突然、亡兄が借りていた消費者金融から請求書が来ました。どうしたらよいでしょうか。(相続)
<Aさんのお話>
亡兄が亡くなったことは当然知っていました。
しかし亡兄には奥さんもいて子供も2人いました。だから私は兄の相続とは無関係だと思っていました。
それなのにある日突然、見知らぬ消費者金融から請求書が来ました。
見ると「亡〇〇相続人△△(私)様宛」となっています。
これは一体どういうことなのでしょうか?
実はある日突然このような通知が来る場合があります。
どういう場合かというと、先順位の相続人が全員相続放棄をした場合です。
亡くなった方に相続人がいても、その相続人が全員相続放棄をすれば、初めから相続人でなかったものとみなされ、第二順位の法定相続人(直系尊属)が相続人となるのです。
第二順位の相続人も相続放棄すると、次は第三順位の法定相続人(兄弟姉妹)が相続人になります。
今回のAさんは先順位の相続人が全員相続放棄をした結果、相続人となってしまいました。このような場合にどのように対処をすればよいのかを解説します。
全員相続放棄した結果、自分が相続人になってしまった
冒頭のAさんの場合、亡兄の奥さん、2人の子供が全員相続放棄をし、亡兄とAさんの両親も相続放棄をした結果、Aさんが次の相続人になってしまいました。
債権者からの通知で自分が相続人になったということを知ったのです。このまま放置していると、あれよあれよという間に、他の消費者金融や税務署、クレジット会社などからも請求が来てしまう可能性があります。
このような場合、亡兄の家族から事情を聞いたり、先順位の相続人が全員相続放棄をしたという事実を念頭に、相続放棄をするか否かの決断をしましょう。
通知を受けた債権者に連絡をする
Aさんに亡兄の債務を支払う気持ちがなければ相続放棄をするしかありません。今回はAさんも相続放棄をするという流れで話を進めていきます。
相続放棄をするか否かの決断は、相続人であることを知ってから3ヶ月以内に行えばよいのですが、相続放棄をすると決めたらなるべく早く行動されることをおすすめします。
相続放棄の準備をしながら、次のことを行います。
まず、請求書や督促状が送ってきた債権者に、電話で連絡を取ります。そして相続放棄をする旨を伝えます。
債権者への対応としては、基本的には事前連絡をして、相続放棄が完了したら債権者に相続放棄申述受理証明書を提出して終了となります。これで債権者からの請求書や督促状は送付されなくなります。
相続放棄申述受理証明書とは、相続放棄の手続きが終わると家庭裁判所から発行してもらえる書類のことです。
コピーの提出が可能な場合がほとんどですが、稀に原本の提出を求めてくるところもありますので覚えておきましょう。
相続放棄の手続きをする
では具体的に相続放棄の手順について解説します。
相続人であることを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。
①添付書類
・被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・申述人の現在の戸籍謄本
先順位の相続人が相続放棄をしている場合、被相続人に関する書類はすでに家庭裁判所に提出されているので、再度の提出は不要です。
事前に家庭裁判所に問合せをして、すでに提出されている書類を確認することで書類の準備の手間を省くことができます。
②管轄
相続放棄申述書は管轄の家庭裁判所に提出しなければなりません。相続放棄申述の場合、管轄の家庭裁判所は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所となります。
③費用
・収入印紙800円分(申述書貼付用)
・連絡用の郵便切手(家庭裁判所によって異なります)
・収入印紙150円分(相続放棄申述受理証明書交付用)
④手続きの流れ
必要書類が揃ったら、管轄の家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。
その後1週間から2週間ほどすると家庭裁判所から照会書が送付されます。
照会書には相続放棄をする理由などを書く欄があるので、必要事項を記入し返送します。その後問題がなければ相続放棄申述受理通知書が裁判所から交付されます。
相続放棄申述受理通知書は1通しか交付されない書類ですが、別途申請して相続放棄申述受理証明書を交付してもらうことができます。
債権者へはこの相続放棄申述受理証明書の写しが必要となる場合が多いです。
ある日突然相続人になっても落ち着いて行動しよう
これまで解説した一連の手続きは、普段お勤めされている方なら忙しくて対応できないかもしれません。また心理的ストレスが大きく、自分で手続きすることができない方もいらっしゃるかと思います。
そのような場合には司法書士や弁護士などの専門家に相談しましょう。
ある日、思いもよらず相続人になってしまうことは少ないケースだと思いますが、そういう場合でも落ち着いて行動し、期限内に相続放棄の手続きを終わらせるよう進めることが大切です。