、ただ一部当然夜型の人もいらっしゃるわけで。朝起きられなくてつらいって悩んでいる人がいたら、もしかしたら夜だったら実力発揮できるかもしれない。

井上:そうです。

倉重:必ずしもそれは悲観する必要ないですよね。それに合った職場というのに行けばいい話なんで。

   他に、MEMEを使ってみて組織として何かいい効果が出たとか、今こういうことを検討しているみたいな実例ってあります?

井上:今はほかのデータ、何をしている時に集中しているかみたいなデータの残し方をいろいろサービス開発をしていて。なので、パソコンのログと一緒に残して、じゃあ何のツールを使っている時、パワポをやっている時とか、何の資料を作っている時に集中しているかとか、そういうのを残し始めています。

倉重:当然、スケジュールとかとも連動するんですよね。

井上:そうです。そうすると、どの会議を何時ぐらいにやったほうがいいかというのが見えてきて。

倉重:この会議だと毎回テンションが下がるとかありそうですね。

井上:そうです。その後、全然集中していないとかあるんですよ。

倉重:やっぱりそうなんだ。自分の感覚値としてもしっくりきます。

井上:なので、例えば企画系の仕事は、僕で言うと朝型にやったほうがいいので。

倉重:脳が元気なうちにということですね。

井上:そうです。企画系、プランニング系の、多分パワポとかは朝やれと。何かものをずっと詰めるようなExcelは夕方やれとか。

倉重:ルーティン系はもう夕方でいいと。

井上:そうです。それがこれまた人によって違うんですよ。

倉重:なるほど。

井上:なので、それを見える化するというのをいろんな会社で今、実証結果を回している最中です。

倉重:それもMEMEで測ってみると、定量的に分かるようになるということですね。

井上:そうです。

倉重:多分、この人といると生産性下がるみたいな感じもいるんだろうなぁ。

井上:そっちのニュースがいっぱい出ると嫌われるんで、あんまりそういう使い方はしないほうがいいなと思っているんですけれども。

倉重:ちなみにMEMEは集中力以外もいろいろ分かるんですよね。

井上:はい、あと眠気ですね。運転中の眠気。

倉重:ああ、そうか。ドライバーさん用にいい訳ですね。

井上:そうです。トラックドライバーとかバスのドライバーが居眠り運転をして事故をするというのって、日本の中で言うと、車の技術が上がったことによって事故の件数自体は減っているんですよ。なんですけれども、居眠り運転による事故だけは減っていないらしくて。これは、何でかというと睡眠時無呼吸症候群の人が増えているらしいんです。

倉重:実は、私もそうです。いびきがすごくて、息が止まって・・・・

井上:そういう、やっぱり男性が特になんですけれども、夜うまく寝られていない人が増えていて。なので、昼に急に瞬眠したりするんですね。で、事故が起きているので。であればそういう状態を拾って寝ないようにしてあげるということがJINS MEMEでできるというのを作っていたりしますね。

倉重:なるほどね。いろんな使い方がある訳ですね。(第5回へつづく)

【対談協力】井上一鷹

JINS JINS MEME事業部 事業統括リーダー Think Lab兼任

大学卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにて大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事後、ジンズに入社。JINS MEME Gr マネジャー、Think Labプロジェクト兼任。算数オリンピックではアジア4位になったこともある。最近「集中力 パフォーマンスを300倍にする働き方」を執筆

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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