新型コロナ感染症:「喫煙室」が感染源になるのは本当か
感染の流行が続く新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19、以下、新型コロナ感染症)だが、クラスターとしては追い切れない患者が増えている。いわゆる「3密」が感染源になる危険性が高いが、喫煙室や喫煙所はどうなのだろう(この記事は2020/04/09の情報に基づいて書いています)。
喫煙室から感染か
感染予防の基本は、入念な手洗いをして手指についたウイルスを体内に入れないことだが、新型コロナ感染症の感染では、いわゆる「3密」、つまり多数の人間が換気の悪い狭い区域や場所に集まり、濃厚接触し、会話や発声をするような環境が危険とされている。
パチンコ店などはどうなのかと批判する人もいたが、今回の緊急事態宣言の発令で少なくとも対象都道府県のパチンコ店に対して休業要請が出され、その危険性は低くなっているようだ。
一方、危惧されているのが、改正健康増進法が全面施行されてタバコを吸える場所が少なくなった喫煙者が集まる喫煙室や喫煙所だ。喫煙室や喫煙所から感染する危険はないのだろうか。
すでに、喫煙室で感染したと推測される事例が発生している。
福井県保健予防課感染症対策グループによれば、感染が判明している男性(50代)Aさんが、同じ会社の同僚男性(30代)Bさんと喫煙室で一緒になり、30分くらい仕事について会話したことがあったことでBさんに感染したのではないかとしている。
この会社では、4名の男性社員の感染が判明しているようだが、喫煙室での感染はまだ1例だけだ。ちなみに、福井県は人口当たりの感染者数が全国で2番目に多い。
タバコや受動喫煙の害について研究している産業医科大学の大和浩教授によれば、喫煙室で感染するリスクは高いという。
「そもそも喫煙室は狭く、喫煙者が密集し、深く息を吐き出す、いわゆる『3密』の条件が形成されている場所です。換気が悪く密集する喫煙室は、新型コロナウイルスを感染させ、集団発生の原因となる危険性があります。特に、社内の喫煙室の場合、同僚と会話することが多いと思いますので、さらに危険です」(大和教授)
また、大和教授は、タバコを吸う行動そのものも感染リスクを高めるという。
「密閉された喫煙室はドアがあり、そのドアノブや手すりなどを触った手でタバコを扱い、口にくわえるという接触感染の危険性も大きいといえます。また、会話や咳、くしゃみが届く距離に喫煙者が密集し、タバコを吸うためにマスクを外すので新型コロナ感染症の粘膜感染、吸入感染のリスクも上がるでしょう」(大和教授)
ある事業所内にある喫煙所の様子。同じ会社の同僚同士が多いので自然に会話が成立する環境となる。写真提供:大和教授
新型コロナ感染症の感染拡大を防ぐためには、まず人々の行動変容が重要とされる。喫煙室や喫煙所で感染するリスクがあるなら、こうした施設の管理者は、その一時的な使用停止も考えるべきだろう。
そして、何よりも喫煙者は、ぜひこの機会にタバコをやめるような行動変容をして欲しい。