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「タバコをやめる」と身体にこんな変化が〜「禁煙」はいつ始めても効果あり

石田雅彦科学ジャーナリスト
(写真:イメージマート)

 身体に悪いと思いつつ、やめられないタバコ。自分のため、家族のため、禁煙すると身体にはこんな変化があらわれる。

禁煙はいつ始めてもいい

 欧米4カ国(米国、英国、ノルウェー、カナダ)の集団調査による最近の研究によれば、喫煙者は非喫煙者に比べ、男性で13年、女性で12年、ヌミョウが短くなることがわかっている。同時に、禁煙するとどんな年代でも寿命が延び、3年未満の禁煙期間でも5年寿命が延び、10年以上の禁煙で非喫煙者とほぼ同じ寿命になるという(※1)。

 同じような研究は多く、早い年代で禁煙するにこしたことはないが、65歳以上で禁煙しても寿命を大きく延ばすことがわかっている(※2)。

 タバコをやめると、身体にはどんな変化が生じるのだろうか。

 まず、タバコを吸わないでいるとすぐに心拍数に影響があらわれ、心拍数が平常値に戻り始める。約1時間後には血圧が下がり始め、タバコによって身体に取り込まれた一酸化炭素の濃度が下がっていく。

 そして、1カ月も禁煙を続ければ、呼吸機能が大きく改善し、総コレステロールが低下するなど、代謝機能も正常に戻っていく(※3)。また、感染症にかかるリスクも下げることができる

禁煙後の時間経過ごとに起きる身体への影響。表作成筆者
禁煙後の時間経過ごとに起きる身体への影響。表作成筆者

 女性の場合、妊娠中にタバコを吸うとタバコに含まれるニコチン、一酸化炭素、活性酸素などが胎児の発育や出産に悪影響をおよぼす。その結果、胎児や胎盤への酸素供給が減り、低酸素状態になったり、低出生体重児や早産のリスクが大きくなったりする(※4)。

健康はもちろん医療費の削減にもつながる

 病気になっても禁煙は効果がある。例えば、肺がんの場合、短期間の禁煙でも生存率が上がり、生存期間も長くなる(※5)。

 タバコをやめる喫煙者が増えれば、がん、心血管疾患、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患、歯周病などを発症する人が減り、医療費の削減にもつながる(※6)。

 また、シングルマザーの約1/3が喫煙者という調査研究もある(※7)。母親の喫煙が減れば、子の受動喫煙の害を軽減し、出産への悪影響がなくなって少子化対策にも効果があるだろう。

 加熱式タバコを含むタバコには、もれなく有害物質が含まれている。こうした有害物質が喫煙者や受動喫煙を受けた人の身体を蝕み、健康を害するというわけだ。

※1:Eo Rin Cho, et al., "Smoking Cessation and Short-and Longer-Term Mortality" New England Journal of Medicine Evidence, Vol.3, No.3, February, 8, 2024

※2-1:Donald H. Taylor, et al., "Benefits of Smoking Cessation for Longevity" American Journal of Public Health, Vol.92, No.6, 2, June, 2002

※2-2:Thuy T.T. Le, et al., "The Benefits of Quitting Smoking at Different Ages" American Journal of Preventive Medicine, Vol.67, Issue5, 684-688, November, 2024

※3:Aldo Pezzuto, et al., "Short-Term Benefits of Smoking Cessation Improve Respiratory Function and Metabolism in Smokers" International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease, Vol.18, 2861-2865, 1, December, 2023

※4-1:Judith Lumley, et al., “Interventions for promoting smoking cessation during pregnancy” Cochrane Library, doi.org/10.1002/14651858.CD001055.pub3, 8, July, 2009

※4-2:Joshua P. Vogel, et al., “The global epidemiology of preterm birth” Best Practice & Research Clinical Obstetrics & Gynaecology, Vol.52, 3-12, October, 2018

※5-1:Aline F. Fares, et al., "Association between duration of smoking abstinence before non-small-cell lung cancer diagnosis and survival: a retrospective, pooled analysis of cohort studies" THE LANCET Public Health, Vol.8, Issue9, E691-E700, September, 2023

※5-2:Honghun Lai, et al., "Impact of smoking cessation duration on lung cancer mortality: A systematic review and meta-analysis" Critical Reviews in Oncology/Hematology, Vol.196, doi.org/10.1016/j.critrevonc.2024.104323, April, 2024

※6:Shamima Akter, et al., "Evaluation of Population-Level Tobacco Control Interventions and Health Outcomes A Systematic Review and Meta-Analysis" JAMA Network Open, Vol.6(7), e2322341, 7, July, 2023

※7:Tsuguhiko Kato, et al., "Psychological distress and living conditions among Japanese single-mothers with preschool-age children: An analysis of 2016 Comprehensive Survey of Living Conditions" Journal of Affective Disorders, Vol.286, 142-148, 1, May, 2021

科学ジャーナリスト

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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