ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡が隕石衝突で想定外の負傷!?一体どうなった?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「JWSTに想定外の規模の隕石衝突が発生」というテーマで動画をお送りしていきます。
去年2021年12月25日には、あのハッブル宇宙望遠鏡の後継機とされる「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」の打ち上げが成功し、その後望遠鏡の展開作業を終えながら、観測地点となる目標地点に到着しました。
ハッブル宇宙望遠鏡は高度約570kmを周回し、そこから宇宙を観測していたのに対し、JWSTは太陽-地球系の「ラグランジュ点2(L2)」というところから観測を行います。
ここは地球から150万kmほど離れた場所です。
そんなJWSTが今年の5月下旬、想定を超える威力の天体衝突に見舞われたということで、話題になっています。
今回はそんな話題について解説していきます。
●JWSTを襲う天体衝突のリスク
地球すぐ近くの周辺の軌道上には、人工衛星やロケットの破片であるスペースデブリが大量に存在しています。
それらは秒速約10kmというとてつもない速度でぶつかってくるので、たった数程度のデブリでも絶大な威力となります。
実際に高度約570km地点で観測を行うハッブル宇宙望遠鏡はこれまでに数多くの衝突に見舞われています。
現在JWSTがいるL2という場所は、ハッブル宇宙望遠鏡がいる地球の周辺と比べると、スペースデブリが存在しないため、比較的物体と衝突するリスクは少ないと考えられます。
ですがL2は重力的に安定であり、小さな天体が集まりやすい点でもあります。
そのため避けられない天体衝突のリスクがあり、実際にJWSTはこれまでで既に5回、検出可能な規模の天体衝突に見舞われています。
ですがJWSTには特殊なコーティングが施されており、強固な設計になっています。
実際に地上で物体を衝突させる実験も行われており、天体衝突が起きても大きな被害が出ないよう念入りに準備されています。
実際にこれまでに発生した5回の検出可能な衝突のうち、最も新しい5回目の衝突以外の4回は、事前の衝突実験でも再現されたような、想定の範囲内の衝撃でした。
●想定外の威力の衝突が発生
今年2022年の5月下旬、JWSTに地上での衝突実験で再現できなかったほど、予想外に大きい規模の天体衝突が襲いました。
被害を受けたのは、JWSTの観測の要となる主鏡のうち、C3と呼ばれる部分です。
衝突の結果、JWSTのデータにわずかな影響が見られるようになったとのことです。
ですが幸い、JWSTは今後のミッションにおいて求められる性能を十分に維持していることがわかりました。
天体衝突の衝撃が積み上がることで、宇宙望遠鏡の性能は徐々に落ちていくものですが、今回の予想外の衝撃を踏まえ、早速専門のエンジニアによるチームが組まれ、今後の天体衝突の影響を極力軽減すべく対策が検討されています。
JWSTは当初の予定通り、約1か月後の2022年7月12日に、本格的な科学観測で画像やデータを公開することになっています。
今後JWSTの性能に想定外の劣化がないまま、長い間活躍してくれることを願うばかりですね。
●JWSTのこれまでの調整と最新画像
最後に、JWSTのこれまでの調整と、実際に公開されたいくつかの画像を紹介していきます。
これまでJWSTは目標地点L2にて、本格的な観測までに必要な様々な調整作業を行ってきました。
JWSTはサンシールド(遮光板)の大きさが22m×12m、主鏡の直径が6.5mもあります。
JWSTの主鏡は1枚ではなく、18枚の六角形の鏡を組み合わせた構造になっています。
この18枚の六角形の鏡全てが独立して動く構造になっており、それらの鏡それぞれで反射された観測対象からの光が、1枚の副鏡に集められ、その後観測機器へと送られます。
そのためJWSTは遠方の星の光を頼りにそれぞれの鏡の位置を精密に調整する必要がありました。
最初は1つの天体からの光が18個に分かれて見えていましたが、
それぞれの鏡の位置が調整され、光を正確に一点に集められるようになったことで、このように詳細な天体の姿が映し出されるようになりました。
そしてJWSTがこれまで行ってきた鏡の調整が遂に完了し、宇宙からやってきた光をこれ以上ない限界まで一点に集めることができるようになりました。
極限に一点に集まった光をJWSTが搭載する各観測機器へ送ることで、望遠鏡の性能の範囲で可能な最高解像度の画像が得られました。それが上の画像です。
JWSTには幾つかの観測機器が搭載されていますが、観測機器ごとに捉える光の波長が異なっています。
観測の対象となったのは、天の川銀河の隣にある矮小銀河、「大マゼラン雲」の一部です。
この領域からの光を正確に一点に集め、全ての機器で狭い範囲に密集した数十万個の星々が映し出されています。
この画像は非常に高画質で、拡大するとその解像度の高さが伺えます。
実際に科学的な観測に用いる機器は、NIRCam、NIRISS、MIRIの3つです。
この中で最も波長が長い光を捉えるMIRIでは、恒星からの光だけでなく、星間雲の輝きも映し出されています。
NIRSpecは光のスペクトルを調べるための分光器ですが、このように画像を撮影する機能も搭載されています。
所々黒い横線が入っていますが、これは機器の構造によるものであり、不具合ではないとのことです。
そしてFine Guidance Sensor(FGS)は、明るい星を目印とすることで、望遠鏡の向きを調整する機器です。
実際に他の機器による画像にはない、非常に明るい星が映し出されています。
調整用とはいえ、ここまで高精度な画像が得られていることから、JWSTの性能の高さを改めて実感させられます。
今後もJWSTの動向から目が離せそうにもありません。