オートバイのあれこれ『GTとGS。70年代のスズキ』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
『GTとGS。70年代のスズキ』をテーマにお話ししようと思います。
1970年代は日本のバイクメーカーが急速に開発力をつけ始めた頃で、各社がそれぞれライバルに負けじと奮闘していた時代です。
1952年(昭和27年)から二輪事業を始めたスズキは、もっぱら2ストロークエンジンのオートバイを手がけ、それは60年代以降も続いていきました。
68年(昭和43年)デビューの『T500』などは、“2スト屋”スズキならではのモデルだったといえるでしょう。
70年代に入ると、『T』シリーズに代わる存在として『GT』シリーズが登場し、GTシリーズはその高品質&高性能でもってスズキ二輪を代表するモデルとなりました。
その一方、世間へ目を移すと、モータリゼーション(自動車の普及)による大気汚染問題が深刻化しており、環境性能の悪い2ストエンジンは忌避されるようになってきます。
つまるところ、4ストエンジンへの移行が強く推進され始めたのです。
そしてそのようななか、スズキもとうとう4ストエンジンの開発を決意。
76年(昭和51年)、初の4ストモデル『GS』シリーズが誕生することとなりました。
今回の記事は、激動の70年代を彩ったスズキのバイク『GT380』と『GS400』の2モデルをピックアップします。
◆GT380
絶版バイクファンにとっては、お馴染みかもしれません。
“サンパチ”こと『GT380』ですね。
GT380は、『GT750』を頂点とするGTシリーズのうちの一つとして、72年(昭和47年)にデビューを果たしました。
イチバンの見どころは、空冷2ストロークの並列3気筒エンジンでしょう。
同シリーズ『GT250』の2気筒エンジンにシリンダーを一つ付け足して生み出されました。
並列3気筒エンジンは中央シリンダーの冷却が課題となりますが、スズキはこの対策として『ラムエアシステム』を導入。
シリンダーヘッドに導風用のカバーを取り付けて走行風がヘッド部分へよく当たるようにし、エンジンの冷却効率を高めていました。
カワサキのマッハシリーズと同じ2スト3気筒エンジンのGTですが、その乗り味はジャジャ馬なマッハとは対照的で、低回転から高回転まで比較的フラットにエンジンが回る特性となっており、その扱いやすいキャラクターから支持を得ることとなりました。
◆GS400
4ストローク化の波が押し寄せるなか、スズキは4ストエンジンの『GS750』と『GS400』を開発します。
主力のGS750は、ホンダ『CB』やカワサキ『Z』と同じ並列4気筒エンジンを搭載しており、高性能なだけでなく頑丈さからも高評価を獲得しました。
GS400は、日本の免許制度に合わせ、このGS750のエンジンを半分に切って生み出されたモデルとなります。
GS400最大のトピックが、ツインカム(DOHC)ヘッドを採用していたこと。
それまで400ccの市販車にDOHCが採用されたことは無く、このGS400が中型初のDOHCマシンとなりました。
このDOHCはもちろん、GS750のエンジンを半分に切ったことによる“恵み”で、
GS400は2気筒だったものの、このDOHCがウケてデビュー後間もなく大人気となりました。
79年になるとカワサキから『Z400FX』が現れ、中型クラスにも4気筒ブームが到来しますが、そんななかでもGSの好評ぶりは衰えず、後継の『GSX』シリーズが登場するまで高い人気を保ち続けました。
GS400も先ほど紹介したGT380と同様、現在もスズキの絶版バイクを代表する存在となっています。