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アトピー性皮膚炎治療デュピルマブと皮膚リンパ腫の関係 - 最新研究から見える注意点 #専門家のまとめ

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

アトピー性皮膚炎の治療薬デュピルマブは有用な選択肢だが、一部の患者で皮膚リンパ腫の発症リスクが懸念されている。本記事では、デュピルマブ治療中のリンパ球反応や菌状息肉症などの皮膚リンパ腫について、最新の研究知見を皮膚科専門医の視点から解説する。リスク因子や発症メカニズム、適切な診断・対処法などを複数の文献を交えて多角的に考察し、患者と医療従事者双方に有用な情報を提供したい。

ココがポイント

▼アトピー性皮膚炎と誤診された皮膚リンパ腫症例では、デュピルマブ治療で皮膚リンパ腫が顕在化した可能性がある

デュピルマブと皮膚リンパ腫の関係性 ─ アトピー性皮膚炎患者におけるリスクと注意点(Yahoo!ニュース エキスパート 大塚篤司)

▼デュピルマブによるリンパ球反応と皮膚T細胞リンパ腫の鑑別には、症状だけでなく病理検査が不可欠

・【デュピルマブ】アトピー性皮膚炎治療薬が引き起こすリンパ球反応とは?皮膚科医が解説(Yahoo!ニュース エキスパート 大塚篤司)

▼デュピルマブ使用患者で菌状息肉症の発症が相次ぎ、高齢男性ほどリスクが高い

・デュピルマブによる菌状息肉症の発症リスクを皮膚科専門医が徹底分析(Yahoo!ニュース エキスパート 大塚篤司)

エキスパートの補足・見解

アトピー性皮膚炎の革新的な治療薬として注目されるデュピルマブだが、一部の患者において皮膚リンパ腫の発症リスクが懸念されている。本記事では、デュピルマブ治療中のリンパ球反応や菌状息肉症などの皮膚リンパ腫について最新の知見を解説した。

研究によると、デュピルマブ使用患者の約2%にリンパ球反応が見られ、皮膚症状の再燃を引き起こす。リンパ球反応は比較的まれだが、アトピー性皮膚炎の悪化と紛らわしいため見逃されやすい。また、デュピルマブ使用患者では菌状息肉症などの皮膚リンパ腫の発症リスクが4倍以上に上昇することが示唆された。高齢男性ほどリスクが高く、重症化も早いという。

皮膚リンパ腫の発症メカニズムは完全には解明されていないが、デュピルマブが既存の皮膚リンパ腫を顕在化させた可能性や、炎症性変化をリンパ腫へと誘導した可能性などが考えられる。特に、早期の皮膚リンパ腫とアトピー性皮膚炎は症状が類似するため、鑑別が難しい。そのため、本来は菌状息肉症などの皮膚リンパ腫だったにもかかわらず、アトピー性皮膚炎と誤診されていた症例が含まれている可能性がある。このような症例では、デュピルマブ治療を契機に皮膚リンパ腫が顕在化したと考えられる。

デュピルマブ治療中は皮膚症状の変化を慎重にモニタリングし、リンパ球反応や皮膚リンパ腫の早期発見に努めることが肝要である。アトピー性皮膚炎と診断されていても、既存の治療で十分な効果が得られない場合は皮膚リンパ腫の可能性も視野に入れるべきだ。疑わしい皮疹が生じた場合は皮膚生検などにより速やかに鑑別診断を行い、的確な対処につなげることが求められる。本稿が患者と医療従事者の双方にとって、デュピルマブの効果とリスクを正しく理解し適切に活用する一助となれば幸いである。

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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