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台風5号が西進して東北上陸 岩手県は進行方向右側で山脈に吹き付ける東よりの風に特に警戒

饒村曜気象予報士
中心に高い雲がある台風5号と、ない熱帯低気圧(後の台風6号)(8月11日9時)

台風5号の東北地方上陸

 三陸沖の台風5号は、8月12日朝から昼前にかけて東北地方に上陸して、東北地方を横断する見込みです(図1)。

図1 東北上陸寸前の台風5号の進路予報と18時に発生したばかりの台風6号の進路予報(8月11日21時)
図1 東北上陸寸前の台風5号の進路予報と18時に発生したばかりの台風6号の進路予報(8月11日21時)

 台風発達の目安となる海面水温は27度ですが、台風5号が進んでいる三陸沖の海面水温は27度を若干下回りますので、発達することも衰弱することもなく、最大風速25メートル(最大瞬間風速35メートル)という勢力を保ったまま上陸する見込みです。

【追記(8月12日8時50分)】

 台風5号は、8月12日8時30分頃、岩手県南部の大船渡市に上陸しました。

 ただ、台風5号の動きが遅く、雨が長時間続きますので、台風5号による降水量は多くなる見込みです。

 岩手県・久慈市の下戸鎖では24時間に281ミリと、平年の1か月分が1日で降っています(図2)。

図2 8月11日の降水量
図2 8月11日の降水量

 ここに、台風5号の接近・上陸によって、岩手県や秋田県を中心にさらに大雨が降る見込みです(図3)。

図3 48時間予想降水量(8月12日0時から13日24時の48時間)
図3 48時間予想降水量(8月12日0時から13日24時の48時間)

 特に降水量が多いのは岩手県と秋田県で、48時間に400ミリ以上を予測している地域もあります。

 気象庁では、「東北地方を中心に土砂災害、河川の増水や氾濫、低い土地の浸水に厳重に警戒し、暴風や高波に警戒してください」と呼びかけています。

 また、「青森県、岩手県、宮城県では、12日午前中に線状降水帯が発生して大雨災害発生の危険度が急激に高まる可能性がある」と予報しています。

 台風5号は、東北地方を横断したあと日本海に進み、8月13日には熱帯低気圧に変わる見込みですが、風が弱くなるだけで、多量の水蒸気を持っています。

 そして、この熱帯低気圧は、動きが遅くなることから、北日本中心に降水量が多くなる可能性があり、熱帯低気圧に変わったあとでも油断できません。

岩手県は危険半円に入り、地形効果で強まる雨

 台風は、一般的に進行方向右側は、台風自身の風と台風を動かす風が重なって風や雨が強くなり、危険半円と呼ばれます。

 日本付近の台風は、北上または北東進ですので、進行方向右側は、ほぼ東側ということになります。

 しかし、台風5号のように、西進している台風の進行方向右側(危険半円)は、北側になります。

 つまり、台風5号の北側に位置する岩手県は、危険半円に入りますので、特に警戒が必要です。

 また、風向が山の斜面に吹き付ける方向の時は、地形効果で雨が強まります。奥羽山脈や北上山地など、ほぼ南北にのびる山脈が多い東北北部では、山の斜面に吹き付ける風は、東よりの風ということになります。

 台風5号が予報円の真ん中を進んだ場合、岩手県の風向はほぼ東ですので、山の斜面に風が吹き付け、地形効果で雨が強まる懸念があります。

 台風5号が接近する東北、特に岩手県では、普段とは違う台風という意識で、気象情報を入手し、最大限の警戒をしてください。

台風6号が発生

 8月11日9時の段階では、南鳥島近海に熱帯低気圧があり、雲渦ができていましたが、中心付近には発達した積乱雲がありませんでした(タイトル画像)。

 しかし、同日18時には中心付近の積乱雲が発達し、台風6号になりました(前述の図1参照)。

 といっても、台風6号が進む海域の海面水温は、台風発達の目安となる27度以下ですので、風が次第に弱くなり、8月13日には熱帯低気圧に変わる見込みです。

 しかし、熱帯低気圧に変わったといっても、多量の水蒸気を伴っており、台風5号により大雨となった東北に再び大雨を降らせる懸念があります。

 さらに、日本の南海上には、熱帯低気圧が並んでいます。

 これらの熱帯低気圧は、台風5号や台風6号のように、小笠原諸島付近を大きく反時計まわりで北日本に接近する様相となっています(図4)。

図4 予想天気図(8月12日9時の予想、台風5号と熱帯低気圧の動きを筆者加筆)
図4 予想天気図(8月12日9時の予想、台風5号と熱帯低気圧の動きを筆者加筆)

 しばらくは、台風情報等の入手につとめ、台風5号、台風6号、熱帯低気圧、熱帯低気圧と並んでいる渦巻に注目してください。

タイトル画像、図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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